女性で甲状腺の病気ってよく聞くけど甲状腺機能低下症/亢進症って何?

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女性で甲状腺の病気ってよく聞くけど甲状腺機能低下症/亢進症って何?

甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)という病名はあまりみなさんにとって馴染みがないかもしれません。一方で、バセドウ病はご存知でしょうか。シンガーソングライターの絢香さんや、X JAPANのYOSHIKIさん、田中角栄元総理など、著名人でもバセドウ病を公表されている方も多くいらっしゃいます。このバセドウ病も実は甲状腺異常の一つです。今回はこの甲状腺まわりの疾患についてご紹介します。

 

甲状腺機能低下症/亢進症の概要

甲状腺は首の前側で気管を包むような形をしている小さい臓器です。甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌されます。このホルモンは身体の新陳代謝を高める働きがあります。このことから、甲状腺の働きが上がったり下がったりすることで、身体の活動量も上下します。

甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能が下がってしまう病気です。新陳代謝が悪くなるため、身体に老廃物が溜まりやすくなって、手足や顔はむくみ、まぶたは腫れぼったくなります。一日中疲れが取れず、動作が遅い、物覚えが悪い、日中も眠いなど、周りからは「元気がない」「やる気がない」と思われがちです。うつ病と間違われることもあります。また、活動量が落ちるために、体重は増えます。身体は冷えて、寒がりになるという症状もみられます。

甲状腺機能低下症は20代後半から40代に多く、男女比は1:20~30と圧倒的に女性に多い病気です。甲状腺に関する病気は男女比1:10といわれていますが、その中でも甲状腺機能低下症は特に女性に多い病気に分類されます。

治療しない場合、低体温や心不全を引き起こすといわれています。そうなると、意識を失ったり、脳が障害を受けたりすることで、命に関わる病気へ進展する可能性もあります。

一方、甲状腺機能亢進症は甲状腺の機能が活発になりすぎてしまう病気です。新陳代謝が過剰になり、普通に生活している中でも身体は運動を続けているような状態になります。心拍数や血圧があがり、手が震え、汗をかきやすくなります。身体の中でエネルギーが次々と消費されるため、体重は減ります。また、神経の活動も活性化してしまうことで、神経質になる、不安を感じやすくなるなどの性格の変化もみられます。夜なかなか寝付けない、朝早く目が覚めてしまうなどの睡眠障害も起こり得ます。また、眼を大きく見開いて飛び出しそうになる「眼球突出」と呼ばれる特徴的な顔つきになることが知られています。

甲状腺機能低下症は幅広い年齢層にみられる病気ですが、20代から40代、特に30代に多いことが報告されています。男女比は1:4で、甲状腺の病気の中ではそこそこ男性にも生じやすい病気です。

治療しない場合、甲状腺クリーゼを引き起こす可能性があります。甲状腺クリーゼとは、甲状腺の機能がさらに活性化してしまって、命に関わるほどまでに達してしまう危険な状態です。心拍数が極端に増えると、不整脈やショックの原因になります。また、発熱や意識の障害なども起こります。

甲状腺機能亢進症 甲状腺機能低下症 内分泌内科

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甲状腺機能低下症/亢進症の原因

甲状腺機能低下症は甲状腺が壊れてしまうことによって起こります。最も有名な原因として橋本病があります。橋本病は自己免疫性の慢性炎症です。自己免疫とは、自分の免疫細胞が作り出す抗体が自分自身の細胞を敵とみなして攻撃してしまうものです。なぜこのような免疫が働くのかはまだ明らかになっていません。自己免疫によって甲状腺が少しずつ壊されていくことで、次第に甲状腺ホルモンの分泌ができなくなり、いずれ甲状腺機能低下症となります。

また、甲状腺機能亢進症の治療後に、甲状腺機能低下症が起こることもあります。甲状腺機能亢進症の治療では甲状腺の働きを抑えるため、逆に機能が下がりすぎてしまうこともあるためです。この他、C型肝炎の治療に使われるインターフェロンや、不整脈の治療に使われるアミオダロンなど、病気の治療のために使っている薬が原因となることもあります。

甲状腺機能亢進症の原因は、自己免疫、または急性の炎症です。甲状腺機能亢進症の代表的な病気にバセドウ病(グレーヴス病)があります。バセドウ病は、やはり自己免疫性の病気です。しかし、こちらの場合は橋本病とは異なり、免疫細胞から作られた抗体が甲状腺を刺激します。攻撃を受けて壊されるのではなく、攻撃を受けてより活動性が増してしまうのです。こちらもやはり原因は明らかになっていません。自己免疫によって甲状腺が活発になってしまうことで、ホルモンの分泌量も過剰になり、甲状腺機能亢進症を引き起こします。

急性の炎症として、亜急性(あきゅうせい)甲状腺炎、無痛性甲状腺炎があります。これらは甲状腺に一時的に炎症が起こったものです。急な炎症が起こると、甲状腺が一部障害されて中のホルモンが漏れ出てしまいます。このため、甲状腺ホルモンの量が一時的にあがります。橋本病のような慢性炎症では少しずつ徐々に破壊されるため、ホルモン量が急激に増加することはありませんが、これらのような急性の炎症の場合は、破壊された甲状腺から一気にホルモンが漏れ出るため、一時的な甲状腺機能亢進症となります。

 

甲状腺機能低下症/亢進症の治療法

甲状腺機能低下症の治療

甲状腺機能低下症の治療法は、原則として甲状腺ホルモンの補充です。甲状腺が壊れてしまっている以上、身体の中で甲状腺ホルモンを作ることが出来ないので、外から補充してあげる必要があります。ホルモンの補充によって逆に甲状腺機能亢進症を引き起こしてしまわないよう、少量ずつ慎重に量を調節していく必要があります。薬の量が多すぎると、副作用として動悸や手の震え、汗をかきやすくなる、など甲状腺機能亢進症のような症状が現れます。

また、インターフェロンやアミオダロンなどの他の薬によって甲状腺機能低下症が引き起こされていると考えられる場合には、原因となっている薬を中止することもあります。ただし、これらの薬は他の病気の治療として投与されているものなので、どちらを優先するかは主治医とよく相談して判断することが大切です。

甲状腺機能亢進症の薬物治療

プロプラノロールなどのβ遮断薬(ベータしゃだんやく)は、神経の過剰な活動を抑えることで、心拍数を正常に戻し、手の震えや不安感などを抑えます。ただし、症状を抑えることはできますが、甲状腺ホルモンの量を減らすものではないので、根本的な治療には他の方法を行う必要があります。

メチマゾールは最も使われる薬で、甲状腺ホルモンの産生量を減らす作用があります。頻度は少ないですが、重篤な副作用として無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)があります。これは血液中の白血球が急激に減少してしまうものです。免疫機能を担っている白血球が減ると、様々な感染症にかかりやすくなり、発熱やのどの痛みなど風邪のような症状が現れます。無顆粒球症が発症した場合、薬を飲み続けている間は白血球の数は減ったままなので、単なる風邪とは異なり、症状はどんどん悪化していきます。無顆粒球症が発覚した場合は、メチマゾールを中止しなければなりません。

甲状腺機能亢進症の放射線治療

放射線治療としては、放射性ヨードの内服薬があります。ヨードは甲状腺に集まることが知られている物質で、そのヨードに放射線を出す働きを加えることで、甲状腺を一部破壊させます。放射量は非常にわずかなため、副作用は少なく、入院の必要もない場合が多くなっていますが、治療後4日程度は乳幼児に近付かないことが推奨されています。

甲状腺機能亢進症の手術

手術では、甲状腺を取る手術を行います。根本的な治療法であり、90%以上の確率で甲状腺ホルモンの過剰な分泌を抑えることができます。ただし、合併症として甲状腺機能低下症を引き起こしてしまうため、甲状腺の機能を正常に保つためには、手術後は甲状腺ホルモンの補充を行う必要があります。

 

甲状腺機能低下症/亢進症に対する甲状腺全摘術

甲状腺機能亢進症の手術では、甲状腺を丸ごと取り出す全摘術が行われています。これによって、甲状腺ホルモンが分泌されなくなり、甲状腺機能低下症になれば、一生内服が必要になります。以前は甲状腺の一部のみを取り除く亜全摘術が行われていましたが、甲状腺機能を正常に戻せる可能性は30%程度であり、甲状腺機能低下症の合併症は減るものの、30%の確率で甲状腺機能亢進症が再発してしまっていました。このため、現在では全摘術が主流になっています。しかし、全摘術が主流になった現在でも、甲状腺を摘出する範囲の検討、研究は行われているようです。

将来的に甲状腺の機能を検査する技術が発達し、甲状腺のどの部分をどれだけ切除すれば機能を正常に戻せるかということが計測できるようになれば、甲状腺機能亢進症の治療のために甲状腺機能低下症になってしまう患者さんを減らすことができ、甲状腺機能低下症/亢進症ともに患者数を減らすことができるようになるでしょう。

 

 

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