甲状腺手術による反回神経麻痺は手術を130件以上経験している名医の方が少ない!

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甲状腺手術による反回神経麻痺は手術を130件以上経験している名医の方が少ない!

甲状腺とは

甲状腺は頸部にある小さな臓器で、蝶のような形をしています。気管を包み込むような形で存在し、左右の葉とそれをつなぐ峡部から成り、甲状腺ホルモンを介して基礎代謝や熱産生に関与しています。

甲状腺機能亢進症では、甲状腺の機能が過剰に働き続けてしまうため、代謝が亢進して身体が常に運動しているような状態になります。そのため症状としては、動悸や息切れ、高血圧、発汗、体重減少、振戦(震え)などがみられます。一方、甲状腺機能低下症では、無気力感や疲れやすさ、浮腫、低血圧、皮膚の乾燥、便秘、動作緩慢などが症状として表われます。

 

反回神経とは

反回神経は脳神経の1つである迷走神経から分岐する神経で、声帯の筋肉を支配しています。脳神経とは、手足に走っている神経(末梢神経)とは異なり、脳から直接分岐している12種の神経で、迷走神経はこのうち第Ⅹ脳神経にあたります。迷走神経は脳から分岐した後、首を下行して胸腔内へ到達し、そこで反回神経を分岐します。

反回神経は胸腔でUターンして首まで戻り、声帯周辺の筋肉とつながります。この長い経路のどこかで神経が傷つくと、反回神経麻痺となり、声がかれる、あるいは出ない、食事やつばが飲み込みづらいなどの症状が発生します。

脳から胸腔までの通り道には甲状腺があるため、甲状腺の手術の合併症の1つとして反回神経麻痺が知られています。

 

甲状腺手術の種類

甲状腺の手術は、甲状腺がんなどの腫瘍、甲状腺機能亢進症のうち薬物療法や放射線治療が行えない、または希望しない場合などに行われます。手術は病変部位の大きさや広がりから、以下の3種類の方法のいずれかを取ります。

  • 甲状腺葉切除:左右に広がる甲状腺のうち、どちらか片方の葉のみを切除する方法
  • 甲状腺亜全摘:一部を残して甲状腺のほとんどを切除する方法
  • 甲状腺全摘:甲状腺を残さずにすべて取り除く方法

いずれの方法においても、頸部の手術を行うことには変わりないので、合併症の問題が生じます。

 

甲状腺切除術と合併症の発生率

甲状腺切除術では術後早期に反回神経の機能不全が起こることがあり、これは手術の質を反映する一つのマーカーとなっています。今回のご紹介する論文は、甲状腺切除術後の反回神経機能障害の発生率と、甲状腺手術の経験との関係について分析する目的で行われた研究について記したものです。

対象となったのは、甲状腺のうち片方の葉、あるいは両側の葉の切除術を受けた617人の患者さんです。年齢の中央値は48歳、男女比は2.8:1でした。合併症の検索として、反回神経の機能評価のためには喉頭鏡検査を行いました。

喉頭鏡検査とは、のどに対して行う内視鏡検査です。口からつながる通路は、飲食物の通り道であり食道へとつながる咽頭と、空気の通り道であり気管へとつながる喉頭との2つの道に分かれています。発声に関する声帯は、のどの喉頭に存在し、この喉頭に内視鏡のカメラを入れて観察することで、声帯の動きを評価します。

 

甲状腺手術の名医が手術を行うと、合併症の発症率が大きく下がる

論文では甲状腺切除術の経験数に応じて「レジデント(研修医)」「経験を積んだ一般外科医」「甲状腺の専門医」の3つのグループに計45名の医師を分類し、それぞれのグループごとに生じた合併症率を分析しています。

それぞれのグループを分析した結果、レジデントのグループでは合併症の発生率が低く、経験を積んだ一般外科医のグループでは、50件目の手術まで合併症の発生率が上昇するという結果となりました。甲状腺の専門医のグループでは、手術経験が130件以上になると合併症率が急激に下がり、1%以下となっていました。

この結果から、甲状腺切除術による合併症の発生率は、手術の経験数によってかなりの影響を受けることがわかります。しかし、少し驚きなのがレジデントで低かった合併症率が、経験とともに上昇して、ピークを超えると急激に低下するという流れです。

これは仮説になりますが、手術経験の浅いうちは、そもそも難しくない症例のみを担当し、その手術も指導医の教育下で実施するため、合併症の発生率が低くなるのではないかと思われます。しかし、その後で手術経験を重ねていく中で、難しい症例も任されるようになり、独り立ちしてしまうために、一度合併症の発症率が上昇していったのではないでしょうか。

医学の世界には、(手術でも手技でも)慣れたころが一番危ないという、自戒を込めた言葉がありますが、今回の論文はまさにそれを表した結果になっています。

ですので、甲状腺の手術を受けることを検討されている方は、手術件数に注目して、圧倒的な経験を有した名医を探すとよいと思われます。

 

<参考文献>Lamadé W, Renz K, Willeke F, et al : Effect of training on the incidence of nerve damage in thyroid surgery. 1999 Mar.

 

 

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