乳がん(手術、薬物療法、放射線、ラジオ波)ー知っておくべき治療法③

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[投稿日] '15/11/02 [最終更新日] '18/08/14 304views
乳がん(手術、薬物療法、放射線、ラジオ波)ー知っておくべき治療法③

女性が最もかかりやすいがん−乳がん

乳がんは日本人女性の15人に1人がかかると言われており、発症率も年々増加してきているがんのひとつです。他の臓器のがんにくらべて、乳がんに特徴的なのが若い年代で発症しやすいという点です。発症率は30歳代から増加しはじめ、40代後半がピークになります※1

がん罹患人数

現代でも多くの人が「がん=死」というイメージを抱えているかと思います。

しかしがん医療の発展もめざましく、必ずしも「がん=死」とはならなくなってきており、特に乳がんの治療法は進化を遂げています。上の図が示すように乳がんは女性で最も発症しやすいがんではありますが、実は乳がんの死亡数は同じように1位となっているわけではありません。これはつまり、乳がんにかかっても治癒する可能性は十分になる、ともとれます。

実際に5年生存率(がんと診断されてから5年間生き続けている割合)は、ステージⅠ・Ⅱでは90%以上、ステージⅢでも70%以上といわれています※2。ただし早期のものでは治る可能性が高くても、やはり進行してしまうと治る可能性が低くなってしまうことは他のがんと同様です。乳がん検診の対象となる40代以降では検査を定期的に受けるなど、可能な限り早期発見に努めていくことはやはり重要になります。

”治る”とはいえ、そのためには手術・薬物療法などに少なからず伴う苦痛を乗り越えていかなければなりません。また「治療法の進化」はある意味「複雑化」であり、同じ乳がんで同じ進行度(ステージ)であっても、個人個人によって違う治療法が選択されることがしばしばあり得ます。

乳がんの治療は多種多様ですが、ここでは代表的な治療法について概要をご解説します。

 

乳がん治療の全体像

乳がんでは「ごく早期のもの」を除いて、手術に加えて放射線療法が行われる場合と放射線療法と抗がん剤による薬物療法の両方を受ける場合の2通りあります※3

放射線療法は、手術の際に気付けないような目に見えない微細ながんの取り残しがないかを考えて、治療部位に放射線照射を行ってがんを死滅させることにより、再発を起こさないようにする事を目的として行われます。

抗がん剤による薬物療法は、診断時には画像検査などでは見えないレベルでがん細胞が全身に散らばっているかもしれないため、後になって再発してこないように、薬物で全身のがん細胞を根絶することを目的にしています。

乳がん対策キャンペーン

乳がん啓発運動

①乳房切除術(乳房全摘術)と 乳房部分切除術(乳房温存手術)

乳房内にあるがん病巣を切除するために手術が行われます。乳がんではいわいる“しこり”を触れる場合がありますが、それががんの病巣です。がん細胞は目に見えないレベルで周りに広がっているため(浸潤といいます)、しこりの部分を取り除くだけでは不十分で、周囲の正常と思われる乳房ごと切除する必要があります。乳房を全て切除する手術が乳房切除術です。全て取ってしまったのですから、乳房内にがん細胞を残しているということは基本的にはありません。

一方、しこりの周りの一部だけ正常乳房を切除し、乳房を残す手術が乳房部分切除術、いわいる乳房温存手術です。手術の目的はあくまでもがんを治すことですので、がん細胞を残してしまう可能性が高い場合には、患者さんが希望したとしても、乳房温存手術を選択することはできません。具体的には、がん病巣が大きすぎない(3~4cm以下)、乳房内に多発していない、周囲に広がっている所見がない、などの条件を満たさなければなりません。また、再発の可能性を下げるため、残した乳房に放射線療法を追加する必要があります。なお、手術の前に薬物療法を行うと(術前薬物療法)、しこりが小さくなって温存手術ができるようになることもあります。

②薬物療法(抗がん剤治療)

乳癌を治すためには、多くの場合で薬物療法が必要になってきます。手術などでしこりを取りきれたと思っていても、診断時には目に見えず散らばっていたがん細胞が、しばらく経ってから大きくなって再発してくる場合があるからです。

乳癌に使用する抗がん薬(抗癌剤)には多くの種類があります。いわいる化学療法薬とよばれる従来からの抗がん薬に加えて、分子標的薬、ホルモン薬などが使用されます。既にご自身やご家族が、薬物療法をお受けになっている場合、

「私に使っている抗がん薬は副作用が強いらしいから、副作用の軽いホルモン剤にしてください」とか、

「今は新しい分子標的薬があるんでしょ?なんで私に使ってくれないの?」

などのように感じたことがあるかもしれません。

しかし現在では、人によって(がん細胞の特徴によって)どの薬が効くのかは詳細に調べられており、ガイドラインも固まってきています。ある人の乳がんは特定の遺伝子を持つため、新しい薬である分子標的薬が効くタイプであったり、そうでなかったりする場合には別の抗がん剤を使用するなど、検査結果によって抗がん剤の使い分けがされます。そのため、医師によって使用する抗がん剤が異なるなどとばらつくことはあまりなく、ある程度一律に抗がん剤の選択がされていきます。

また薬物療法は手術に組み合わせて行われることも多いのですが、手術前に抗がん剤を投与する術前薬物療法と手術後に抗がん剤を投与する術後薬物療法があり、基本的にはどちらも効果(治癒率)は同じと考えられています※4。ただし乳房温存手術を希望する場合には、術前薬物療法の方が、しこりを小さくしてから取るため乳房温存率が向上するという付加価値があります。

③ラジオ波焼灼術(RFA)

乳がんに対するラジオ波焼却術の原理は肝がんでのラジオ波焼却術と同じです(参照:肝臓がん(手術,ラジオ波,など)ー知っておくべき治療法②)。手術よりも身体への負担が少なく、治療後の乳房の整容性も保たれます。

ただし、この治療法はまだ開発段階といってもよく、治療ガイドラインでは臨床試験として行うことを推奨しています。どのような状態であればラジオ波焼却術で治療しても手術と同等の治癒率が得られるかが不明であるため、日常の診療で施行することは現時点では推奨できないということです。乳房をきれいに残すことができるからといって、やたらめたらにこの治療法に飛びつくのは危険かもしれません(治療の目的はあくまでもがんを治すことです)。

とはいえ、慎重に適応を判断すれば、メリットの大きな有望な治療法であることは確かでしょう。ラジオ波焼却術を希望する場合には、乳がんの専門医のなかでもさらにラジオ波焼却術に関する経験・知見が深く、その限界をしっかりと見極めることができるエキスパートに依頼する必要があります。

 

このように乳がんの治療法は複雑ですが、ガイドラインでしっかりと固まっているものもあれば、まだ試験段階で一部の専門の医師にしか判断ができないものもあります。いずれの場合も、治療法の選択に疑問点や希望があれば、医師に聞いてみて納得がいく説明をもらうことが大事になります。

 

※1 日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン Q.6」(http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g2/q06/)
※2 国立がん研究センター「乳がん 治療の選択 
2.治療成績」(https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/print.html)
※3 日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン Q.14」(http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g4/q14/)
※4 日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン Q.17」(http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g4/q17/)

 

 

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