摂食障害は重症化しないうちに治療を開始することが重要です

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[投稿日] '16/05/08 [最終更新日] '18/03/18 505views
摂食障害は重症化しないうちに治療を開始することが重要です

摂食障害は単なる「やせ願望」やダイエットの失敗ではなく、さまざまな要因が重なり合って発症します。摂食障害はどのような治療が必要になるのでしょうか?
ここでは、摂食障害の治療方法をご紹介します。

摂食障害の治療

摂食障害の場合、精神科の治療とともに低栄養や電解質の異常などによる身体症状に対する治療が必要になることが多く、重症度によっては身体的治療を優先して行います。

また、月経異常の治療のために婦人科の治療も必要になることが少なくありません。たとえば、無月経の場合、無月経の期間が短い人ほど月経が回復しやすいことが知られています。摂食障害においては精神科以外の治療も含めて早期治療が重要です。

低栄養状態などの身体的な治療

摂食障害の治療は原則として外来で行いますが、やせが著しいときや低カリウム血症などの重篤な合併症がある場合には入院して身体的な治療を行うのが一般的です。また、患者さん自身が食事を摂れるように精神療法や栄養士による指導なども組み合わせながら、必要な栄養素やカロリー摂取ができるようにしていきます。

身体が食物を受け付けず、口から食べられない患者さんにはチューブを鼻から胃に挿入して液体栄養剤で栄養補給を行うことが多いです。ただし、患者さんの中にはチューブを勝手に抜いてしまうなど治療への拒絶を示す人も少なくありません。

患者さんにとって栄養を摂ることはそれほど辛く、強い抵抗を生じさせるものです。身体の管理は病状によって内科などで行うこともありますが、精神科の治療も併せて行う必要があります。

精神症状に対する治療

摂食障害の治療は単に食べればよい、カロリーを摂らせればよいという単純なものではありません。治療では患者さんが自分を受け入れ、こだわりの影響を少なくし、毎日の生活の中で規則的な食行動ができるようになることを目指します。そのためには家族の病気の理解や家族の治療への協力、また、医師をはじめとする医療者と患者さんとの信頼関係を築くことが治療の基礎として極めて重要なことです。

さらに、うつ病などの精神障害を合併している人や自殺の危険性を含め自傷行為などが認められるときには精神科での入院治療が必要になります。

●薬物療法

肥満恐怖に対しては、抗精神病薬のうち非定型抗精神病薬といわれるオランザピンが効果的といわれています。また、BN(過食症)の過食に関する衝動を抑えるには、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれる抗うつ薬を使用することも多いです。

摂食障害の患者さんの中には抑うつや不安感などを示す人、さらに、うつ病や不安障害、アルコールや薬物の乱用などを合併していることもあります。そのため、それぞれの症状や合併症に対して抗うつ薬や抗不安感などを使用して治療します。

●精神療法

認知行動療法では患者さんの中にある劣等感や葛藤などの解消法として食行動に頼るといった誤った行動ではなく、他の解決方法を探り、食行動とのつながりを少なくすることを目指します。

また、行動制限療法と呼ばれる行動療法を行うことも多いです。AN(拒食症)の人の中には摂取したカロリーを何とか消費しようと過度に運動する過活動がみられることがあります。行動制限療法は入院治療の中で行動を制限し、食事を摂ることができ、目標体重まで増すことができたら徐々に制限を解除することで誤った行動を修正する治療法の一つです。

行動制限療法で重要なのは単に食べることや目標体重をクリアすることではなく、食事をして体重が増えることに対する患者さんの気持ちや患者さん自身の目標がどこにあるのかなどを理解することです。たとえば、患者さんにとって退院が目標となっている場合、たとえ入院中に規則正しい食行動や望ましい体重増加があったとしても退院後の継続は難しいでしょう。

食べたかどうかという視点だけでなく、どのような気持ちで食べているのかを理解することが必要になります。患者さんはときに医療者に受け入れてもらいやすい姿を見せますが、信頼関係を築く中で自分のありのままの姿を見せられるように支援することが重要です。

さらに、家族はかかわり方に戸惑うことも多く、一方で家族のかかわりが回復に影響することも多いため、家族がかかわり方を学ぶ機会を作るなど家族への支援も行います。

 

摂食障害に特化した支援が増えている

摂食障害の自助グループと専用デイケア

摂食障害の人の自助グループや患者さんの家族を対象とした教室(グループ)などが数多くあり、同じ立場で思いを語ったり、他の人の話を聴いたり、分かち合いや情報交換の場となっています。

また、欧米では自助グループのほかに、以前から摂食障害の専用病棟の設置や専門外来、専用のデイケアなどもありました。日本での導入はなかなか進んでいませんでしたが、近年では摂食障害の専門外来とともに専用デイケアを行っている病院が増えています。

デイケアは医師や看護師、作業療法士、心理士などの多くの専門職がかかわり、症状の改善や再発の予防、さらに、自立を支援することを目的とした治療の一つです。摂食障害の人に向けたプログラムでは病気の理解をはじめ、運動や芸術などさまざまな活動を通して人とのかかりや日常のストレス対処などを身につけ、食行動を改善できるようにします。

摂食障害治療支援センター

最近の動きとしては薬物治療に加え、カウンセリングや栄養管理、家族への支援などを一体的に行う摂食障害に特化した「摂食障害治療支援センター」が国や自治体の事業として設立されました。

まだ、静岡県や福岡県など数カ所に限られていますが、地域の医療機関や自治体との連携を密にし、支援体制モデルの確立や研究なども進められていくようです。

 

摂食障害の治療に向けた第一歩

摂食障害の治療は自分を受け入れることや精神の安定だけでなく、身体への影響をできるだけ少なくするために早い時期に治療を受けることが大切です。しかし、受診できず、摂食障害に長く苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。発症から時間が経過している人も治療への強固な意志をもって臨むことが改善につながるといわれています。

もし、迷いがあるのなら治療を受けることを選択し、心身ともに健やかな時間を過ごせるようにしませんか?

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