お腹の時限爆弾、腹部大動脈瘤….!早期発見が命を救います!

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[投稿日] '16/09/25 [最終更新日] '18/05/23 346views
お腹の時限爆弾、腹部大動脈瘤….!早期発見が命を救います!

腹部大動脈瘤とは

私たちの心臓から出た血液は大動脈という血管を通して全身に血液を送られます。大動脈は心臓から出て、胸の方に上り、一旦Uターンする形でお腹をの方に降りてきます。このお腹を走る大動脈が、太く広がった状態を腹部大動脈といいます。正常な腹部大動脈は直径が約20mmあるのですが、こちらが正常値の1.5倍、30mm以上に膨らむと動脈瘤とみなされます。

腹部大動脈瘤の原因

腹部大動脈瘤の原因のほとんどを動脈硬化が占めています。その他の原因としては外傷によるものや梅毒、サルモネラなどの感染症、高安病などの動脈の炎症を起こす疾患、遺伝性の疾患などが挙げられます。

腹部大動脈瘤の分布

腹部大動脈瘤は男性が女性の4-5倍と男性に多い疾患になります。

動脈硬化が原因となることが多いことから60歳以上に多く、欧米の報告では60歳以上の4-9%に腹部大動脈瘤を認めるというデータもあります。日本人を対象に腹部エコーによる60歳以上のスクリーニング検査では0.3%、50歳以上を対象としたCTでの調査では0.48%の患者で腹部大動脈瘤を認めるというデータもあり、日本人の有病率は欧米と比べると低いことが知られています*1

腹部大動脈瘤になりやすい要因

腹部大動脈瘤になりやすい人には、一定の傾向があります。まず、高血圧です。血圧が高いと、動脈瘤を形成しやすいだけでなく、破裂しやすくする要因にもなります。また、喫煙もリスク因子のひとつです。たばこを吸いますと、動脈硬化を進行させたり、血圧を上昇させたりします。身内に腹部大動脈瘤の人がいる場合も腹部大動脈瘤を発生させやすい傾向があるといわれています。

腹部大動脈瘤のリスクを下げるために

動脈硬化が原因のほとんどを占めています。そこで、動脈硬化を予防するためにコレステロールに気をつけた食生活を心がけましょう。また、普段から自分自身の血圧をチェックし、血圧を正常値に保つようにしましょう。血圧が高いなら血圧を下げる薬を処方してもらって血圧を正常範囲に維持しましょう。もし、たばこを吸っているなら、禁煙をしましょう。自分で禁煙することが難しそうなら、禁煙外来を利用するのも手です。特に、家族に腹部大動脈瘤を発生した人がいる家系や、男性で60歳以上の人などは、腹部大動脈瘤のリスクが高まってきます。該当する場合は特に上述のリスクコントロールを行なってください。

 

腹部大動脈瘤の症状

お腹のあたりにドクドクと脈打つ瘤状のものを触れることもありますが、一般的に症状がないことのほうが多く、検査を受けて初めて見つかるということも少なくないです。ですから予兆もなく、ある日突然腹部大動脈瘤が破裂することも珍しくありません。しかしながら、大きくなるとお腹の痛みや腰の痛みを感じるようになることもあります。言い換えれば、痛みを伴う腹部大動脈瘤ですと、すでに大きい状態にあると言えます。破裂するリスクも同様に高いことが多いです。

腹部大動脈瘤が破裂すると

もし、腹部大動脈瘤が破裂しますと、お腹の中に大量出血します。出血量の多さから、激しい痛みはもちろん、ショック状態に陥り、生命に危険が及ぶことも少なくありません。

 

腹部大動脈瘤の診断

腹部大動脈瘤の疑いがある場合、CT検査による画像診断を行なうと、場所や大きさ、形が正確につかめます。また超音波検査(腹部エコー)も有効です。

 

腹部大動脈瘤の治療法

腹部大動脈瘤が発生しても、その大きさが40mm前後に満たない場合で、かつ、大きくなる速さが半年で5mmに満たない場合は、手術を行なうことは少なく、多くは血圧のコントロール治療が行なわれます。大動脈瘤は一度できてしまうと、なくなることはありませんが、血圧を下げることで、それほど大きくない動脈瘤であれば破裂することを予防することができるのです。ただ、動脈瘤は残ったままですし、多くの場合、血圧がきちんとコントロールできていても、年1割弱は大きくなっていきます。ですから、定期的に超音波検査やCT検査で経過観察をして、大きさや形態の変化を確認する必要があります。

腹部大動脈瘤の治療成績

腹部大動脈瘤が破裂した場合、手術が必要となりますが、59-83%の患者は病院到着前に亡くなられてしまうと言われます*2。緊急手術をおこなってもその半数は亡くなるとも言われ、大動脈瘤が一度、破裂した場合、その死亡率は80~90%と言われます。一方、破裂前に手術が行なわれた場合、成功率は95%以上と言われており、破裂前に早期に診断し治療を行なうことが大切となります。

大きな動脈瘤の場合の治療法

一度できた大動脈瘤は薬で治してしまう方法はありません。動脈瘤のサイズが小さい場合は血圧の管理を行いながら、定期的な経過観察をすることになります。

一般的に動脈瘤の大きさが男性で50mm、女性で45mmを超えた場合、手術による治療が適応となります。手術の適応については動脈瘤が大きくなるスピード、形状、症状の有無や患者さんの体格なども鑑みて決定されます。

手術方法は、お腹を開けて動脈瘤のある部分の大動脈を人工血管に置き換える開腹手術と足の付け根からカテーテルを挿入することで行う血管内治療に分けられます。

 

開腹手術:人工血管置換術

おへその部分を中心にしてお腹に切開を加えて、動脈瘤を取り除き、人工血管を大動脈の健全な部分に縫い付けることで大動脈瘤を人工血管に置き換える方法です。手術に要する時間は4〜6時間程度、入院期間は2〜3週間くらいになるのが一般的です。

開腹手術に用いられる人工血管について

人工血管はポリエステルなどで作られています。移植して人体が拒絶反応を起こす可能性も低く、安全で安定性の高いもので、その耐久性は20年以上と言われています。一般的には一度手術を行えば、取り替える必要はまずありませんが、人工血管に細菌感染が起こったり、動脈に縫い付けた部分から再度動脈瘤ができたしまった場合は再手術を行い取り替える必要があります。

 

血管内治療(ステントグラフト治療)

血管の中にカテーテルと呼ばれる管を入れ、ステントグラフトと呼ばれる金属製の骨格により支えられた人工血管を腹部大動脈瘤の内部に入れる治療です。動脈瘤そのものは取り除きませんが、動脈瘤が発生した腹部大動脈瘤の部分に対して、内部から弱くなった血管壁を補強し、動脈瘤が破裂しないようにするのが特徴です。

腹部大動脈瘤 ステントグラフト 心臓血管外科

腹部大動脈瘤 ステントグラフト 心臓血管外科

血管内治療(ステントグラフト治療)の方法

足の付け根に3-5cmほどの切開を入れ、そこから動脈にカテーテルと呼ばれる非常に細い管を挿入します。大動脈瘤のある位置までカテーテルを進め、このカテーテル内を通してステントグラフトを送り進めていきます。ステントグラフトはカテーテル内では折りたたまれた状態にありますが、カテーテルから出た後、バネの作用で自動的に広がり、血管に内側から密着することで大動脈を補強してくれます。手術中は血管内に造影剤と呼ばれる薬剤をカテーテルを通して注入し、それをレントゲン撮影を行う血管造影検査を行うことでステントグラフトが適切な位置に留置できているかどうかを確認します。

血管内治療(ステントグラフト治療)の利点と欠点

足の付け根からカテーテルを挿入するため、お腹を切らずに済み、手術時間や入院期間の短縮につながるという利点があります。術後の合併症などがなければ、入院期間は手術後5-10日程度と言われています。欠点は、動脈瘤を取り除くのではないので、ステントグラフトが長年の経過で動いてずれてしまった場合など再手術が必要となる場合があるということです。また、大動脈瘤の位置や形状によっては血管内治療が行えない場合などもあります。

血管内治療を行った後は

血管内治療は動脈瘤自体を取り除くわけではないので、手術後は1か月、6か月、1年と定期的に経過観察を行う必要があります。その都度、CT検査やMRI検査で手術後の経過を確認します。経過観察を行っている最中に、再手術が必要な所見が発見されることもあり、その場合追加での血管内治療や開腹手術を行うことになります。

血管内治療のできない場合

あまりにも大きな動脈瘤の場合や湾曲が多くカテーテルを通しにくい場合などステントグラフトの挿入ができないことがあります。手術後、定期的に経過観察する必要がありますので、手術後に通院ができないような場合にも方法が適しているとは言えません。

 

おわりに

腹部大動脈瘤は小さいうちに見つけることが重要になります。海外のデータにはなりますが、65歳以上の男性に対して1回、腹部超音波検査を行うことで、その後10年間、大動脈瘤が破裂するリスクを下げると言うデータも報告されています*2

60歳以上、高血圧症、喫煙をされる方は動脈硬化のリスクが高く、大動脈瘤を発生させる可能性が高くなります。高血圧症の治療と禁煙に努めることに加え、一度かかりつけの先生にご相談してみるのも良いでしょう。

 

*1 堀 進悟(2010)「大動脈疾患―大動脈解離と胸腹部大動脈瘤:診断と治療の進歩」, 日本内科学会雑誌99巻, p.226~230, 2010

*2 Janelle M, et al: Ultrasonography Screening for Abdominal Aortic Aneurysms: A Systematic Evidence Review for the U.S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med 160: 321-329, 2014

 

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