歩くと足がしびれて痛くなってくる…それ、脊柱菅狭窄症かも…

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[投稿日] '16/10/14 [最終更新日] '18/03/18 429views
歩くと足がしびれて痛くなってくる…それ、脊柱菅狭窄症かも…

脊柱管狭窄症の概要

脊柱管とは、背骨の中にある空間のことで、その中には脊髄と呼ばれる太い神経が通っています。この空間が狭くなってしまい、中にある脊髄が圧迫を受けてしまう病気が「脊柱管狭窄症」です。神経が圧迫されることで、筋肉が動かしづらくなったり、しびれや痛みなどが現れたりします。

ところで、背骨は何個の骨でできているか知っていますか?

実は、背骨は24個の骨から出来ています。このうち首の部分を頸椎(けいつい)、胸の部分を胸椎(きょうつい)、腰の部分を腰椎(ようつい)と呼びます。体重を支えるために最も負担がかかっている部分は腰椎であり、脊柱管狭窄症のほとんどは腰椎に起こる腰部脊柱管狭窄症となっています。

腰部脊柱管狭窄症では、腰以下の神経に支障をきたします。このため、腰痛や腰まわりの違和感、足のしびれや痛み、足の動かしづらさ、感覚障害(触った感じが鈍い、熱い・冷たいが分からない)などが生じます。この結果、足が持ち上がらないために足を擦るように歩いたり、なんでもないところでつまずいたり、スリッパが脱げやすいなどの症状が現れるようになります。

中でも特徴的なのは「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という症状です。間欠性跛行とは、歩き始めると足に痛みが出てきて次第に歩けなくなり、しかし前かがみになって休むと回復してまた歩けるようになるという状態です。前かがみになって休むと歩けるようになるのは、前かがみになることで背骨の骨と骨の間の空間が広がり、神経の圧迫が解除されるため、痛みが軽減するからです。

放置すると、痛みやしびれが強くなり、歩ける距離が短くなっていきます。歩くのが難しくなると、外出できない、レジャーに行けないという活動範囲の制限でだけでなく、そのために楽しみが奪われてしまって消極的になったり、気分が落ち込むなどの精神面にも影響が現れる患者さんも少なくありません。悪化してくると、歩いていない時でもしびれや痛みが現れるようになります。

また、腰の周辺の神経は排尿や排便に関わる筋肉も支配しているため、進行していくと頻尿や便秘、残尿感が現れ、悪化すると尿や便を失禁したり、逆に尿が全く出なくなってしまうなどの症状も現れます。

患者数は240万人で、40歳以上の方のうち3.3%は腰部脊柱管狭窄症の診断を受けていることになります。男女比は1:2で、女性に多い病気であることが知られています。

脊柱管狭窄症 整形外科

脊柱管狭窄症の原因

背骨と背骨の間には、椎間板という軟骨が挟まっており、また背骨と背骨をつなぐための黄色靭帯という靭帯が縦方向に走っています。これらの椎間板や靭帯、または背骨そのものが変形して背骨の中にある空間(脊柱管)の方に出っ張るようになると、脊柱管が狭くなり、脊柱管狭窄症が引き起こされます。

脊柱管狭窄症を招く原因には

  • 変形性脊椎症
  • 変形すべり症
  • 加齢

などがあります。

変形性脊椎症は、加齢によって椎間板が老化し、軟骨としてのクッションの働きが失われた状態です。すると、骨と骨が直接ぶつかるようになり、その部分の骨が変形して棘(とげ)のようにとがってしまうようになります。このとげが脊柱管に向かってしまうと、脊柱管狭窄症が引き起こされます。

変形すべり症とは、背骨と背骨がずれてしまう病気です。筋肉や靭帯が衰えてしまうことで、骨を支える力が弱くなることが原因と考えられています。この変形すべり症が女性に多い病気であるため、脊柱管狭窄症も女性に生じやすい病気となっています。

椎間板は、その上下の骨が動くたびに少しずつ擦り減っていくものなので、脊柱管狭窄症は加齢によっても生じやすくなります。また、若い人であっても腰に負担のかかるような職業(重い物をもつなど)をしている場合には脊柱管狭窄症が生じるリスクが高まります。

一方、靭帯は加齢によって厚く変形していきます。靭帯は脊柱管の周囲を取り巻くように縦に走っているため、靭帯が肥厚することでも脊柱管は狭くなります。

 

脊柱管狭窄症の治療法

治療方法は大きく分けて保存療法と手術療法の2つに分類されます。通常、初めのうちは薬物療法や装具療法、運動療法による保存療法が行われます。

薬物療法では、痛みを抑えるための鎮痛薬が最も使われています。また、神経のそばには血管が走っていて、その血管によって神経は栄養を受けていますが、この血管に十分な血流がないと、神経が障害されることが知られています。このため、血管を広げる作用をもつ血流改善薬が使われることもあります。

装具療法では、コルセットを使用します。脊柱管は反った姿勢の時に最も圧迫を受け、前かがみの姿勢では圧迫が解除されます。コルセットを着用することで、反るような姿勢を制限させ、日常動作の中で神経の圧迫による痛みが生じる機会を減らすことができます。

運動療法は、腰周辺の筋肉を鍛える方法です。骨を支える筋力が十分量ないと、椎間板や靭帯、骨にかかる負担が大きくなり、これらの変形をもたらして脊柱管を狭くしてしまいます。筋肉を鍛えることで、これらの負担を減らし、脊柱管のスペースを確保することが可能になります。

また、痛みのために身体を動かさなくなると、筋力が低下してしまい、椎間板や靭帯、骨にかかる負担が増すことで症状はさらに悪化していきます。これらの対策のために、筋肉を動かして鍛えるような理学療法が行われます。

これらの保存療法では効果が得られない場合、痛みが強い、歩けないなど日常生活に支障をきたしている場合、排尿や排便に関わる症状が現れた場合などは、手術療法の適応となります。手術療法は、除圧術と固定術に2種類に分類されます。
除圧術では、椎弓切除術(ついきゅうせつじょじゅつ)を行います。

脊柱管は背骨にあいている穴が連なってできる空間ですが、脊柱管の後ろにあたる部分の背骨を「椎弓」と呼びます。この部分を取り除くことで、脊柱管のスペースを広げ、除圧することが可能になります。

ただし、椎弓には筋肉が付着する部分があるため、どうしても筋肉が障害されてしまいます。神経の圧迫を防ぐ代わりに、腰椎を支えている筋力を低下させてしまうというデメリットがあります。このため、変形すべり症などで背骨の安定性が弱い場合は再発してしまうことがあります。

椎体間固定術は、変形すべり症などで背骨がずれてしまっている場合に選択される手術です。脊柱管を狭窄させている椎間板や靭帯などを削って神経の圧迫を解除した後、背骨同士を金属のプレートやネジで留めることで、脊柱管のスペースを確保、維持する方法です。除圧効果と安定性は得られますが、その一方固定してしまうことで可動性が悪くなるというデメリットがあります。

 

脊柱管狭窄症の最新治療

まだどこでも受けれるというわけではありませんが、上記のような除圧術、固定術を内視鏡を用いて行う施設もあります。内視鏡では、切開を加えた部分から医療用のカメラを挿入し、そこから得られる映像をモニターに映し出します。メスで傷を大きく広げて直接見るような従来の方法とは異なり、傷口を小さく済ますことができます。また、カメラの向きを変えたり拡大したりすることで、背骨の中のような小さいスペースでも詳細な治療を行うことが可能となっています。

内視鏡下では18mm程度の小さい切開のみで手術を進めていくことができます。傷口が小さいため、傷跡は目立ちにくく、痛みも軽く済ませることができます。回復も早いため、細菌感染などのリスクは低く、また日常生活や仕事への早期復帰も可能となります。従来の手術に比べ、治療のために切る必要のある筋肉の範囲もより狭くすることができるため、筋力の衰えや動かしにくさ、背骨の不安定性も軽減されます。

内視鏡下椎弓切除術はMEL、内視鏡下椎体間固定術はME-PLIF/TLIF、XLIFと呼ばれています。MELは椎弓の一部を切除して、肥厚してしまった靭帯を取り除くことで神経の圧迫を解除する方法です。ME-PLIFは背中側からアプローチし、変形した椎間板を取り除いて、そこに代わりの人工物を入れた後、上下の背骨を固定する方法です。XLIFは身体の側方からアプローチする方法です。もともと痛みのある背中の筋肉や神経を避けることで、手術による痛みを軽減させることができます。また、ME-PLIFよりも大きな金属プレートを入れることができるため、より充実した安定性が得られます。

 

 

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