高血圧だと心不全・腎不全・脳血管障害・心疾患のリスクが増加します!

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[投稿日] '16/10/12 [最終更新日] '18/03/03 547views
高血圧だと心不全・腎不全・脳血管障害・心疾患のリスクが増加します!

「高血圧」は生活習慣病の1つで、日本人にとって最も身近な病気ではないでしょうか。

症状もその名の通り、「血圧が高い状態」と分かりやすいですよね。また、高血圧を引き起こす因子についても「塩分の摂りすぎ」と答えられる方も多いと思います。これだけ身近な高血圧ですが、血圧が高い状態を放置しておくとどうして危ないのかご存知でしょうか。

高血圧は心不全・腎不全・脳血管障害・心疾患などの合併症を引き起こします。高血圧自体が直接生死に関わる病気ではありませんが、これらの合併症は命の危険を及ぼします。「周りもみんな高血圧だから大丈夫だろう」と放置せずに、今日から生活習慣を見直し、できるだけ早めに改善・治療を始めましょう。

 

「高血圧かどうか」の判断基準は?

医師は「高血圧ガイドライン」に基づいて、高血圧の診断や治療を行います。日本人のデータ、世界中の研究データを参考に、このガイドラインは5年毎に見直されます。つまり基準値や診断基準、治療指針は5年毎に変わるので常に最新の情報を入手する必要があります。現在「高血圧ガイドライン」の最新版は2014年版ですのでそれを参考にご説明します。

治療については患者の持病なども考慮して慎重に進めなければなりません。血圧を下げる降圧薬も種類がたくさんあり特徴もそれぞれ異なります。医師はその患者に合わせた薬を選択する必要があります。勉強不足な医師ですと最新のガイドラインに基づいていない可能性や最新の薬の情報を知らない可能性もあります。よって病院を選ぶ時は、専門の病院あるいは内科であっても勉強熱心な先生のところに行くのがよろしいでしょう。

ガイドラインによると、高血圧の診断基準として、下記のどちらかの検査値が診断基準値以上であれば、「高血圧」と診断されます。

ガイドラインにおける高血圧の診断基準値(どちらかを満たすと高血圧)

  • 収縮期血圧が140mmHg以上
  • 拡張期血圧が90mmHg以上

収縮期血圧という言葉は聞き慣れないかも知れませんが、心臓が収縮し血圧が全身に送られた状態の血圧のことです。拡張期血圧とは、心臓が拡張し血液が心臓に戻ってきた時の血圧のことです。つまり、血圧は血管の硬さと心臓から送り出される血液量、戻ってくる血液量によって決まります。

注意して頂きたいのは、高血圧の診断は1回の測定だけでは難しいということです。たとえば、健康診断で医師あるいは看護師に血圧を測定してもらって血圧が高い範囲に入ったとしても、家でもう一度測定した場合は基準値におさまることがあります。これは白衣を見て、緊張して血圧が高くなる「白衣高血圧」と呼ばれるものです。診察時には緊張してしまい、リラックスできないこともありますよね。

そういった場合のために、家で測定する「家族血圧」という基準値も設けられています。

家族血圧の診断基準値(どちらかを満たすと高血圧)

  • 収縮期血圧が135mmHg以上
  • 拡張期血圧が85mmHg以上

上記のガイドラインにおける診断基準地よりも少し低めに設定されています。例えば健康診断の結果、「血圧が高い」という結果になった場合、一度血圧計を用いてリラックスした状態で測定してみましょう。

血圧 高い 血圧計

また、血圧手帳をつけることもおすすめします。できれば毎日朝と晩の2回、だいたい決まった時間に血圧を測定して記録してみましょう。毎回同じ状態で測定することが大切です。

自分の血圧が通常どのくらいなのか、というデータを持っておくと、「血圧が高い状態が持続してみられるのか」「薬のコントロールが上手くいっているかどうか」「急に血圧が上がった際に何か他の病気が疑われる」などメリットが大きいです。

参考:高血圧ガイドライン(日本高血圧学会) https://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014v1_1.pdf

 

血圧の測定方法について

簡単に血圧の測定方法についてご紹介します。

現在、主に使われているのは、聴診器で血液の流れを聴いて水銀計の目盛りを読み取る「聴診法」と、動脈の動きに伴って発生する振動を読み取って血圧を割り出す「オシロメトリック法」があります。医師は聴診法を用いていることもありますが現在はオシロメトリック法を使用した電子血圧計で測定するのが主流です。家庭用の血圧計も、オシロメトリック法の電子血圧計です。

前述した通り血圧は周りの状況や緊張状態などで変動します。よって自分で血圧を測定する場合は、静かな場所でリラックスした状態で測るようにしましょう。

 

高血圧の原因

高血圧は原因によって2つに分類されます。

1:本態性高血圧

日本人の大部分は本態性高血圧です。医療用語として耳にされたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、「本態性」とは原因がわからない、という意味です。実は血圧をひきおこす危険因子については、特定できていますが根本的な原因は今のところ解っていません。本態性高血圧の発症には肥満・塩分・過度のアルコール・ストレスなどが関与します。

2:続発性高血圧

医療で用いられる「続発性」とは原因となる病気がある、という意味です。「二次性高血圧」とも呼ばれます。何か臓器障害などの原因があって血圧が高い状態になっているのが続発性高血圧です。続発性高血圧の大部分は腎臓の機能が低下していることで引き起こされている場合が多いです。また、ガンの1つである褐色細胞腫や、副腎の機能異常で生じるクッシング症候群なども高血圧の原因となります。続発性高血圧の場合はいくら降圧薬を服用しても治りません。

よって血圧が高い状態が続いている場合まずは、「本態性高血圧なのか続発性高血圧なのか」をきちんと医師に診断してもらう必要があります。

 

高血圧が引き起こす可能性のある病気

血圧が高い状態で一番怖いのはそこから生じる病気のリスクですよね。高血圧の主な合併症は以下の4つです。

1:心不全

血圧が高い状態が続くと心臓に負担がかかってしまい心不全になることがあります。心不全とは心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送れない状態のことです。既に心疾患をお持ちの方は要注意です。

2:腎不全

腎不全とは腎機能が低下した状態を示します。血圧が高いと腎臓に負担がかかり、腎臓の主な機能である「血液のろ過機能」が低下してしまいます。腎不全に陥ると透析(人工的に血液をろ過して浄化すること)や腎臓移植が必要になってきます。

3:脳血管障害

持続的な高血圧は脳の動脈を硬化させてしまいます。そのため脳梗塞や脳内出血を引き起こしてしまいます。脳梗塞や脳内出血は命が助かっても後遺症が残ることが多く、生活の質を大きく下げてしまいます。

4:心疾患

これは心不全とは異なります。血圧が高い状態が続いて冠動脈と呼ばれる心臓の筋肉に酸素や栄養を送る動脈が硬化してしまい、その結果心筋梗塞や狭心症を引き起こしてしまうのです。

これらは命に関わる病気ですので高血圧の合併症について決して甘くみないようにしてください。合併症を引き起こしてからでは遅いのです。

 

高血圧の治療法は本態性か続発性かで分かれます

血圧 高い 血圧計

本態性高血圧と続発性高血圧の2つに分けてご説明します。

1:本態性高血圧

基本的には生活習慣の改善と、降圧薬と呼ばれる血圧を下げる薬による治療を行います。降圧薬は、さまざまな種類があり特徴もそれぞれですので持病や生活スタイルを考慮して医師が選択します。降圧薬の種類は以下の通りです。

・カルシウム拮抗薬:

カルシウム拮抗薬は降圧薬として最も広く使用されている薬です。血管を拡張させて血管の抵抗を減らし血圧を下げます。副作用に心拍数が増加する頻脈があるので持病に頻脈のある患者への使用は避けます。

・ACE阻害薬:

ACE阻害薬は血圧を上げるホルモンの働きを間接的に妨げて、血圧を下げます。また腎臓、心臓を保護する効果もあるので心疾患や腎疾患を持っている患者に使用されます。副作用に空咳があります。

・アンギオテンシン2受容体拮抗薬:

アンギオテンシン2受容体拮抗薬はARBとも呼ばれる、カルシウム拮抗薬の次に使用されている薬です。ARBもACE阻害薬と同様、血圧を上げるホルモンの働きを間接的に妨げて、血圧を下げます。さらに、腎臓、心臓を保護する効果もあります。しかしARBには副作用の空咳がないのでACE阻害薬よりも広く用いられています。

・直接レニン阻害薬:

直接レニン阻害薬は、この中で一番新しい薬です。直接レニン阻害薬も血圧を上げるホルモンの働きを妨げるのですがARB、ACE阻害薬よりも上流部分で働きかけます。

・利尿薬:

利尿薬は尿の量を増やして体内の水分量つまり血液量を減らし血圧を下げる薬です。トイレが近くなるという副作用があります。糖尿病患者には不向きです。なぜなら糖尿病の人はもともと多尿になる傾向があるからです。

・β遮断薬:

β遮断薬は心臓の薬としても使用されています。心臓の動きを適性にして循環血液量を減らすことで血圧を下げます。
心疾患を持つ患者に使用されます。副作用として喘息発作を誘発するので喘息持ちの患者には使用できません。

・α遮断薬:

血管を拡張させて血管の抵抗を減らし血圧を下げます。前立腺肥大に効果もあるので前立腺肥大を持っている患者に積極的に用います。

「高血圧ガイドライン2014」では、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン2受容体拮抗薬、ACE阻害薬、利尿薬を高血圧の第一選択薬とすることが記されています。また、1つの薬で十分な降圧効果が見られない場合、種類の異なる薬を組み合わせて服用します。これらを1錠に併せた「配合剤」とよばれる薬も販売されています。飲み忘れを防ぐことができる上、患者負担も減らせます。

また、降圧薬に共通した副作用として、血圧が下がることによる「ふらつき」があります。特に飲み始めの頃は、車の運転や危険な機械操作には十分に気をつけましょう。

2:続発性高血圧

続発性高血圧の場合はまず原因となる疾患の治療を始めます。ガンの場合は手術や薬物を使った治療、腎機能障害の場合は腎臓の機能を補う薬を服用します。降圧薬の中には腎臓の負担を減らす腎保護効果を持つものもあるので併せて服用することも多いです。

 

高血圧の場合の生活習慣の見直し

持続的に血圧が高いことが判明したら「生活習慣の改善」は必須です。薬に頼るだけではなく、自分で改善できることは積極的に取り組みましょう。先ほども説明した通り、本態性高血圧は肥満・塩分・過度のアルコール・ストレスなどが関与します。

肥満の場合は食事の見直しが必要です。特に塩分を控えなければならないので外食の回数を減らすこと、減塩した料理を食べるようにしましょう。油っこい料理も避けなければなりません。

また、体重を減らすあるいは維持することも大切です。体重の増加は血圧を上げる因子につながることを覚えておいてください。逆に体重を減らすと血圧が下がることが期待できます。ただし、急激な減量はかえって体に負担をかけますので食事の改善と適度な運動を日常生活に取り入れるようにしましょう。

お酒好きにはつらいかもしれませんが、アルコールは極力控えましょう。「お酒を飲まないとストレスになる」という方もいらっしゃいますが、高血圧によるリスクと、お酒を飲まないことによるストレスそのストレスによって命を危険に晒すリスクは、比較した場合に小さいのであれば、やはりお酒は飲まないようにすることをお勧めします。それでもお酒が飲みたいという場合には、アルコール濃度の低いものや、アルコールフリーのビールなどで気を紛らわせるということがよいと思います。

 

高血圧が判明したらどの診療科で診てもらうべき?

先ほどもお伝えした通り、まずは本態性高血圧なのか続発性高血圧なのかを診断してもらう必要があります。検尿や血液検査で分かることが多いのでやみくもに降圧薬を服用するのではなく、きちんとスクリーニングしてくれる医師を探しましょう。

まずは近くの内科で循環器内科を専門にしているところを受診するのが一番よいでしょう。そちらで高血圧の原因を調べてもらい、内分泌など他の疾患が原因でありそうならば、内分泌内科などに紹介してもらうことになります。

 

まとめ

健康診断などで「血圧が高い」ということが判明したら、まずは一時的なものなのかそれとも持続しているのかを血圧計を使って測ってみましょう。そのデータを持って専門の医師に診てもらい本態性高血圧か続発性高血圧かを診断してもらう必要があります。

本態性高血圧と診断されたら、降圧薬を服用すると共に生活習慣を見直して、心不全、腎不全など命にかかわる合併症を引き起こさないように積極的に治療に取り組み、未然に防ぎましょう。

 

 

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