肩関節形成術は、年間31症例以上行っている名医の方が手術時間が短い!

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[投稿日] '17/03/11 [最終更新日] '18/03/18 377views
肩関節形成術は、年間31症例以上行っている名医の方が手術時間が短い!

肩関節にまつわる悩みは老若男女関わらず尽きないものです。例えば、野球やラグビー等のスポーツをされる方の中には肩の怪我をきっかけに戦線離脱を余儀なくさる方もいらっしゃいます。また、年齢を重ねるに連れて五十肩に悩まされ日常生活に制限が生じることもあります。今回はそんな肩関節に関係した名医についての論文を紹介してみます。

 

肩関節の働き

人の身体の中には多種多様な関節が存在していますが、肩関節は関節の中で最も自由に動く関節として知られています。具体的には、ものを持ち上げたり下ろしたりする際の支柱として働くのはもちろんのこと、前後左右360度に回転するなど可動領域に関してどの方向に対しても動かすことが可能です。また肩関節を構成する筋肉(三角筋や僧帽筋など)はとても巨大であり、力強い動作を産み出すこと源となっています。

 

肩関節の疾患

肩関節に関係した疾患は多岐に渡ります。野球やバレーボール、テニスなど肩を酷使するスポーツに従事する人の中には、「上方関節唇損傷、腱板関節面断裂」と呼ばれる(別名、投球障害肩)を発症する方がいらっしゃいます。同じくスポーツ関連の肩関節疾患として「反復性肩関節脱臼」が挙げられます。特にラグビー等、衝撃の強いフィジカルが求められるスポーツ中に発症することが多く、肩の関節が抜けることが癖になってしまう状況です。その他は加齢によるもの(多くは肩関節周囲炎。いわゆる五十肩)、交通事故等の外傷をきっかけとするものも含まれます。

いずれの場合も、肩関節に痛みが生じたり本来の可動域が制限される等を認めるようになります。結果として運動選手としてのパフォーマンスに著しい悪影響が生じますし、日常生活にも不自由を余儀なくされることもあります。

 

肩関節疾患の治療

肩関節疾患の中にはリハビリである程度の症状改善が見込めるものもありますが、理学療法の効果が限局的な場合も珍しくはなく手術を余儀なくされることもあります。

運動制限や変形・疼痛などの障害がある肩関節に対して、可動性を回復したり疼痛を除去したりすることを目的とした手術を包括的に「肩関節形成術」と呼びます。外傷や炎症で生じた骨の癒着を切除するだけのこともありますし、関節そのものを部分的もしくは完全に人工物で置き換えることもあります。肩関節は「上腕骨頭」と「関節窩」と呼ばれる部分から成り立っており、完全に人工関節で置換する場合には「人工肩関節全置換手術」、上腕骨頭のみを置換する場合には「人工骨頭置換手術」と呼びます。

人工物で肩関節を修復する手術は非常に複雑であり、手術を行っても満足いく機能回復が得られずに再手術を余儀なくされることもあります。また人工物を体内に入れることから手術後の感染症のリスクは無視できないものであり、こうした術後合併症にうまく対処することも手術を成功させるためのキーとなります。手術経験豊富な医師の方が手術成功率が高いことは想像に難くありませんが、具体的に、手術経験値の差がどの程度術後経過に影響をもたらすのでしょうか。

 

肩関節形成術の名医かどうかは手術件数と関係がある?

今回の研究では2012年6月から2015年2月までの間に、アメリカフロリダ州にあるFlorida Orthopaedic Instituteで実施された肩関節形成術を受けた636例を対象にされています。術者の手術件数が手術時間に影響を及ぼすか、また手術30日以内の再入院率に影響を及ぼすか、の二点について検討されています。

肩関節形成術を年間31症例以上行なっているかどうかを基準として外科医が2つに分類されています。年間の手術件数が多い外科医(年間31例以上)の平均的な手術時間は105.9分であったのに対して、手術件数が少ない外科医(年間31例未満)の手術時間は128.3分と長い傾向にあり統計的にも有意な差を認めました(P<0.001)。また、0.94%(6件)の症例が予期せぬ再入院を経験していましたが、再入院を来した症例は平均163分の手術時間を必要としており、再入院をしていない症例の手術時間(107.1分)と比べて有意に長かったです(P<0.001)。

以上のことから、肩関節形成術の経験が豊富な外科医が手術を執刀すると、術後時間が短くなり再入院率も低下させうることがわかりました。

 

肩関節形成術における名医は手術件数を基準に選ぶとよい

今回ご紹介した論文から、肩関節形成術を多く経験する医師ほど名医であることが示されました。肩関節形成術の名医を選択することができれば手術時間の短縮や再入院を回避することができるだけではなく、周術期合併症の低下(感染症や輸血回数)や医療費低下など多くのメリットがもたらされる可能性があります。もちろん手術件数だけが名医を規定する因子ではありませんが、少しでも安全に手術を受けるためには手術件数を参考にする重要であることは変わりありません。

スポーツ選手はもとより、高齢化社会が進む現在において肩関節に関しての興味は年々高まりつつあります。健康な時と変わらぬ日常生活を送るためにも、もし肩関節手術の必要性を迫られた時には信頼できる医師に出会うことが重要です。その際には手術件数を参考にすることで、より効率的に名医に出会うことができると考えられます。

参考論文:The influence of patient- and surgeon-specific factors on operative duration and early postoperative outcomes in shoulder arthroplasty. Clark JC, Simon P, Clark RE, Christmas KN, Allert JW, Streit JJ, Mighell MA, Hess A, Stone J, Frankle MA. doi: 10.1016/j.jse.2016.10.025

 

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