白血球が多いときに抑えておくべき8つのポイント

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[投稿日] '16/10/11 [最終更新日] '18/04/20 43,620views
白血球が多いときに抑えておくべき8つのポイント

職場での定期健康診断や人間ドックだけでなく、献血の際にも血液検査は行ってもらえます。血液検査の検査項目は、様々なものがありますが、その中で白血球数の検査値が高い場合はどういったことを意味しているのでしょうか。そこで、白血球とは何か、身体の中でどういうことが起こっていると白血球数が多くなり、検査値が上がってくるのかをまとめてみました。

まずは、白血球について理解しましょう。

 

白血球とは

そもそもまずは白血球とは何か?ということについてです。

白血球とは、免疫を担当する細胞の一つです。免疫とは異物に対する身体の防御機構のことをいいます。白血球は、血液の中に存在しており、血液の流れによって運ばれています。その大きさは直径6〜30マイクロメートルで、でこぼことした凹凸を有する球体のような形状をしています。

そんな白血球ですが、骨の中にある骨髄とよばれるところで作られます。幹細胞とよばれる特殊な細胞から発生し、いろいろな役割を持つ白血球になるよう、途中からいくつかの種類に分かれて成長していきます。白血球は、成人の場合、通常1日あたり1000億個くらい作られています。

 

白血球の役割

白血球は、細菌やウィルスといった異物が何らかの原因で体内に侵入した場合に、それらを排除してくれる免疫系の役割を担っています。また、外から入ってきた異物だけでなく、自身の身体から腫瘍性の病気が発生した際に、それらの細胞を駆除してくれる働きもあります。こうした働きは、細菌や異物・腫瘍性細胞などを貪食(どんしょく)するという方法で行なわれます。貪食とは、細菌などの異物を食べて、殺菌することです。

白血球 多い 役割

 

 

白血球の種類

普段私たちは”白血球”とひとまとめにして捉えてはいますが、実は白血球は「顆粒球」「リンパ球」「単球」の3種類に細分化されます。そのうち、顆粒球は、好中球・好酸球・好塩基球の3つに分けることができますので、厳密に言うと白血球は5種類あるということになります。
それぞれが異物から身体を守るためにどのような働きを担っているのか、簡単に見ていきましょう。

1.顆粒球

好中球
白血球数の50〜60%を占めています。細菌による感染症のときに、免疫系の中心的立場で異物を排除をしてくれます。ウィルス感染症より、細菌感染症に対してよく働く性質がありますので、好中球の検査値が増えた場合は、細菌感染症の存在が疑われます。

好酸球
白血球数の2~4%を占めています。アレルギー反応時に増えるのが特徴です。アトピー性皮膚炎や、アレルギー性疾患、薬の副作用などで、検査値が高くなってきます。

好塩基球
白血球数の1%ほどを占めています。さまざまな炎症や、アレルギー性疾患に関連しており、それに伴い検査値が上昇します。

2.リンパ球

白血球数の30〜40%を占め、好中球に次ぐ多さを示しています。非常に運動性が高いのが特徴です。

リンパ球にも数種類あり、

  • ヘルパーT細胞
  • キラーT細胞
  • B細胞
  • ナチュラルキラー細胞

などがあります。いずれも、免疫系の機能に深く関与しています。リンパ球は好中球とは異なり、細菌感染症・ウィルス感染症のいずれに対しても検査値が上がってきます。また、白血病になった場合でも、検査値の上昇を認めます。

3.単球

白血球数の3~8%を占めています。侵入してきた細菌や寄生虫を取り込み、消化してくれる働きを持っています。ですから、細菌感染症になりますと、検査値が上がってきます。また、寄生虫感染や、膠原病、白血病でも検査値の上昇を認めます。

参考:神奈川県予防医学協会 – 白血球

 

白血球が多いってどういうこと?

白血球が多いか少ないかの判断基準

白血球数は、血液を採取して自動計測器を用いて計測します。日本人の白血球数の基準値は、血液1マイクロリットル中3,500〜9,000個で、男女で差はありませんが、子供の場合やや高めになり、特に乳幼児の場合は基準値で10,000個を超えます。反対に高齢者で軽度に減少傾向を示します。ちなみに、血液検査の結果表では、WBC(White Blood Cellの略)と表記されることが多いです。

先程、白血球の種類をご説明した際は病気や感染症で値が高くなるとお伝えしましたが、実際にはそれ以外にも、たとえばストレスやたばこの影響でも数値は高くなってきます。しかも、元々個人差が大きく数が短時間で変動しやすい特徴もあり、人によっては1日に10%程度も値が変化することがあります。ですから検査機関ごとに白血球数の基準値の設定には幅があります。

個人差や時間当たりの変動が大きく基準値に広い幅が設定されていることが特徴の白血球ですが、白血球が明らかに多すぎるかどうかを判断するための基準値があります。それは、血液1マイクロリットル中10,000個です。これを超えると白血球数が異常に多いとみなされます。これを白血球増多症といいます。反対に1マイクロリットル中3,000個を下回ると異常に少ないとされ、この病態を白血球減少症とよびます。

白血球が基準範囲内でも、人によっては多い、ということも

ところで、白血球の数が基準範囲内であっても、白血球が多いと判断される場合があります。

もし仮に、普段白血球が3,500個くらいの人がいたとします。そんな人の白血球が急激に8,000個にまで増加した場合、これはまだ基準値に含まれますが、実はその人にとっては異常な高値かもしれません。白血球は基準値の中でも個人差があります。白血球数だけをみて、白血球の多い少ないを判断するのではなく、普段の白血球数を知っておき、それがどのように変化しているのかをみていくことが大切です。

白血球 多い

 

白血球が多いときは、どうすればいいの?

まずは、再検査や追加の検査を行います。追加の検査としては、白血球の分画とよばれる白血球の各成分の割合を調べる検査や、血小板数の検査、CRPとよばれる炎症反応によって上昇する物質の量を調べる検査などがあります。再検査の結果が基準値を示していれば、心配することはありません。

ですが、もし再検査の結果やはり白血球が多いと指摘されたなら、その原因がはっきりしているかどうかで対応が分かれてきます。すなわち、その時点で細菌やウィルス感染症もしくはアレルギー性疾患があることが明らかな場合は、それぞれを担当とする診療科で原因である病気の治療を行ないます。

ところが、原因がはっきりしていない場合は、白血病などの重篤な病気である可能性もあります。血液内科などの専門医の診察が必要となります。

 

あなたの白血球が多いのは反応性?腫瘍性?

白血球が多いとき、その原因を調べていかなければなりません。白血球が多い原因は、細かくは様々ありますが、”反応性”もしくは”腫瘍性”の2つにわけることができます。

反応性増加によって白血球が多いとき

反応性増加とは、白血球が多い原因が細菌などの感染症や運動などの物理的なストレス、精神的ストレス、たばこなどによるもののことです。すなわち身体に外部から何らかの刺激が与えられ、その刺激に対する防御反応から白血球の数が増加多い結果になり現れてくるものです。

感染症などが原因となって白血球が増加するというのは白血球の働きから考えても自明かと思いますが、白血球が多い時に病気でない場合があるとはどうしてなのでしょうか。例えば運動による影響については、運動をすると血液の流れが活発化します。これにより、白血球も通常よりたくさん血液中に流れるようになります。このために白血球が多くなってきます。

また、精神的なストレスや疲労などでも白血球の数に影響が出てきます。それは精神的なストレスや疲労がたまっている状態は、身体にとっては炎症を起こしているような状態にあると見なされるからです。その結果として白血球数が多くなってきます。ただし、これは1ヶ月未満の短期間のストレスの場合でして、それ以上の長期間になると、反対に白血球数は減少します。

その他、たばこを吸っていると白血球が多い結果となる場合があります。たばこを吸うと喉を中心に呼吸器系に炎症が起こってきます。白血球はこのたばこによる炎症にも敏感に反応してたくさん産生されるようになりますので、その結果白血球が増加するのです。

反応性増加の場合のながれ

では、外部からの刺激が身体に与えられた際に、どのようにして白血球の産生が促されるのかをみていきましょう。

反応性増加により白血球が増加する場合の白血球産生過程は、骨髄のなかでの白血球の産生が多くなっているか、骨髄の中にため込んであった白血球が大量に血液中に放出されるかにわけられます。運動や精神的ストレスによって白血球数が多い結果が認められる場合は、後者の産生過程がほとんどです。しかし、日常よくみられる細菌感染症や、やけど、大きなケガをした時などにみられる病的に白血球が多い結果については、この両方の産生過程を経て引き起こされているものがほとんどです。

腫瘍性増加によって白血球が多いとき

腫瘍ができた場合で白血球が多いとされるときによくみられるのが、急性白血病や慢性骨髄性白血病などの白血病です。この中には、好中球だけ増えてくる慢性好中球性白血病とよばれる非常に稀な病気も含まれます。 白血病は血液のがんとよばれる病気です。

 

白血球が多い場合に原因となりうる病気

白血球が多い場合に、その原因としてなんらかの病気が疑われます。原因となりうる病気はいろいろありますが、代表的なものは細菌感染症、ケガ、やけど、腫瘍などです。

細菌感染症

白血球 多い 血液検査

体外から細菌やウィルスが侵入してきますと、それらを排除するための免疫系の主力として白血球が増加します。これは、侵入してきた細菌などの異物を白血球が貪食して排除しようとする働きの結果です。傷口から膿が出てくることがありますが、膿の成分は死滅した細菌などの異物と、それらと戦った白血球の死骸です。

細菌感染症の症状は、感染した細菌により様々に現れますが、発熱やリンパ節の腫脹、身体のだるさなどは共通に認められます。もし白血球が多く、このような症状を認め、なおかつ喉の痛みや、鼻づまり、腫れなどの症状を認めた場合は、細菌感染の可能性が濃厚といえます。

細菌感染症の治療法

基本は原因となった細菌の種類を特定した上で、抗菌薬を用いて治療します。しかし細菌の特定にまでは時間がかかりますので、それまでは感染を生じた部位や症状から細菌を予想して抗菌薬を選択して治療します。抗菌薬が効いてくれば、細菌の数が減少しますので白血球数も減ってきます。白血球の検査は抗菌薬の効果判定にも用いることが出来ます。

ところで、細菌感染症の中には敗血症やガス壊疽とよばれる重篤な感染症の場合で白血球数が多くなってくることがあります。この場合は生命の危機につながるような病態ですので早急な入院加療が必要となります。

外傷や火傷など

皮膚は細菌の体内への侵入を防ぐ役割を担っていますが、外傷や火傷をしてしまうと細菌の侵入に対して脆弱な部分を作ってしまうことになり、そこを突破口にして体内に侵入しようとする細菌の攻撃にさらされます。その部分からの細菌などの異物の侵入を防ぐために、白血球が多い状態になってきます。このような場合も、外傷や火傷の治療を行なうことはもちろんですが、抗菌剤も処方して細菌を減少させます。

白血病

白血病は骨髄で血球を作る過程で異常が起こり血球ががん化した細胞(白血病細胞)が無制限に増殖する血液のがんです。白血病になりますと幼若な白血球が大量に産生され、それにより白血球が多い状態になってくるのが特徴です。白血病には急性白血病と慢性白血病、骨髄性白血病かリンパ性白血病かなど、病状に応じて幾つかの分類があります。どの分類でも発症初期は自覚症状に乏しいことが多く、健診などで指摘されて初めて気づくことが多いです。白血病の症状は体のだるさ、食欲不振、動悸や息切れ、リンパ節の腫れが引かない、口内炎ができてくるなどです。もし白血球数が増えてきて、なおかつ上記の症状に当てはまるような場合は、早めに病院で精密検査を受けてください。

参考:愛知県がんセンター中央病院 – 白血病

 

白血球が増加していても、積極的に治療をしない場合

白血球が増加していることがわかり、いろいろ原因を探してみても結局原因が分からないことがあります。このようなとき、以下のような状態に当てはまっていたら、注意深くという前提が付きますが経過観察(すぐに何らかの治療などをするのではなく、一定期間症状の変化の様子を見ること)となることがあります。

  1. 白血球数が、9,000〜15,000個で推移しており、白血球の構成成分に異常がないこと
  2. 赤血球数や血小板数が正常範囲であること
  3. 明らかな症状がなく、なおかつ他に病気がないこと
  4. NAP(好中球が細菌を攻撃する際に用いられる酵素)の値が正常範囲であること

ただし、繰り返しにはなりますが経過観察といっても定期的に医師の診査を受けるようにしてください。

 

白血球が多い時:まとめ

白血球は感染症や腫瘍以外にも運動やストレス、たばこでも数が増加します。なるべく正確な数値を知るために、血液検査前の運動は避けた方がよいです。時間に余裕を持って早めに検査室に行き、身体を休めておきましょう。また精神的な影響も受けますので、検査の日の前はしっかり睡眠をとり身体を休めておきましょう。たばこについては動脈硬化やその他のいろいろな病気の原因にもなりますので、検査があるない関係なく日頃から禁煙を心がけるようにしてください。

そして白血球は病気以外の理由でも変化してくる特徴があります。白血球が多いという結果がかえってきても、慌てることなく落ち着いて再検査を受けるようにしてください。

 

 

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