てんかん(薬,手術,迷走神経刺激療法)-知っておくべき治療法⑤

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[投稿日] '15/11/14 [最終更新日] '18/03/18 517views
てんかん(薬,手術,迷走神経刺激療法)-知っておくべき治療法⑤

てんかんとは

”てんかん”という病名は、皆さん一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?病名としては有名なものかと思います。てんかんとはどのような病気でしょう?

「手足がビクビク震えるものでしょ?」

「突然気を失って怖い」「交通事故を起こす病気だよね」

イメージが先行してしまって不確かな認識をされている疾患ともいえるかもしれません。

てんかんの定義は、「てんかん発作」という症状を反復する疾患です。「てんかん発作」には、手足がビクビク震えるという状態、いわいる”けいれん”の他にも、手足の一部が勝手に動く、意識を一瞬失う、突然汗が出るなど、患者さんによって様々です。みんながみんな、けいれんを起こすわけでも、意識を失うわけでもないのです。

交通事故とてんかんの関係は、数年前に立て続けにてんかん発作が原因とみられる交通事故がありましたし、最近でも話題になっていますね。てんかん患者が運転免許を取得するためには、厳格な条件が課されています。ただ、ルールを守っていれば、てんかん患者でも安全に自動車を運転できるわけです。ルール違反をすれば危険であるという点は、お酒と同様ですね。

どのくらいの人がてんかんにかかっているのでしょう。日本には、65万から90万人の患者がいて、毎年57,000人が新たにてんかんを発症しているとされています。がんの中でもっとも多い大腸がん(年間約14万人弱)の半分近く、白血病(年間約14,000人)よりはずっと多いので、決して珍しい病気ではありません。乳幼児期発症すること多い病気ですが、近年の高齢化にともない、65歳以上の高齢発症が増えてきています。

てんかんはなぜ起きる?

てんかん

脳は、神経細胞(ニューロン)が電気信号をやりとりすることで機能しています。てんかんでは、脳の一部が異常に興奮して、過剰な電気信号が発生してしまうことで様々なてんかん発作が起こります。異常な興奮が、もともと手を動かす機能を担当する脳の部位に起こると、自分の意思と関係なく手が動いてしまいます。また、異常な興奮が脳全体に広がってしまうと、意識を失います。異常な興奮が起こる原因は、脳梗塞や脳腫瘍などに続発するもの(症候性)と、明らかな原因が不明のもの(特発性)があります。

てんかんの治療

てんかんであっても、発作さえおこらなければ日常生活に支障はきたさないわけですから、治療の目標はてんかん発作が起こらないようにすることです。主な治療法には、①薬物療法、②手術、③迷走神経刺激術があります。基本的には、①薬物療法を行って、それでも発作を抑えられない場合に②手術、②手術が難しい場合には、③迷走神経刺激術という考え方が一般的です。以下では、それぞれの治療法の特徴を解説します。

①薬物療法

いわいる抗てんかん薬という種類の薬を使います。10数種類の薬があり、患者一人ひとりの発作のタイプに合わせて薬を選択します。種類により作用機序は異なりますが、いずれにしても神経細胞が異常に興奮してしまうのを抑える効果があります(このことから、副作用として眠気が出る薬が多いです)。まずは1剤で開始し、その薬で発作が抑えられないようなら、他の薬に変更したり、複数の薬を併用したりします。薬の選択方法はガイドラインが公表されていますが、あくまでも大枠を示したものであることや、近頃は新規抗てんかん薬とよばれる新しい薬が出ているため、それらの選択方法は医師の経験、”うで”にかかっているかもしれません。薬の選択は医師に任せるしかない面もありますが、患者として押さえておきたいポイントは、数年以上の長期間継続して内服する必要があること、規則的に内服する必要があることでしょう。本来、自分に合っている薬かもしれないのに、内服が不規則になっているせいで効果がでないということもあります。薬物療法で70~80%の患者で発作が抑えられますが、残りの20~30%では抑えきることができないとされています。

②手術

てんかんは、神経細胞の異常な興奮で起こると解説しましたが、手術は、この異常な興奮を起こす脳の部位(焦点といいます)を切除する治療法です。薬物療法では発作を抑えられなかった場合に行います。なぜ始めから手術を選択しないかというと、てんかんの手術は、いずれの方法にしても脳の一部に傷をつけるわけですから、手術によって脳の機能障害を起こしてしまうリスクがあるからです。てんかんの手術を安全・効果的に行うためには、多くの知識と技術が必要になってきます。手術をする前に、切除すべき焦点をつきとめ(がんなどとは違って病変が見た目でわからないことも多々あります)、切除しても脳機能に重大な障害をきたさないことを確認しなければなりませんので、手術の”うで”だけでなく、脳生理学・検査法の知識も必要とされることが想像できると思います。てんかんの手術を検討している、または提案されている場合、”脳外科医”の中でも、てんかんを専門とする医師を探す必要があります。

③迷走神経刺激法

上記の手術は、開頭手術といって、頭蓋骨を一部外して、脳に手を加えます。麻酔も必要ですし、身体への負担が少なからずありますので、全身状態によっては施行することができません。また、切除すべき脳の病変(焦点)の範囲によっては、安全に(術後の脳機能障害を起こさずに)てんかんを治すことが難しい場合もあります。このように手術ができない患者に対して行われる治療が迷走神経刺激法とよばれるものです。治療の概要は、頸を通っている迷走神経という神経に電気刺激を与えることで、大脳の働きを調節しててんかん発作を抑えるというものです(いろいろな検討がなされていますが、詳細な機序は不明とされています)。迷走神経に電極を設置し、電気刺激を発生させる器具を埋め込むために簡単な手術が必要となります。イメージとしては不整脈に対するペースメーカーに似ているものです。この治療は身体への負担は少ないのですが、やはり効果は上記の手術には劣り、主に発作の頻度を減らすことを目的としています(発作が完全に消失する人は20人に一人程度です)。

 

てんかんの治療は、長期間続くことに加え、薬の選択・調節、薬の効果・副作用のチェックなどが極めて重要で、医療者・患者間の信頼関係が最も重要となってきます。また、医師にとっては、薬物療法の知識だけでなく、手術の必要性、その適応の見極めといった、知識・経験が必要となる分野でもあります。是非、信頼できる医師・経験豊かな名医のもとで、治療に取り組みたいものです。

 

 

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