認知症の治療は薬物治療と心理/社会的アプローチの治療の併用が効果的です

認知症の治療は薬物治療と心理/社会的アプローチの治療の併用が効果的です

認知症の人には薬物による治療のほかに、その人に残っている能力に働きかける回想法なども行われています。
ここでは、認知症の治療として薬物療法と回想法などの心理・社会的アプローチをご紹介します。

認知症の治療

認知症を引き起こす病気は数多くあるため、薬物療法や外科手術など治療法もさまざまです。たとえば、脳血管性認知症の場合は脳の「血行再建術」という血管の詰まりや狭くなった部分を改善する手術を行うと血流がよくなり、認知症の症状改善につながります。

また、認知症が甲状腺機能低下や尿毒症などの他の病気の影響であれば、原因となっている病気の治療をするのが基本です。さらに、アルコールなどの薬物惹起性(じゃっきせい)の認知症の場合は、アルコールを止めて解毒するなど原因を除去すると症状の回復につながります。

薬物療法

アルツハイマー病型認知症に用いられる薬は症状を根本的に治すものではなく、進行を遅くさせるための薬です。日本で承認されている薬には軽度の人から重度の人まで使うことができるドネペジルやガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4つがあります。

認知症では脳内のアセチルコリン濃度が低下しているため、治療に用いるのはアセチルコリン濃度を上昇させる薬です。ドネペジルなどの薬はアセチルコリンの分解酵素の働きを抑えることによってアセチルコリン濃度を高め、記憶障害などの症状を改善して進行を遅らせることが期待できます。

認知症の薬物療法は治療の効果を実感しにくい面があるでしょう。しかし、アルツハイマー病型認知症は進行する病気であることを考慮すると、症状が変わらずに同じような状態が続いているとすれば「治療薬が効いている」と考えることができます。

心理・社会的アプローチ(非薬物療法)

薬物療法に併用して非薬物療法を行うと脳の働きを促し、不安感などの症状緩和が期待できます。

●回想法

回想法は、グループで昔のことを話し合ったり、個別で他の人に話して聴かせたりすることによって脳を刺激し、精神の安定や記憶力の改善などを目的とした心理療法です。回想法を継続して行うと記憶や思考などの認知機能が改善し、認知症の進行を遅らすことが期待できます。

認知症になると新しい記憶は初期の段階で障害されますが、過去の記憶は比較的、残っていることが多いです。そのため、回想法では若い頃の写真をはじめ、音楽や映画、あるいは昔の生活用品やおもちゃなどを使って五感を刺激して思い出を引き出すようにします。

また、医療者が共感的にかかわることで患者さんの不安感や孤独感などが軽減し、過去の出来事を思い出す中で感情も一緒に思い出され、情動の活性化につながるのです。さらに、懐かしい思い出の中で辛かった出来事なども含めて人に話すことにより、人生の再評価の機会にもなります。

●その他の治療法

レクリエーションや芸術などの活動を通して脳に刺激を与え、情動の活性化を図ります。活動内容は患者さんにとって楽しめるものとし、必要によって行いやすいようにルールを変えるなどの工夫も必要です。

ゲームや囲碁などのレクリエーション療法をはじめ、音楽療法や陶芸などの芸術療法、また、ウォーキングや体操などの軽い運動を行うと症状の改善や進行の遅延が期待できます。さらに、犬などの動物と触れ合うアニマル・アシステッド・セラピーも情緒的な安定が期待できる治療法の一つです。

 

アルツハイマー病型認知症の予防ワクチン

アルツハイマー病型認知症の発症には脳にアミロイドβというタンパク質の蓄積(アミロイド沈着)が関係しています。近年、予防や根治治療につながるものとして行われている研究がアミロイドβに対する抗体の研究です。

国立長寿研究センターでは、アルツハイマー病の予防ワクチンを開発したと報告しています。開発されたワクチンは腸の細胞でアミロイドβを作り、アミロイドに対する免疫反応を生じさせて抗体を作り出し、アミロイド沈着を抑えようとするものです。このワクチンは、免疫器官の一つである腸で起こる「腸管免疫」を利用し、身体にとって異物となるものを攻撃して身を守る抗体を作っています。

アルツハイマー病の予防ワクチンは、かつて筋肉注射で接種するタイプのものが開発されましたが、脳炎などの重い副作用が現れて研究が中止になりました。しかし、今回のワクチンは小腸で吸収される飲むタイプのワクチンのため、以前のワクチンより副作用が少ないといわれています。今後、治験が進むことが期待されるワクチンです。
認知症は早期発見により症状の軽いうちに治療を始め、症状の進行をできるだけ遅らせることが重要です。医療機関の中には「もの忘れ外来」の開設、また、認知症予防ドックなどを行っているところもあります。いきいきと暮らしていくためにも、認知症の早めの発見を心がけましょう。

 

 

 

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