開腹手術 vs 腹腔鏡手術ー知っておくべき治療法①

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[投稿日] '15/09/22 [最終更新日] '18/03/18 2,843views
開腹手術 vs 腹腔鏡手術ー知っておくべき治療法①

知っておくべき治療法

「まさか自分が手術を受けることになるなんて….」

「どの治療法がいいのかはよくわからないので,先生にお任せします….」

診断がついた患者さんに今後の治療方針の説明をすると、このようなことをおっしゃる方がよくいらっしゃいます。入院や手術に慣れた人なんて、ほとんどいないわけですから、病名が確定しこういう治療が必要と言われた際に、茫然として不安に思うことは当然です。

少し昔は、医師が治療方針を決めてその方法を患者さんに説明するのが一般的でした(もっと昔は説明すらしない時代もあったのかもしれません)。しかし、最近は医学の進歩に伴い、治療法がいくつかあり選択肢がある場合が増えてきましたので、医師がそれぞれの治療法を説明して、患者さんにその中でどれがいいかを選択してもらうパターンもあります。もちろん、医師と患者さんではその治療法に対する知識も経験も差がありますので、基本的には医師が推奨する治療法があって、その他の治療法も選択肢として説明するぐらいの形ではあります。

ですので、患者さんとしては、自分の治療方針に際して、どのような選択肢があって、それぞれどういうメリット・デメリットがあるのかということを前もって理解しておき、治療方針を決める際に、疑問があれば医師に質問ができるようになることが重要になります。

長くなりましたが、この「知っておくべき治療法」シリーズは、そういった、よく選択肢となりがちな治療法に関して、紹介をしていくコラムになります。

 

開腹手術 vs 腹腔鏡手術

今回は開腹手術と腹腔鏡手術に関してご紹介します。胃がんや大腸がん、子宮筋腫など、いわいる”お腹”の臓器の病気に対して手術を行う場合、その方法には開腹手術と腹腔鏡手術の2つがあります。まずはそれぞれの概要を解説します。

開腹手術

その名の通り、腹を切って開いて手術を行います。医師(術者)は、胃・腸などの臓器を直接目で見て、直接触れながら手術を行うことになります。

腹腔鏡手術

お腹に小さな穴を開け、そこから中の臓器をのぞきながら手術を行います。のぞくといっても、実際には、カメラを穴から挿入して、映しだされる映像をモニターで見ながらの手術となります。このカメラをお腹の空間を映すという意味で腹腔鏡と呼ぶことから、このような手術名になっています。お腹に開けた小さな穴からは、術者の手を入れることはできませんので、専用の道具(細長い棒の先にはさみや電気メスなどがついたものなど)を使いながら手術を行います。

 

腹腔鏡手術のメリット・デメリット

腹腔鏡手術のメリット・デメリット

最大のメリットは、きずが小さいことです。腹腔鏡手術のきずは小さな穴をあけるためのものなので、開腹手術のような10数cmの一つの大きなきずではなく、1cm程度のきずが何箇所かできることになります(切除した臓器を取り出すためのきずは数cmになります)。このことは、美容面でとても優れているだけでなく、術後の痛みが軽減されることにもつながります。また、少し専門的になりますが、カメラ(腹腔鏡)で手術部位を拡大しながら手術ができるので、微細な操作が可能という利点もあります。

一方、デメリットとしては、視野が狭いことです。開腹手術では、お腹を大きく開いていますので広い視野が得られます。例えば、胃の手術をしている場合でも、周辺の肝臓や小腸を、手術に携わっているスタッフ全員の目で確認できます。それに比べて腹腔鏡手術ではモニターに映しだされた範囲しか見えていません。胃ばかりに目をとられている間に、肝臓から出血していた、腸に穴があいていた、ということがありうるわけです(もちろんあってはならないことですので手術は細心の注意をはらいながら行われます)。

 

 

まだばらつきがある腹腔鏡手術

歴史的にみると、手術の基本は開腹手術でした。開腹手術で術式(どのように手術を行えば、安全に病気をなおすことができるか)が磨き上げられ、それがここ10数年で腹腔鏡手術に置き換わってきているという流れです。

150913_open vs laparo

 

例えば上記はがん研有明病院での大腸がんに対する手術件数を表してます。こちらの病院はかなり腹腔鏡手術に積極的な病院でして、2005年には30%しかなかった腹腔鏡手術の割合が、2014年には95%まで伸びています。

一般的には、これまで手術が施行されてきた症例数は伝統的な開腹手術のほうが多く、安全性・治療成績などは確立されていることになります。腹腔鏡手術が本当に開腹手術と同等の治療成績で、安全なのかは、検証中のものもあるということになります。また、その施設、医師がどれくらい腹腔鏡手術の経験があるかも大きくばらつきがあります。下記はがん診療に力をいれている4施設で、大腸がんに対しどの程度の割合で腹腔鏡を行っているかを比較してみましたが、この中でもかなりばらつきがみられます。

150913_colon cancer

最終的に治療法を選ぶのはあなたです

「開腹手術か腹腔鏡手術か」は、まずは医師が判断し患者に提案することになります。冒頭で申し上げたように、あなたがすべきことは、その説明をしっかり聞くこと、わからないことは質問することです。

開腹手術を提案された場合、腹腔鏡手術という選択肢があるのかを聞いてみましょう。医師が開腹手術を選んだ理由が、あなたの病気を治すためのベストな方法であればよいのですが、単にその施設の設備またはその医師の経験・技術では開腹手術の方がリスクが少ないというだけで、腹腔鏡が得意な医師に聞くとまた別の意見、ということもなくはありません。

逆に、腹腔鏡手術を提案された場合、その施設・医師に十分な経験があるかどうかは確認したいところです。その際、腹腔鏡のメリットだけでなく、デメリットもちゃんと説明してくれているかどうかは誠実さの指標になるでしょう(特に、術中の所見や、予期せぬトラブルによって開腹手術に変更する場合がありうることを説明していない場合、安全性を重視していないのかもしれません)。

日本の手術の安全性水準は高いので、必要以上に不安になることはありません。しかし、手術はあなたや家族にとって重大な出来事です。その全てを他人(医師)まかせにするのではなく、じっくりと自分で確かめる姿勢が必要だと思います。

 

 

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