子宮筋腫などに対する子宮摘出術は、手術件数の多い名医のほうが合併症率が低い!

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[投稿日] '17/02/24 [最終更新日] '18/03/18 924views
子宮筋腫などに対する子宮摘出術は、手術件数の多い名医のほうが合併症率が低い!

女性特有の臓器である子宮ですが、病気のため子宮にメスを入れる必要性に直面することがあります。身体的な負担を少なくする意味だけに限らず、精神的な負荷を減らす意味においても、手術をうまく遂行する名医を探すことはとても大切です。そこで今回は、子宮に対する手術と合併症発生率とに関係した論文を紹介します。

 

子宮筋腫や子宮内膜症:子宮摘出術の適応

子宮は胎児を育むにあたり必須の臓器であることはご存知かと思いますが、さまざまな理由から子宮の一部分もしくは全体を摘出する必要が生じることもあります。

例えば、成人女性のうち4人に1人は子宮筋腫と呼ばれる病気に罹患していると推定されています。重篤なケースでは生理痛や出血量がひどく日常生活に支障を来たすこともあるため、部分的に病巣部位を摘出したり子宮全体を摘出することがあります。2014年度の資料によると、その治療のために全国でおよそ60,000件の手術が行われたと報告されています。

その他にも、子宮内膜症と呼ばれる病気は不妊と密接に関係していることから、妊娠しやすい身体にすることを目的に手術適応になることがあります。

以上のように子宮に関する病気は決して稀なものではなく、子宮摘出術が適応になるケース多岐に渡ります。

 

子宮摘出術の種類

子宮摘出術には大きく分類して、①開腹手術、②低侵襲術(膣式手術、腹腔鏡下手術)の二つの方法があります。

開腹手術はお腹を開けて子宮にアプローチする方法であり、子宮を直接観察しながら手術を行うため比較的安全に手術を行うことが出来ます。しかし術後痛みが持続する期間も長く、傷口が大きいため感染症を起こす確率も高くなります。

その一方、低侵襲術は膣もしくはお腹に開けた小さな穴に器具を入れて手術をする方法です。傷口は開腹手術と比較して小さいため、身体に対しての負担は軽く入院期間も少なくすみます。しかし、開腹手術と比較して技術的な要求度も高いため、術者の経験値が手術成功率に大きく影響を及ぼします。

以上から、低侵襲術の経験数が少ない場合には、安全策として開腹手術が選択される傾向にあることが予測され、術後の負担が増加するのではないかと考えられます。では具体的に、経験値の差がどの程度、術式の選択や合併症発生率に影響をもたらすのでしょうか。

 

子宮摘出術を名医が行うと、術後合併症が有意に低下する

今回の研究では2012年7月から2014年9月までの間に、アメリカ国内62病院で実施された子宮摘出術5,660例を対象にして、術後合併症の低下につながる因子について検討がされました。検討項目としては「患者の年齢」「人種」「術前既往症」「手術理由」に加えて「病院における年間子宮摘出件数」「術者の手術経験症例数」が含まれていました。

子宮摘出術のうち61.5%の症例が開腹手術を受けており、残りの38.6%が低侵襲術にて治療を受けていました。開腹手術を受けた症例のうち、899例(25.8%)は何かしらの術後合併症を経験していました。一方低侵襲術を受けた患者を見ると、172例(8.2%)が術後合併症を発症するに留まっていました。このことから、低侵襲術の方が術後合併症を有意に減らすことが示されました。

次に病院および医師の手術件数と、合併症発生率の関係も検討されています。その結果、201件数以上手術を扱った病院は、それ以下の手術件数の病院と比較して、およそ50%前後合併症の発生率が低いことがわかりました。また研究対象期間中に21件以上手術に携わった医師は、それ以下の経験数の医師よりも最大40%合併症を減らすこともわかりました。医師の手術件数は、低侵襲術選択率とも有意に相関していました。技術的に裏付けられた名医ほど低侵襲術をより安全に遂行し、結果として合併症を低下させたと考えられます。

以上の結果から、子宮摘出の手術件数が多い病院・医師のほうが合併症を起こすことなく安全に子宮摘出を行うことが判明しました。

 

子宮摘出術における名医は手術件数を基準に選ぶとよい

今回ご紹介した論文から、子宮摘出術を多く経験する医師ほど、名医であることが示されました。また施設としても、子宮摘出術を多く扱う病院のほうが、より安全に手術を行うこともわかりました。もちろん手術件数だけが合併症を規定する因子ではありませんが、少しでも安全に手術を受けるためには、手術件数を加味することが重要であることは変わりありません。

女性にとって、子宮を手術するというのは大きな決断です。子宮摘出術の可能性を提示された場合、まずは医師としっかりと話し合い、治療方針について納得をすることが大切です。どの医師にかかるかということを考慮する際、手術件数を参考にすることで、より効率的に名医に出会うことができると考えられます。

 

参考論文 Patient, Surgeon and Hospital Disparities Associated with Benign Hysterectomy Approach and Perioperative Complications. Mehta A, Xu T, Hutfless S, Makary MA, Sinno AK, Tanner EJ 3rd, Stone RL, Wang K, Fader AN. doi: 10.1016/j.ajog.2016.12.020

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