【ドイツ論文】帝王切開は経験を積んだ産婦人科医ほど、手術時間が短くなっていく!

近年、日本では帝王切開の件数が増えており、2014年の統計では全出産数が100万人のうち、19.7%を占めており、5人に1人は帝王切開によって出産されている状況になっています。
帝王切開には、予定帝王切開と緊急帝王切開の2種類存在します。
予定帝王切開とは
予定帝王切開とは、前置胎盤や児頭骨盤不均等、子宮手術の既往、感染症、骨盤位など(下記に説明します)のため、妊婦検診の段階で経腟分娩は難しいと分かっている場合に、あらかじめ日時を決めて行うものです。
- 前置胎盤:胎盤の一部が子宮口付近に形成された状態であり、経腟分娩を行うと大量出血をきたす恐れがある
- 児頭骨盤不均等:巨大児、あるいは母体の骨盤が狭い場合、胎児の頭が骨盤よりも大きくなってしまうことで経腟分娩が難しい
- 子宮の手術既往:帝王切開、子宮筋腫核出術など、子宮にメスを入れたことがあると、分娩時に陣痛で子宮に強い力が加わった際に傷痕が裂けてしまう危険がある
- 感染症:HSV(単純ヘルペスウイルス)やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)などの感染症は、経腟分娩で出産する際に胎児にうつってしまう恐れがある(産道感染)
- 骨盤位:いわゆる「逆子」。経腟分娩を選択できることもあるが、胎児機能不全や遷延分娩が起こるリスクが高く、帝王切開が選択されることが多い
緊急帝王切開とは
一方、緊急帝王切開とは、遷延分娩や重症妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離、胎児機能不全など、母体あるいは胎児の状態が悪化した際に緊急に行われるものです。
- 遷延分娩:陣痛が始まってから初産婦で30時間、経産婦で15時間経っても出産に至らないことをいう。子宮が収縮する際には一時的に胎児が低酸素状態になるが、それが長時間続くことで胎児に悪影響を及ぼす。
- 重症妊娠高血圧症候群:妊娠中に何らかの原因によって高血圧や血管障害、臓器障害が起こるもの。重症の場合、脳出血など母体の命に関わることもあり、妊娠を中断させる必要がある。
- 常位胎盤早期剥離:本来、出産後に自然に剥がれるはずの胎盤が、妊娠中に剥がれてしまう状態。母体では出血が、胎児では血行不良が起こり、母児ともに命に関わる。
- 胎児機能不全:さまざまな原因によって、胎児に低酸素や心拍の異常などの問題が生じ、健康状態が良いといえない状態。
帝王切開における手術時間の重要性
帝王切開は、“手術”である以上、母体だけでなく胎児にも麻酔の影響が及びます。また、特に緊急帝王切開の場合、胎盤が剥がれかけている、臍帯が絡まっているなどの状態に陥っていれば、母児ともに命に関わる一刻を争う事態となります。そして、この手術の質は、医師の熟練度や技術量の影響を受けるといわれています。
今回ご紹介するのは、帝王切開において医師の熟練度による影響を調査した論文です。
帝王切開における熟練度による影響
対象となったのは、ドイツのハノーバー医科大学で2000年から2009年の間に行われた3,844件の帝王切開です。帝王切開のアウトカムとしては、切開から縫合までの総手術時間、胎児を取り上げるまでに要する時間、母体の出血量、臍帯動脈血のpH(へその緒を流れる血液の状態)、分娩から1,5,10分後のAPGARスコア(出産直後の新生児の健康状態)、入院期間、術後合併症を用いて、経験のない医師および300件以上の帝王切開を行なっている経験豊富な医師とに分けて評価しました。
また、経験のない医師については、1-10件目、11-20件目…と10件ごとに症例を分けて、経験量による上記のパラメータの変化を分析しました。
経験豊富な医師の方が、手術時間・出産時間が短くなる!
経験豊富な医師23名で2,515件、経験のない医師22名で1,329件の手術を行いました。総手術時間および出産にかかった時間は、経験豊富な医師よりも経験の浅い医師の方が明らかに長くなっていました。
さらに、経験の浅い医師について詳しく分析すると、最初の10件の帝王切開では、総手術時間47.9分、胎児を取り上げるまでに要した時間は9.5分でした。これに比べ、31-40件目では総手術時間43.1分、71-80件目では胎児を取り上げるまでに要した時間は4.8分と、経験を重ねることで明らかに熟練度や技術の獲得が確認できました。
帝王切開の名医は手術経験数が参考になる
今回の研究を通して、帝王切開では医師の熟練度によって手術時間が左右されることが分かりました。母体の出血量や臍帯動脈血の異常、新生児の健康状態等には大きな差はみられませんでしたが、前述の通り帝王切開では一刻を争う事態であることもあり、“時間”が重要な鍵となります。妊娠時にはいつ何が起こって帝王切開になるか予測できません。もしもの時のために、妊娠・出産の予定がある方は、名医を探しておくとよいのではないでしょうか。
【参考論文】Soergel P, Jensen T, et al : Characterisation of the learning curve of caesarean section. 2012
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