医師が解説する、がん検診の費用と結果の見方について!

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[投稿日] '17/12/11 [最終更新日] '20/07/28 1,839views
医師が解説する、がん検診の費用と結果の見方について!

前回のコラムでは、がん検診に様々なオプションがあるということをご説明しました。もちろんオプションですので、つければつけるほど費用もかかってくることになってしまいます。予算との兼ね合いも気になるところだと思いますので、今回のコラムでは「がん検診にどの程度の費用がかかるのか」をお伝えさせていただきます。

前回のコラムで、がん検診についてお話しさせていただきましたが、今回のコラムをお読みになる前に一読いただくと、内容がより理解しやすいかと思います。よろしければご覧ください。

がん検診っていつ受ける?そんな人のための、がん検診まとめ。

健康診断とがん検診って検査は何か違うことをするの?医師が解説する、それぞれの検査について。

がん検診にはオプションがある!?医師が教える、がん検診を受けるときに知っておきたいポイント!

 

がん検診の費用は数万円から数十万円まで!

がん検診はオプションによって費用が大きく変わってくる!

まずは厚生労働省が推進している対策型検診から見ていきましょう。それぞれの検査における費用は以下が相場となっているようです。

  • 胃がん検診:1〜5万円(バリウム検査)、1.5〜2万円(胃内視鏡検査)
  • 肺がん検診:2,500〜3,500円(胸部X線)、1.5〜3万円(喀痰細胞診)
  • 大腸がん検診:2,000円程度(便潜血検査)
  • 乳がん検診:4,000〜8,000円(マンモグラフィ)
  • 子宮がん検診:3,000円〜1万円(視診+細胞診)

よって、厚労省推進の上記検査を全て実費で受けると最低でも2万円以上かかってしまいます。検査を5つ受けて2万円というのは、みなさんにとっては高く感じるでしょうか?それとも妥当な値段と感じるでしょうか?

そして、次はオプションでつけられる検査にかかる料金の相場をいくつか挙げていきましょう。

  • PET、PET-CT検査:10万円前後
  • 腹部超音波検査:約5,000円
  • 腫瘍マーカー検査:1項目あたり約3,000円

このように、オプションの中には数千円で受けられる比較的安価なものから、1つの検査で10万円もするような非常に高額なものもあるのです!

ちなみに、私が調べた中でもっとも高額な検査コースはではありますが人間ドック、各種がん検診をほぼ全て網羅したもので、3日間にわたって検査を行う約40万円のプランでした…。

 

でも大丈夫、市区町村が実施するがん検診は費用の補助が出る

どのオプションをつけるかによって、費用が大きく変わるがん検診ですが、大多数の方は「基本的な検査(対策型検診)を受けられたら十分!」とお考えかと思います。それでも自費で検査を受けるなら2万円以上の費用がかかってしまいますよね。「検査に2万円はやっぱ高いなぁ…」と、少し二の足を踏んでしまう方も多いのではないかと思います。

そんなときに「市区町村が実施しているがん検診の対象となっているかどうか」ということをぜひ確認していただきたいと思います。

補助の内容は市区町村によって様々ですが、無料で受けられる場合もあれば、1つの検査につき500〜1,000円ほどの実費が発生する場合もあります。例えば大阪市だと、20歳の女性に子宮頸がん検診を、40歳の女性に乳がん検診を無料で案内しています。本来の費用から考えると75〜100%割引で検査を受けられるので、うまく使うと非常にいい制度だと思います。お住まいの自治体のホームページからがん検診の対象であるかどうかが確認できますので、ぜひ一度確認してみてください。。

ちなみに「今年で50歳」など節目の年齢の方については、通常の補助に加えてオプション検査を補助つきで受けられる場合があります。それも確認してみましょう。

例えば東京都港区では、30・33・36・39歳の女性は子宮頸がん検診のオプションとして細胞診に加えてHPV(ヒトパピローマウイルス)検査を追加することができます。
※HPVは子宮頸がんの発症原因とされています。

また東京都板橋区では、対象者が胃がん・肺がん・前立腺がんや咽頭がんなどの検診も無料で受けられ、全国的にも検診メニューが充実している地域です。
※乳がん検診は1,000円で検診可能

 

市区町村からのお知らせを見逃さずに費用をおさえてがん検診を受診しよう!

市区町村からの補助を活用できるなら、検診を受けてみようかなと思われた方もいらっしゃると思います。でも「検査を受ける手続きってどうしたらいいんだろう…ちょっと心配」と思われる人も多いのではないでしょうか。検査を受けるまでの手続きについて、分かりやすくご説明させていただきます。

がん検診の対象となっていた場合、自宅にがん検診の案内が届くことがほとんどです。案内の中には検診受診の際に提出することで補助が受けられるクーポン券や市町村と契約している医療機関のリストなどが同封されています。

案内に従って確実に検診を受けるためにも、気を付けていただきたいことはこちらの3つです。

  • 「市町村から案内が届く時期」
  • 「予約可能期間」
  • 「受診期間」

下の表は東京都渋谷区の検診案内の一部です。

渋谷区では誕生月によって、案内の発送予定、予約受付期間、受診が変わっていることがわかります。お住まいの自治体ではどのようにしてがん検診を受ければよいのか気になった方は、日本医師会が公開している各自治体のがん検診窓口(https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/contact/map/)から簡単に各自治体のがん検診案内ページに飛ぶことができます。

ぜひ1度確認して、補助つきでがん検診を受けられるいい機会を逃さないようにしましょう!

 

がん検診の結果の読み方、NILM?HSIL?

がん検診の結果は検診を受けてからどのくらいで返ってくるの?

実際にがん検診を受けられた方で、結果が返ってくるまで、不安な思いをしたり、なんでもないときにふと結果が気になってしまったりした経験はあるのではないでしょうか?そんなときのために、がん検診の結果は検査を受けてから通常どのくらいで返ってくるかをお教えします。

がん検診を受けてから結果が返ってくるまでの時間は、検査を受けた医療機関や検査を受けた時期などによって開きがあります。早ければ1週間程度、遅ければ2ヵ月後といったようにかなりばらつきがあります。

この違いに関しては検査を受ける医療機関が関係しているようです。人間ドックのオプションメニューとして受けるがん検診の場合は比較的結果が出るのが早く、2週間前後で結果がわかることが多いです。これに対して、自治体からの案内で受けたがん検診の場合は、検査を受ける人数が多いことなどから結果がわかるまでに約1〜2ヵ月ほどかかることがあります。

もちろん検査結果で何かしらの異常分かり、はやめに精密検査もしくは治療を受けた方がよい場合は、検査受診後数日で医療機関から連絡がありますので、医療機関の指示に従って速やかに精密検査を受診または治療を開始しましょう。

 

子宮頸がん検診の結果は分かりにくいので、ここでお答えします!

検診の結果は自宅に郵送されてくることが多いです。がん検診の結果が自宅に届いて、ドキドキしながら封筒を開いたけれど、なんだか結果をどう見ればよくわからないという方もいらっしゃると思います。もちろん「そんなことない」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、結果がわかりにくいのは女性のがん検診で多いように思います。

内視鏡検査や便潜血検査では検診結果の見方がわからない、というのはあまりありません。これは結果が「異常なし」もしくは「異常あり」のどちらかであり、非常に単純だからです。

しかし子宮頸がん検診においては他の検診項目とは異なり、結果の表記はNILMやLSILなど聞きなれない単語で表示されているため、パッと見てもわかりにくいのです。今回は子宮頸がん検査の結果に絞って詳しくご説明いたします。

まず、子宮頸がんは異形成という前がん状態(がんになる手前の状態)を経てがん化することが知られています。子宮頸がん検診では、採取した細胞を顕微鏡で観察し、異常のある細胞がないか確認をしていく中で、明らかにがんの細胞が見つかる場合もあればがんかどうかが疑わしい細胞(異型細胞)が見つかる場合もあります。

つまり、他の検査とは異なり白黒をはっきりつけることが難しい場合があるため様々な結果があるのです。そして現在では、結果の表記にはベセスダシステムという分類方法が用いられています。

ベセスダシステムではいくつもの結果表示がありますので、その結果がどのような状態を示すのか、結果を受けて次にどう行動すればよいのか(精密検査を受けなければならないのか、次回検診まで放っておいて大丈夫なのか、等)順にご説明します。

  • NILM
    採取した細胞は正常だったことを指します。特に精密検査などは必要なく、これからも定期的に検診を受けるようにすればよいでしょう。
  • ASC-US
    異形成とは言えないが、細胞に変化があることを指しています。(がんではありません)
    ASC-USという結果を受け取った場合は、医療機関でHPV(ヒトパピローマウイルス)検査を行い、その結果が陰性であればNILMと同様これからも定期的に検診を受けるようにし、陽性であれば精密検査として生検を行います。
  • ASC-H
    高度な細胞異型の可能性があるものの、確定はできない状態を指しています。(がんではありません)
    この結果であった場合は精密検査として生検を行います。
  • LSIL
    HPV感染や軽度の細胞異型が認められていることを表します。(がんではありません。)
    この場合も精密検査として生検を行います。
  • HSIL
    中〜高度の細胞異型、もしくは上皮内がん(早期がん)である状態です。
    この場合には、精密検査として、コルポスコープ診(子宮頸部を拡大して確認し、肉眼では確認できない病変を発見する検査)と生検もしくは、円錐切除(子宮頚部を円錐状に切除する)を行います。
  • SCC
    明らかな扁平上皮がんである状態です。
    この場合は円錐切除もしくはそれ以上の手術(子宮全摘術など)が必要となります。

このように、採取した細胞の中に「がん細胞ではないけれど、変化が見られる細胞(異型細胞)」がどの程度混じっているのか、それとも「がん細胞が混じっているか」を確認した上で結果を出します。

聞き馴染みのない言葉が多く、結果が出たとしても検査結果が正常だったのか、異常だったのかがわかりにくいこともありますが、結果がSCC以外であれば、がんではありません。そして、精密検査は明らかに正常な場合(NILM)と明らかにがんである場合(SCC)以外で必要となってきます。

ちなみに、これまでに子宮頸がん検査を受けたことのある方で、classⅠやclassⅡといった形式の結果が返ってきた経験のある方もおられるかと思います。これはクラス分類(日母分類)といって、子宮頸がん検査において過去に使われていた指標になります。

なぜクラス分類からベセスダシステムに変更されたかというと、異常の程度をより正確に伝えられるからです。例えば、クラス分類ではclassV(がん)と呼ばれているものが、ベセスダシステムではSCC(扁平上皮がん)、Adenocarcinoma(腺がん)、Other(その他の悪性腫瘍)の3つでより詳しい状態がわかるよう表記されることとなっています。

 

がん検診の結果が要精密検査だった場合にはどうすればよい?

がん検診で要精密検査と書いてあるときに「自分はがんなのかな?」と、とても不安な気持ちや怖い気持ちになるかと思います。

しかしそこまで思いつめる必要はありません。要精密検査の意味するところとは「1度だけの検査でがんではないと判断することが難しかったので、もう少しだけ詳しく検査をして確かめてみましょう」ということなのです。

その証拠に、厚生労働省の「平成27年度地域保健・健康増進事業報告」によると、平成26年度に肺がん検診を受けた方は約400万人でした。そのうち約2%(約8万人)の方が要精密検査と診断されたものの、要精密検査と診断された人のうち、実際に肺がんが見つかったのは、要精密検査者のうち約2%(約1,600人)だったのです。

つまり「要精密検査=がん」ではないということです。そのため、要精密検査という結果が返ってきたとしても思いつめずに、まずは精密検査を受けてみましょう。精密検査を受けてがんではないという結果が返ってくると、非常に安心すると思います。

各がん検診の精密検査で受ける検査はこちらになります。

  • 胃がん検診
    内視鏡検査を行います。内視鏡検査では生検で病変と疑われる部分の組織を採取し、顕微鏡で観察することでがんかどうかを調べることとなります。
  • 肺がん検診
    胸部エックス線検査、喀痰細胞診にて要精密検査との結果であった場合は、精密検査として胸部CT検査、気管支鏡検査を行います。(どちらを行うか、もしくは両方行うかは状況によって異なります。)
    胸部CT検査では身体の内部を断面として確認できるため、エックス線の画像よりも詳細な情報を得ることができます。また、気管支鏡検査は胃カメラのようなもので、気管支鏡と呼ばれる胃カメラよりも細い内視鏡を気管支に挿入し、気管支内を観察するとともに生検を行い、顕微鏡にて細胞を観察します。
  • 大腸がん検診
    便潜血検査で陽性であった場合には、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を行います
    肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部を視覚的に観察していきます。ポリープや病変と思しき部分がある場合には組織を採取して顕微鏡にて観察し、がん細胞かどうかを調べます。
  • 乳がん検診
    マンモグラフィで要精密検査となった場合には、精密検査としてマンモグラフィの再撮影、超音波検査(乳腺エコー)、生検を行い、がんであるかどうかを調べます。

このように、精密検査では多少の身体へのダメージ(苦痛や出血)はありますが、確実にがんであるかどうかを見分けられる方法を用いて判断していきます。

もちろん、まずは検査を受けることが重要ですが、精密検査時に行う検査は、検診時に行う検査よりもより専門的ですので”質の高い検査を受ける”ということも意識していただきたいと思います。例えば、経験症例数の多い名医は大腸内視鏡検査において成功率が高いというデータもあるほどです。

経験症例数の多い名医は大腸内視鏡検査において成功率が高い

 

検診を受けた人のうち実際にがんであった人は400万人の0.04%、すなわち1,600人だけと聞くと「きっとがんではないし、精密検査は大丈夫だろう」とがん検診や精密検査を受けない方が出てくるかもしれません。ですが、精密検査でしっかりと診てもらい、がんではないことをはっきりさせることは非常に重要です。ご存知の方も多いと思いますが、がんの自覚症状が出るのはかなり進行してからになります。自覚症状が出てから、精密検査を受けて発見した場合だと手遅れとなるケースの方が圧倒的に多いのです。

定期的に肺がん検診を受けていて、肺がんを早期発見(StageⅠ)できた場合の5年生存率(※治療5年後に生存している確率)は約80%です。しかし自覚症状が出て病院を自ら受診し、肺がんだと診断されるとき(StageⅢ)だと、5年生存率は約20%(非小細胞がんの場合)まで大きく減少してしまいます。

もしものためにも、がん検診は定期的に受けるようにしましょう!

 

最後までお読みいただいてありがとうございます。がんは自覚症状の分かりにくい病気の一つです。だからこそ、がん検診を定期的に受けることはとても大切です。確かにがん検診は高額にも感じる方はいらっしゃいますが、発見が遅くなって長期的な治療が必要となってしまえば、その方がよほど高額な費用が必要となります。このコラムが、がん検診を受けるきっかけになれば、何よりです。

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