心臓の音に雑音がありますね….心臓弁膜症かもしれません!

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[投稿日] '16/09/21 [最終更新日] '18/03/18 1,019views
心臓の音に雑音がありますね….心臓弁膜症かもしれません!

心臓弁膜症とは

心臓には4つの弁があります。心臓弁膜症とは、これらの弁のうち、一つもしくは二つ以上の弁がうまく働かなくなる病気のことをいいます。

心臓に付いている弁とその役割

人間の心臓は、左右で2対の心房・心室に分かれています。そのそれぞれに、血液が逆方向に流れることを防ぐために弁が付いています。心臓弁は合計で4つあり、それぞれ大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁とよばれています。このうち、僧帽弁と大動脈弁は、心臓の左側にありますが、心臓弁膜症で症状が出たり、治療が必要となったりするのは、主にこの2つの心臓弁です。

心臓に付いている弁の働きが悪くなると

もし心臓弁が、硬くなることで動きが悪くなったり、または破れたりしますと、血液が逆流したり、流れが悪くなったりします。

 

心臓弁膜症の原因

心臓弁膜症にはいくつかの原因があります。大きく分けて先天性と後天性に分かれます。先天性とは、うまれつき弁の機能に異常があるものです。後天性とは、生まれたときは正常であったものが、後年になり異常を伴うようになったもののことを言います。

後天的原因

後天性の原因には、リウマチ熱、動脈硬化、心筋梗塞などがあります。なお、原因の1つにリウマチ熱があります。かつては、幼少時にかかったリウマチ熱を原因として、中年以降に僧帽弁狭窄症を発症することが多かったのですが、優れた抗菌薬の開発と普及により、減少傾向にあります。

 

 心臓弁膜症の病態

弁膜症の状態から、心臓弁の狭窄症と閉鎖不全症の2つに分けられます。

狭窄症

心臓の弁が硬くなって狭まり、血液の流れが悪くなることを指します。高齢者の増加により、動脈硬化と同じ様な変化が弁に生じることが多くなり、それに伴い増加傾向にあります。

閉鎖不全症

心臓の弁が閉じなくなり、血液の逆流が防げなくなることをいいます。

心臓弁膜症の症状

心臓弁膜症の症状の進行は非常にゆっくりとしています。心臓に負担がかかっていても、心臓はよりがんばることで、本来の機能を維持しようとします。ですので、軽症であれば、自覚症状に乏しいことがほとんどです。しかし、中等症以上になりますと、息切れや呼吸困難から始まり、症状の進行に伴い、胸痛(運動した時に生じる心臓の痛みのこと)、失神などを起こすことになります。また、血液の流れが悪くなることで、顔や足のむくみ、おなかの張りを生じることもあります。

心臓弁膜症の進行度合いの指標

心臓の働きの具合を、自覚症状から4つに分けて評価した分類があります。NYHA分類と呼ばれているもので、ニューヨーク心臓病学会が策定したものです。これを用いて、心臓の状態を確認します。

Ⅰ度 悪くない
日常的な活動では、著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない

Ⅱ度 少し悪い
日常的な活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

Ⅲ度 中程度に悪い
日常的な活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

Ⅳ度 非常に悪い
心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな労作でこれらの症状が増悪する。

心臓弁膜症の検査

レントゲン写真や、心電図、心臓の超音波検査を行い、心臓弁膜症の進行具合を検査します。同時に、動脈硬化や心不全などの合併症の有無も調べます。

 

心臓弁膜症の治療

経過観察と薬物治療、手術の3つに分けられます。

心臓弁膜症の経過観察の対象

軽症から中等症で、自覚症状がなければ、特に治療をすることはありません。治療はしませんが、症状が進行していかないとも限らないので、経過観察は必要です。経過観察中は、食事指導や運動指導など、日常生活の改善を図り、心臓弁膜症の進行を遅らせるようにします。

心臓弁膜症の薬物治療

中等症以上で心臓の機能自体に異常となる所見がない場合は、薬物治療の対象となります。心臓の力を高めたり、血管を広げて心臓にかかる負担を軽くする効果を期待出来ます。同時に、食事や運動などの生活指導を行なうと、より効果的です。薬物治療には、日常生活において自覚症状が現れにくくするだけでなく、心臓を守る目的もあります。

薬物治療で用いられる薬剤

強心剤:心臓の力を高め、血液を送り出す機能を強くします。
血管拡張剤:血管を広げて血液循環を改善します。これにより心臓にかかる負担を軽くします。
抗凝固剤:血液が血管の中で固まりにくくして、詰まるのを防ぎます。
抗不整脈剤:心臓の動きをスムーズにします。
利尿剤:体の中から余分な水分を出して、心臓にかかる負担を軽くします。

心臓弁膜症の外科手術

重症例になり、薬物治療では対応しきれない場合、手術治療が選択されます。手術方法には、”弁置換術”とよばれる原因となっている弁を切除し、人工弁を新たに設置する方法と、”弁形成術”とよばれる弁の悪いところだけを修復する方法があります。胸を切開して行う開胸手術となります。そのため、手術前後で約2〜3週間ほどの入院が必要となります。

心臓弁膜症に対する弁置換術

これは、心臓弁が修復できないような場合に、人工の心臓弁に置き換える手術方法です。本来の心臓弁は無くなりますが、そのあとは人工弁が一生その代わりをします。人工弁には、”機械弁”と”生体弁”の2種類あります。

機械弁

機械弁とは、チタンやカーボンなどの素材で作られている人工弁です。劣化しにくく、耐久性に非常に優れているのが特徴です。この機械弁に置き換えた場合は、手術後抗凝固剤とよばれる血を固まりにくくする薬を、継続的に飲まなければなりません。

生体弁

機械弁とは異なり、生物由来の素材で作られています。具体的には牛や豚の心臓の大動脈弁を用いて作られます。これを用いて心臓弁と取り替えます。機械弁とは異なり、劣化するリスクはあり、その場合は再手術が必要となりますが、抗凝固剤という血を固まりにくくする薬を飲むことはありません。ただし、心房細動がある場合は、飲まなければなりません。

心臓弁膜症に対する弁形成術

狭窄症や閉鎖不全症を起こしている心臓弁を治す手術方法です。その際、形成した適切な形を維持できるように、人工弁輪というチタンなどの金属骨格の上にポリエステルで覆ったものを取り付けます。

手術後の注意点

心臓弁膜症は手術をして終わりではありません。いくつかの注意点があります。

人工弁の機能不全

もし、手足や顔のむくみ、息苦しさなど感じるようなことがあれば、人工弁の機能不全の可能性があります。こうした症状がないか、日常から気をつけてください。

出血のリスクや血栓症

抗凝固剤を飲むことにより、血が固まりにくくなります。薬が効きすぎることのないよう適切な量になるようコントロールをして投与されますが、どうしても出血のリスクが伴います。また人工弁は、体にとっては基本的には異物です。そのために、血栓とよばれる血管の中にできる血の固まったものが、生じやすくなっています。抗凝固剤は、この血栓を防ぐために飲んでいるのですが、完全に予防できるものではありません。この血栓が、血管を通して体の各所に運ばれますと、例えば脳卒中を起こしたりするリスクがあります。

感染性心内膜炎

歯科治療や風邪、外傷などで、血液中に細菌が入り込み、それが人工弁に達してしまうと、感染性心内膜炎とよばれる病気になる可能性があります。感染性心内膜炎なりますと、その人工弁は取り替えなくてはなりません。もし、歯科治療後、風邪の後などに、原因のよく分からない熱が続く場合、もしくは息切れや、むくみなどの症状が急に出てきた時は、この可能性がありますので、必ず主治医の診査を受けてください。

 

心臓弁膜症の最新治療

経カテーテル大動脈弁治療

大動脈弁狭窄症に対する新しい治療法です。従来の弁置換術のように、開胸(胸を切開して開いてする手術のこと)を行なわずに、カテーテルとよばれる細い管を通して人工弁を心臓に入れる方法です。開胸をしないため、体への負担が小さいのが特徴です。そのため、高齢者や他にも病気を抱えている様な、開胸手術の難しい場合にも対応出来るようになりました。

足の付け根の動脈、もしく肋骨の隙間から心臓の先端を目指して、カテーテルとよばれる細い管を入れます。人工弁は小さく折り畳んだ状態で、挿入されたカテーテルを通して心臓まで運ばれます。カテーテルが大動脈弁の位置まで到達したら、バルーンを膨らませ、人工弁を広げて設置します。人工弁の設置完了後は、カテーテルを抜き取り、終了となります。

 

 

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