鼠径ヘルニアの治療は小児外科専門医を受診するのがオススメ

tag / / / / / / / / /
[投稿日] '16/07/16 [最終更新日] '18/04/25 637views
鼠径ヘルニアの治療は小児外科専門医を受診するのがオススメ

鼠径ヘルニアの検査

鼠径ヘルニアになると太ももの付け根あたりに腫れやしこりができ、膨らんでいるので目で診る(視診)だけでほとんど診断することができますが、立ったり足を伸ばしたりするとさらにわかりやすくなります。また、触れると(触診)、小腸などの柔らかい内臓がグニュッとしたり小指の先ほどのコロッとした卵巣を触れることもあります。

さらに超音波検査をすると鼠径部から飛び出しているものがどんな臓器かを把握することもできます。
男児の場合は内容物は腸であることがほとんどですが、女児の場合には卵巣などの生殖器がヘルニアの内容物となる場合もあります。

 

鼠径ヘルニアの治療

鼠径ヘルニアの治療はヘルニア嚢(のう)と呼ばれるヘルニアが飛び出している袋状の根元の部分を糸で縛る結紮(けっさつ)を行う手術が基本です。手術は従来から行われているお腹に小さな切開をいれて直接縛る方法と、近年増加している腹腔鏡という内視鏡を使った方法があります。

予定手術と緊急手術

手術方法はお子さんの年齢や病院の治療方針などによって決定されますが、ほとんどは予め手術の日程を決めて行う予定手術です。たとえば鼠径ヘルニアの膨らみを指で押さえると飛び出した臓器が元に戻り、一時的に膨らみがなくなることもあります。痛みもなく、膨らみが戻るような場合には経過をみてよいことが多く、手術を急ぐ必要はないでしょう。
1才未満で鼠径ヘルニアを認めた場合、基本的には1才になるのを待って手術を行います。1才まで待てば体力的に余裕があり、組織(ヘルニア嚢)が丈夫になってから安全に手術が行えるためです。

しかし、ヘルニア嵌頓(かんとん)と呼ばれるヘルニアの根元が締め付けられて元に戻らなくなったときは緊急手術が必要です。嵌頓を起こすと血液が十分に流れず飛び出した腸管などが死んでしまう壊死(えし)を起こし、壊死した部分を切除しなければなりません。最悪の場合は命にもかかわる危険性があります。

そのため、鼠径ヘルニアは放置せずに念のため病院で診てもらい、手術の必要性や実施時期について医師に相談することをお勧めします。

 

鼠径ヘルニアの手術方法

・鼠径ヘルニアのPotts法

Potts(ポッツ)法は1~2cmほどお腹を切り、袋状になったヘルニア嚢の根元を縛って内臓が飛び出さないようにする手術で、従来からある手術法です。男児はヘルニア嚢のすぐ横に精巣(睾丸)を栄養する精巣動静脈と精管(将来精子を通す管)があるため注意深く手術を行うため手術には20~30分ほどかかりますが、女児の場合は15~20分ほどで終わります。

お腹を切るというと傷跡が心配になるかもしれません。しかし、下腹部のシワに沿って切開を入れ、傷も2cmほどの大きさためほとんど目立たなくなります。

手術は生後6か月以上のお子さんで、けいれんや喘息などの合併症がなければ日帰り手術も可能です。退院後は鉄棒のような傷口に負担がかかることや激しい運動などを避けるようにしましょう。しかし、日常生活については普段のように過ごすことができます。

・鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術 LPEC法

腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術は最近、実施する病院が増えている手術法でLPEC法(Laparoscopic Percutaneous Extraperitoneal Closure:エルペック法)と呼ぶこともあります。

手術はお腹に3か所ほど小さな切開を入れて、腹腔鏡でお腹の中を拡大して見ながら行う手術です。内臓が飛び出て袋状になっているヘルニア嚢の根元を糸で縛り、内臓が出てこないようにします。

鼠径ヘルニアのうちお腹の片方だけにその症状がある場合には、5~10%ほど、つまり10~20人に1人の割合でお腹ももう片側にもヘルニアが起こることがあります。しかし、腫れなどの症状がない場合は手術前に診断するのは難しいため、従来のPotts法では反対側が発症してから二回目の手術を行っていました。

しかし、LPEC法では腹腔鏡で左右両側のヘルニアの有無を確認できるため、もし症状が出ている部分以外のヘルニアが見つかった場合でも同時に手術を行えることがメリットです。さらに、腹腔鏡で行う場合はPotts法に比べると手術時間は長くなってしまいますが、お腹の傷は0.1~0.5cm程度と小さいため痛みも少なく、傷跡が目立ちにくいなどのメリットもあります。入院期間もほとんどが2泊3日程度です。

※なお、大人の鼠径ヘルニアの場合、「メッシュシート」と呼ばれる人工素材で臓器が飛び出した孔を塞ぐ手術法も選択できるようになりましたが、小児の治療では行われていません。

 

鼠径ヘルニアの手術を受けるために小児外科専門医を探そう

鼠径ヘルニアの手術は、比較的簡単な手術と誤解されることがありますが、2005年に鼠径ヘルニアの手術で膀胱を切除してしまうといった医療ミスが報告されました。新生児をはじめ、乳児の内臓は組織が非常に薄く、もろくて傷つきやすいのが特徴です。また、ヘルニアが巨大になった場合にはたとえ年長のお子さんでも難しい手術になることがあります。
そのため、日本小児外科学会では小児専門施設での手術を推奨しています。

小児外科の専門医は人数が多くないです。しかし、可能な限り、専門的な知識と確かなスキル、そして多くの臨床経験をもつ専門医を探して手術を受けることをお勧めします。

 

 

 

名医検索サイトクリンタル
名医検索サイトクリンタルでは日本全国の約30万人の医師から厳選された名医だけを掲載しております。手術数や外来の待ち時間など、受診する名医を決めるために必要な詳細情報を掲載しておりますので、受診先を検討される際の参考にしてください。

 

「どの名医に治療をお願いすればよいのかわからない!」とお悩みの方には、クリンタルの名医紹介サービスをお勧めしています。クリンタルが独自に厳選した「3,500人の有数の専門医」「35,000人の街の名医」の中から、あなたの病気/症状やご希望を考慮して、クリンタルの医師が最適な名医をご紹介します

クリンタルの名医紹介サービス