肩鎖関節脱臼の名医は低侵襲なタイトロープ法を選びがち!【ドイツ論文】

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[投稿日] '17/08/27 [最終更新日] '18/03/18 2,586views
肩鎖関節脱臼の名医は低侵襲なタイトロープ法を選びがち!【ドイツ論文】

肩鎖関節とは、鎖骨と肩甲骨をつなぐ関節

肩鎖関節(けんさかんせつは)は、鎖骨の外側端と肩甲骨の肩峰(けんぽう:肩の最上部にある突起)の間に位置します。可動範囲は極めて小さいですが、腕を上げる動作には必要不可欠です。

肩鎖関節は下記の3つが互いにくっついて出来ています。

  • 肩鎖靱帯 (肩峰と鎖骨の間にある靭帯)
  • 烏口(うこう)鎖骨靱帯 (烏口突起(肩甲骨の上縁外側にある曲がった突起)と鎖骨の間にある靭帯)
  • 三角筋・僧帽筋 (鎖骨の外側を覆う筋肉)

筋肉と骨を靭帯が繋ぐことで肩鎖関節のずれを防ぎ、関節の構造が保たれます。

 

肩鎖関節脱臼をすると腕を動かしたり肩を押した際に激痛がする

スポーツ、自動車・自転車事故、転倒などで肩を強打し、無理な力が加わることにより、肩鎖関節にある靭帯は損傷します。靭帯が損傷した程度、関節がずれた方向にて、捻挫・亜脱臼・脱臼・骨折と診断されます。亜脱臼は肩鎖関節のずれ、関節の外れが脱臼です。

肩鎖関節脱臼では、靭帯が断裂し、関節は上下・前後にずれます。鎖骨の外側端は上方に移動して浮き上がり、階段状に飛び出します。肩は突出し、鎖骨の外側端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動きます。

肩鎖関節脱臼の症状は、肩の腫れと痛みです。腕を動かす、肩を押す際に激痛があり、安静時にも痛みを感じます。時間の経過に伴い、肩の腫れ、痛みは強まります。

 

肩鎖関節脱臼の際は、手術療法か、固定による安静での治療がスタンダード

肩鎖関節脱臼の治療では、手術により損傷した靱帯を修復し、脱臼した関節を正しい位置に戻す、ということをします。手術後3ヶ月前後で日常生活に不自由はなくなり、手術後半年から1年を目処に重い荷物を持つなどの重労働やスポーツが可能になります。

靭帯の損傷や関節のずれが軽度で、靭帯の自然治癒が見込める場合は手術を行わず、脱臼部分をテーピング、三角巾、包帯、ギブスなどにて固定して、関節のずれを直します。固定期間は4~6週間程度です。支障なく日常生活が送れるようになるには、固定除去後3ヶ月は必要になります。関節の再形成・機能回復には2~3年を要し、その間は関節に負荷が掛かる動作(スポーツ、荷物の上げ下げなど)は出来ません。

完全に治るまで、という意味では非常に長い期間、安静にしておく必要があります。

 

肩鎖関節脱臼の手術における専門医(名医)の治療効果を検証した論文

今回の研究論文では、肩鎖関節脱臼の手術における専門医(名医)の治療効果を検証しています。

ドイツ国内の外傷整形外科796ヶ所を対象に、整形外科医203人(肩・肘の関節鏡手術の専門医101人、専門外の医師102人)の治療方法と効果を対比分析が行われました。肩鎖関節脱臼が比較的軽症の場合は、治療法に関連する有意差は認めませんでしたが、肩鎖関節が完全に脱臼した重症例においては肩・肘外科専門医の67%、専門外の医師の74%が手術療法による治療を第一選択とすることが分かりました。

靭帯の断裂を修復する手術として、フックプレート術とタイトロープ法の2つが比較されています。

  • フックプレート術:患部を切開して金属製のプレートで固定する従来型の方法
  • タイトロープ法:関節鏡という器具を用いて、人工靭帯で治療を行う手術方法で、低侵襲だが術野が狭く、手術が難しい

専門医と非専門医の手術方法選択は、分析の結果下記のようになっていました。

  • 専門外の整形外科医はフックプレート術56%、タイトロープ法16%
  • 肩・肘外科専門医はフックプレート術32%、タイトロープ法38%

この結果から、専門医は手術難度が高くても、身体に負担の少ないタイトロープ法を選択的に実施し、術後の患者の負担を少しでも減らそうとしている事が分かります。

 

肩鎖関節脱臼で治療を受ける場合、病院で実績の多い手術方法が何かを調べてみましょう

研究論文より、名医は「より安全で身体に負担が掛からない手術方法」にて肩鎖関節脱臼の治療が可能であることが分かります。タイトロープ法では繊維質の人工靭帯を用いて損傷部分を固定する為、除去する必要がなく、副作用や人体への影響は少ないといわれます。一方、フックプレート術では、金属製プレートにて固定した後、プレートを除去します。プレートの固定に伴い、痛み、可動域の縮小、感染症、副作用のリスクが高まります。

肩鎖関節脱臼で治療を受けようとお考え場合、治療における手術実績をホームページなどで一度確認し、どのような手術を多く実施しているのかを見比べて、治療を受ける病院を選んでみてはいかがでしょうか。

 

参考論文:Current state of treatment of acute acromioclavicular joint injuries in Germany: is there a difference between specialists and non-specialists? A survey of German trauma and orthopaedic departments.

 

 

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