致死性不整脈に有効な植え込み型除細動器の手術では、手術件数が多い名医の方が合併症が少ない!

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[投稿日] '17/03/06 [最終更新日] '18/03/18 286views
致死性不整脈に有効な植え込み型除細動器の手術では、手術件数が多い名医の方が合併症が少ない!

致死性不整脈とは

心臓は筋肉でできた臓器であり、その筋肉にわずかな電気が流れることで心臓が動く仕組みになっています。心臓の上の方にある「洞結節」というところで電気がつくられ、「伝導路」と呼ばれる電気の通り道を通って心臓全体に流れることで、心臓の筋肉が収縮するようになっています。正常な心臓では、洞結節が一定のリズムで電気を作り、規則正しく心臓の筋肉が収縮することで、絶えまなく全身に血液が流れていきます。

しかし、洞結節で電気が発生しない、あるいは洞結節以外の場所から電気が流れてしまうと、心臓の筋肉が規則正しく収縮せず、脈拍は不規則なリズムをとります。このように、心臓の筋肉が規則正しく収縮せず、不規則な脈拍となることを不整脈と言います。

ひとえに不整脈と言っても症状がある人もいればまったくない人もいます。しかし、不整脈の中には、時として突然死を招くような危険な不整脈に変化してしまう場合があります。このような不整脈のことを「致死性不整脈」といいます。致死性不整脈には、心臓から全身に血液を送る場所(心室と言います)が小刻みに動いてしまう「心室頻拍」や心室が痙攣してしまう「心室細動」が含まれます。

いずれの場合も全身に十分な血液を送り出すことができずに突然死に至る場合があるため一刻も早い治療が必要となります。今回は、「心室頻拍」や「心室細動」に有効な治療法である「植え込み型除細動器」について紹介したいと思います。

 

致死性不整脈に有効な治療法—植え込み型除細動器

植え込み型除細動器とは、命に関わる不整脈を治療するための体内植え込み型の装置です。植え込み型除細動器は常に心拍数を監視しており、不整脈が現れた時にその異常な心臓のリズムがどのような不整脈なのかを診断し、状況に応じた治療が自動的に実施されます。植え込み型除細動器によって不整脈を止める方法には「ペーシング」と「電気ショック」の二つがあります。

ペーシングとは、心室頻拍が起こった時に実際の脈拍より少し速く心臓を人工的に刺激することで正常な心臓のリズムに戻す方法です。一方、ペーシングが無効である場合や、心室細動のような危険な不整脈が起こった場合には、直ちに不整脈を停止させる必要がありますので電気ショックが行われます。ペーシングと異なり、電気ショックの場合には身体に強い刺激を与えることになるため、痛みを伴います。

 

植え込み型除細動器の適応となる症例と合併症

植え込み型除細動器は、先ほど説明した心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈を経験した患者さんや、今後そのような致死性不整脈を経験する可能性が高い、と予測される患者さんが適応となります。植え込み型除細動器はその名の通り、体内に植え込む手術が必要となりますので、手術に伴う合併症が起こる可能性があります。除細動器本体あるいは電極リードからの感染や、出血などが合併症としてあります。

 

植え込み型除細動器の植え込み手術件数と合併症発症率の関係を調べた論文

今回ご紹介する論文は、病院および医師の植え込み型除細動器(以下、ICDとします)の植え込み手術件数と、術後の合併症発症率との間に関係があるかどうかを検討した研究です。

本研究では、ICD臨床研究データベース(ICD Registry)に登録している1,463の病院に勤務する4,011名の医師により初回のICD植え込み手術を施行された356,515名の患者を対象としています。対象期間は2006年4月から2010年3月までの4年間であり、ICD植え込み手術後に起こる合併症の割合を主要な評価項目として掲げています。

 

ICD植え込み手術件数の多い名医ほどICD植え込み手術後の合併症が少ない

分析の結果、ICD植え込み手術後に合併症を起こした割合は3.1%でした。合併症の発症率はICD植え込み手術件数が少ない医師(手術件数が下位25%)の場合には4.6%であったのに対し、ICD植え込み手術件数が多い医師(手術件数が上位25%)の場合には2.9%でした。つまり、ICD植え込み手術件数が多い医師は合併症のリスクが少なく、名医であると言えます。

また、ICD植え込み手術件数が多い病院(上位50%)の合併症発症率は3.02%であるのに対し、ICD植え込み術件数が少ない病院(下位50%)の合併症発症率は3.57%でした。つまり、ICD植え込み手術件数が多い病院ほどICD植え込み手術に伴う合併症のリスクが少ないということがわかりました。

 

致死性不整脈に有効なICD植え込み手術の名医は手術件数を基準に選ぶと良い

今回紹介した論文の結果から、ICD植え込み手術件数が多い医師は少ない医師に比べて手術後の合併症が少ない、すなわち名医であることがわかりました。さらに、ICD植え込み手術件数が多い病院は少ない病院に比べて手術後の合併症が少ないこともわかりました。

先ほどお話ししたように、ICDは心室頻拍や心室細動のような致死性不整脈と診断された方が対象となる治療法です。健康診断などで不整脈の疑いがあると言われたことがある方は、治療が必要かどうか名医に診てもらうことが重要です。診断の結果、ICDの適応があると言われた場合には、まず手術件数を基準にして、ICD植え込み手術の名医を探してみてはいかがでしょうか?

 

<参考文献>Freeman et al: Physician procedure volume and complications of cardioverter-, defibrillator implantation. Circulation 125(1):57-64, 2012

 

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