心筋梗塞などに対する冠動脈バイパス術では手術件数が多い名医ほど死亡率が低い!

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[投稿日] '17/02/18 [最終更新日] '18/03/18 466views
心筋梗塞などに対する冠動脈バイパス術では手術件数が多い名医ほど死亡率が低い!

虚血性心疾患とは

心臓は全身に血液を送るポンプとしての役割を果たしており、私たちの身体になくてはならない臓器です。心臓がポンプの役割を正常に果たすためには、心臓の筋肉(心筋)が一定のリズムで収縮し続けることが必要です。

心筋自身も、心臓を取り巻く動脈から酸素と栄養分の供給を受けて、収縮を繰り返しています。この動脈が「冠動脈」です。心臓が正しく働くためには、冠動脈にしっかり血液が流れていることが大切です。冠動脈が血栓で狭くなったり、閉塞してしまったりすると、心筋への血流の供給が減少または途絶し、心臓が正常なポンプとしての役割を果たすことができなくなります。このようになる病気を「虚血性心疾患」と言います。

 

狭心症と心筋梗塞とは

虚血性心疾患は主に「狭心症」と「心筋梗塞」の2つに分類されます。

狭心症は、運動時や朝方に「胸が締め付けられるような痛み」や「息苦しさ」が起きる病気です。冠動脈が動脈硬化などにより狭くなったり、時々血管が収縮したりすることで、心筋への血流の供給が一時的に減少することが原因で起こります。狭心症は安静にしていると治まるなど、心筋の傷害は可逆的です。

一方、心筋梗塞とは、冠動脈内に血栓ができて閉塞するなど冠動脈の血流が途絶することが原因で起こります。心筋梗塞では狭心症と異なり、胸痛症状が30分以上長引き、場合によっては心臓のポンプ機能が停止してショック状態になることもあります。

 

虚血性心疾患の治療

虚血性心疾患の治療は、薬物療法やカテーテル治療など内科的治療が基本となります。ただし、薬物療法やカテーテル治療で虚血性心疾患がコントロール困難な場合、外科手術(冠動脈バイパス術)の適応となることがあります。

冠動脈バイパス術では狭くなった冠動脈病変の先に、患者さんの胸や腕から採取した健康な血管を繋ぎ、迂回路(バイパス)を作製することにより、心筋への血流量を増やすことができます。冠動脈バイパス術は大がかりな手術なので、術後の出血や脳梗塞など合併症のリスクも高いです。ですので、冠動脈バイパス術を受ける際には安心して任せられる名医をしっかりと選ぶことが重要です。

 

冠動脈バイパス術の手術件数と治療成績を調べた論文

今回ご紹介する論文は、冠動脈バイパス術の治療成績と、病院および医師の年間手術件数に関係があるかどうかを検討した研究です。アメリカにある164の病院に勤務する1,451名の外科医により治療を受けた81,289名の虚血性心疾患の患者を対象としています。2003年10月1日から2005年9月1日までの約2年間に、冠動脈バイパス術(ただし非典型的な術式は除く)を受けた「18歳以上の患者」を対象に、解析を行っています。

この研究では、30日死亡率(術後30日以内に死亡する患者の割合)と再入院率(退院後に再入院する患者の割合)を主要な治療成績の指標として評価しています。30日死亡率と再入院率が低いほど治療成績が良い、すなわち名医であると言えます。また、周術期管理(①手術当日に抗生物質を用いた手術部位の感染対策を行っているか、②抗生物質の使用方法は適切であったか、③深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)対策をしているか、④術後2日後に血栓予防薬(アスピリン)や循環調整薬(β-受容体拮抗薬)、脂質降下薬(スタチン系)を使用しているか)と治療成績との関連についても分析しています。

 

冠動脈バイパス術では手術件数の多い名医ほど治療成績がよい

分析の結果、30日死亡率は、年間手術件数が上位25%の医師に比べて下位25%の医師は1.26倍高いという結果でした。この結果から、冠動脈バイパス術の年間手術件数が多いほど名医に出会える可能性が高いことがわかりました。

また、再入院率と医師の手術件数との間にはそれほど大きな相関は認められませんでしたが、病院としての冠動脈バイパス術の件数が多いほど再入院率が低いという結果でした。さらに、適切な周術期管理を行っている症例では、そうでない症例に比べて2倍以上も30日死亡率が低下することがわかりました。

 

虚血性心疾患の冠動脈バイパス術における名医は手術件数を基準に選ぶと良い

今回紹介した論文の結果から、冠動脈バイパス術の年間手術件数が多い医師は少ない医師に比べて手術による死亡率が低い傾向にある、すなわち名医であることがわかりました。さらに、適切な周術期管理を行うことで手術リスクを低下させることができることも明らかとなりました。したがって、冠動脈バイパス術では手術件数が多く、周術期管理をきちんと行っていることが名医の条件と言えます。周術期管理がきちんとしているのかは専門家でないとなかなか評価することは難しいと思いますが、冠動脈バイパス術を受ける場合には、まず手術件数を基準に名医を探してみてはいかがでしょうか?

 

<参考文献>
Auerbach et al:Shop for quality or volume? Volume, quality, and outcomes of coronary artery bypass surgery. Ann Intern Med 150(10):696-704, 2009

 

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