血液検査を受けて腫瘍マーカーのCEAが異常値だったら「がん」の疑い!?

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[投稿日] '16/09/19 [最終更新日] '18/01/19 12,635views
血液検査を受けて腫瘍マーカーのCEAが異常値だったら「がん」の疑い!?

腫瘍マーカーのCEAの検査値が異常値と言われたら

40歳以降になると各市区町村ががん検診を実施し、補助を出しています。がん検診では、バリウムを用いた胃のレントゲン検査や、胸のレントゲン検査、便の検査などを行います。また、こうした市区町村が行っている検査以外に、血液検査で悪性腫瘍(がん)の有無を調べる方法もあり、人間ドックなどやがんドックなどでは行われています。もし、がん検診で血液検査をしたところ、CEAという検査項目の検査値が異常値となっていたら怖いですよね。

では、CEAとは何なのか、何のために計測するのか、異常値はなぜ出るのか、異常値が出るとどいういう意味があるのか、などについてみていきましょう。

 

CEAで異常値が出るときのメカニズム

CEAとは、carcinoembryonic antigenを略したもので、日本語に翻訳しますと、”癌胎児性抗原”となります。血液検査のうち、腫瘍マーカーとよばれる項目の一つです。”胎児”と名付けられた由来は、同一の物質が胎児の腸にも存在するからです。なお、胎児の頃は、比較的多く検出されますが、出生しますと産生する量が減少しますので、CEAは健康な成人の場合ほとんど検出されなくなります。つまりCEAが高く異常値、というのは、通常健康な成人ではほとんど検出されないCEAが検査の結果高い値を示しており、体内に通常よりも多くのCEAが存在し、異常値を示していますよ、という結果なのです。

ちなみにCEAは、1965年にカナダのフィル・ゴールドらによって発見されました。分子量20万の糖タンパク質の一つです。糖タンパク質とは、タンパク質を作るアミノ酸の一部に、下記のような糖類がくっついたもののことです。CEAの場合、アミノ酸に結合した糖の組成は、おもにグルコサミン、ガラクトース、マンノース、フコースなどです。

 

CEAが異常値かどうかは血液を採取して調べます

CEAは、成人の場合、特に大腸がん組織から生み出されることが多いと言われています。CEAが血液に含まれる量を測定し、異常値かどうかをみることで、大腸がんなどの悪性腫瘍が存在しているか、またその状態を知るための指標として以前から用いられています。

腫瘍マーカーは腫瘍の有無調べる手がかり

CEAは腫瘍マーカーの一つです。腫瘍マーカーとは、腫瘍の診断やその進行具合、手術後の腫瘍の状態の判定などに利用される指標の一つです。簡単に言うと、腫瘍の手がかりを調べるということです。悪性腫瘍に限らず腫瘍は、それぞれに独特なタンパク質を合成します。また、腫瘍自身が作り出す以外にも、腫瘍に対して身体がそれを排除しようとするなど、さまざまな反応を示すのですが、その過程で身体がタンパク質や酵素を作り出すこともあります。腫瘍が発生しますと、こうした身体が健常なときには認められないタンパク質や酵素が血液中に流れ込みます。血液検査を行い血液中から検出されると、腫瘍が発生している可能性が考えれられるわけです。

CEAが異常値の場合は悪性腫瘍の可能性が疑われる

腫瘍マーカーには、それぞれにいろいろな特性があります。CEAの特徴として、早期がんではCEAは高い状態になりにくく、進行がんではCEAが高い状態になりやすいという性質があります。そのためCEAの検査値で異常値が出た場合、悪性腫瘍が存在する可能性があると判断出来るのはもちろんですが、治療成績に大きく影響する「進行性かどうか」を疑う診断材料としてもみることができます。しかし、早期がんでは検出されないこともあることを忘れてはなりません。

また、たばこを吸っている方の場合に、悪性腫瘍の存在とは関係なくCEAで異常値が検出されることがありますので、検査値を評価する際に注意が必要となります。

CEA 異常値 血液

CEAを始めとした腫瘍マーカーの異常値で腫瘍の種類を調べる

腫瘍マーカーの種類

腫瘍マーカーには、CEA以外に、AFP、CA19-9、CA125、CA15-3、PSAなど、いろいろあります。腫瘍マーカーには、それぞれに対応する悪性腫瘍が決まっています。例えば、PSAは前立腺がん、CA15-3は乳がん、CA125は卵巣がんというように、対応する悪性腫瘍が1つのものもあれば、CA19-9のように膵臓がん、胆管がん、胆のうがんなど複数の悪性腫瘍に対応するものもあります。ちなみに前者のようなものを”臓器特異性が高い”といいます。

腫瘍マーカーを参考に腫瘍の有無を疑う

悪性腫瘍の検査には、いろいろな種類があります。診断を確定するのには、腫瘍を疑う部分の組織から細胞を取り出し、顕微鏡でみる病理組織検査が一番です。舌がんや歯肉がんのように表面に現れていれば細胞を採取して病理検査もしやすいですが、大腸がんを始めとする内臓系の腫瘍では、簡単に細胞を取って検査するというわけにはいきません。細胞をとるには手術が必要となりますし、症状もないうちから検査のために定期的に細胞を採るというのも考えものです。

そこで、血液を採取して腫瘍マーカーの検査を行い、CEAが異常値かどうかを確認すれば、比較的容易に悪性腫瘍が存在しているかどうかを検査することができます。すなわち、体のどこかに悪性腫瘍があるかどうかを調べるための第一歩目の検査なのです。

CEAが異常値を示さなくても悪性腫瘍の場合もある

ただし、悪性腫瘍が発生していても、ある程度の大きさになるまで腫瘍マーカーのCEAが異常値を示さないこともあります。また、腫瘍マーカーといっても、腫瘍そのものを検出しているわけでもありません。そのため、腫瘍マーカーだけで悪性腫瘍があるかどうかの診断を下すのは難しいです。疑わしいならば、腫瘍マーカーだけでなく、他の血液検査や、レントゲン、CTやMRI、超音波検査、内視鏡検査などのいろいろな検査を組み合わせて、総合的に判断しなければなりません。

 

CEAの異常値の目安としては10ng/ml

CEAの正常検査値は、5ng/ml以下です。CEAは、成人の膵臓、肝臓、乳腺、肺、前立腺、腸などにも少量ながら存在しますので、検査値が5ng/ml以下であれば心配することはありません。一般的に、検査値が10ng/mlを超えると”CEAが高い”と言われ、異常値として悪性腫瘍が体内の組織から作りだされている可能性が濃厚になってきます。

参考:東京大学医学部附属病院検査部 http://lab-tky.umin.jp/patient/ketueki.pdf

 

もし腫瘍マーカーのCEAの値が異常値を示しても偽陽性の場合も

健康でも異常値が出るケースもある

CEAの検査値が異常値を示している場合、体のどこかに悪性腫瘍が存在している可能性が高くなります。肝硬変などの良性疾患の場合でも、CEAは異常値となるのですが、悪性腫瘍ほどあがるわけではありません。

一般的にCEAが10ng/ml以上になると悪性腫瘍が存在する可能性が疑われ、20ng/ml以上になるとCEAの異常値として(非常に高いと判断され)、転移性の悪性腫瘍の存在が疑われます。

ただし健康であっても、たばこでCEAが異常値を示すことがあります。例えば長期間におよぶ喫煙者で、なおかつヘビースモーカーの場合、正常値の2倍程度まで、高い場合もあります。

偽陽性とは

腫瘍マーカーというのは「腫瘍があるとき、つまりがんの疑いがある時に反応するもので、異常値を示したらがんなんだ」と短絡的に思われがちです。

しかし、CEAは健康な人の体内にも存在するもので、血液中に含まれる量が非常にわずかなので、悪性腫瘍が発生していなくても、20〜30%は高くなったり低くなったりするという、ごく微量ゆえの検査の誤差もあります。こうした変動が起こり得ることや、良性腫瘍やたばこなど悪性腫瘍以外の原因でも検査値が異常値を示すことがあり、これを偽陽性と言います。

 

CEAの検査値で異常値が出たときに、悪性腫瘍、良性腫瘍のどっち?

悪性疾患

消化器系の悪性腫瘍ができると検査値が高い結果となり、異常値と判定されることが多くなります。特に、大腸がん患者の50〜80%でCEAが異常値を示すと言われていますので、大腸がんの有無については有用な指標となります。もちろん大腸がんだけでなく、膵臓がん、肝臓がん、乳癌、肺がんなどの悪性腫瘍でCEAが異常値を示すことも多くあります。

なお、大腸がんについてはこちらのコラムを御覧ください。

大腸がんの患者数は年々増えて現在は26万人います

良性疾患

肝硬変や慢性肝炎、慢性腎臓病による人工透析、甲状腺機能低下症、胃潰瘍、たばこなど悪性腫瘍以外の病気でもCEAが異常値を示すことがあります。

すなわち、このことからCEAは臓器特異性が低く、CEAが高いかどうかを診ることでさまざまな悪性腫瘍の疑いを確認できる”汎用性の高い”検査ということができます。

CEA 高い 腫瘍マーカー

 

CEAの検査値が異常値を示した場合の対応

腫瘍マーカーであるCEAの検査値が異常値を示した場合、良性疾患であることもあるのですが、なにより悪性腫瘍が存在している可能性があるわけです。そこで、CEAの検査値が異常値となってしまった原因はなにか、悪性腫瘍が発生しているのか、そして、悪性腫瘍が原因ならどこに発生しているのかを調べなくてはなりません。

CEAが異常値だったときは更なる検査の追加を

CEAが異常値を示した状態で、もし何らかの自覚症状もあるなら、それにあわせて検査を追加して行います。症状に乏しければ、まずは大腸をはじめとする消化器系に狙いを定めて、CT検査、MRI検査、超音波検査などの画像検査を行ない、悪性腫瘍を探します。

また、CEA以外の血液検査も追加で行ないます。消化器系の臓器で悪性腫瘍が見つからなければ、肺などその他の臓器の可能性も考え、探していきます。ただし、CEAが異常値を示す結果となる悪性腫瘍は、進行がんであることが多いため、1〜2ヶ月経過したのちに再びCEAを測定してみて、検査値に変動がない場合は、CEAの検査値が異常値であっても心配しなくていいこともあります。

悪性腫瘍治療後のCEAの変化は要注意

大腸がんをはじめとする悪性腫瘍が見つかった場合、可能であれば、外科手術を行ない悪性腫瘍を切除します。また、化学療法とよばれる抗がん剤を使った治療や、放射線を悪性腫瘍に照射する放射線治療を組み合わせて行なうこともあります。こうした治療が奏効して、悪性腫瘍が小さくなれば、CEAの検査値は異常値を示したときよりも低くなります。

たとえ手術直後はCEAの数値が低くなっていたとしても、悪性腫瘍が再発したり他の臓器に転移したりすれば再び、CEAの数値は高くなってきます。こうした特徴を利用し、CEAの数値は、悪性腫瘍の治療後の効果の判定に用いられたりするだけでなく、再発したり転移したりしていないかを判断する上で、非常に有用です。そこで自覚症状が例えなくても、経過観察に2〜3ヶ月おきくらいの間隔で血液を採って測ることが多いです。そしてCEAの数値の変化から再発が疑われた場合は、CTや超音波検査などの検査を追加して行なうことになります。

CEA以外の腫瘍マーカーとの組み合わせ

悪性腫瘍の転移の可能性を調べるには、CTなどの画像検査を組み合わせるのも有用なのですが、CEAを調べると同時に、臓器特異性の高い他の腫瘍マーカーも組み合わせて調べるのも手段の一つです。複数の腫瘍マーカーを同時に測ることも多いです。

 

腫瘍マーカーのCEAで異常値と言われても慌てずにまず追加の検査を!

腫瘍マーカーは、悪性腫瘍を見つける検査手段として簡便で、血液検査を受ける側としても、血液を採取するだけですから、さほど身体を傷つけることもない検査法です。CEAもその一つで、人間ドックやがんドックなどの健康診断で多用されています。

その結果、CEAが単独で異常値として検出される場合があります。少しだけ高いような場合でも、もしかすると悪性腫瘍であることもありますから、悪性腫瘍の検査を追加で行なわれることもあります。しかし、悪性腫瘍以外にも、たばこや良性疾患などで検査値が異常値を示すこともあります。すなわち、CEAの検査結果が異常値だったからといって必ず悪性腫瘍があるということを意味しているわけではないのです。あくまで、追加で検査をした方が良いでしょうという指標なのです。

反対に、CEAが異常値でなかったから、悪性腫瘍が絶対に存在しないということでもありません。早期がんで異常値として検出されないだけの場合もあります。CEAの検査値だけを重要視するのではなく、CEAの検査値をもとに、自覚症状の有無を含め、必要に応じてCTやMRI、内視鏡検査などを組み合わせて総合的に診査をすることが大切です。

 

 

 

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