泌尿器科の腹腔鏡下手術は、執刀経験4年目以降に成績が安定する!?

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[投稿日] '17/07/05 [最終更新日] '18/03/18 941views
泌尿器科の腹腔鏡下手術は、執刀経験4年目以降に成績が安定する!?

泌尿器科とは

泌尿器科は、腎臓から尿管・膀胱・尿道まで続く尿路や男性器の疾患などを扱う診療科です。そのため治療を行う範囲は腰の高さから下腹部まで広範囲であり、従来行われていた開腹手術ではかなりの大きさの手術痕が残ってしまいました。しかし低侵襲医療の広がりとともに、腹腔鏡手術が広く行われるようになったことで、傷や痛みを最小限に留める事ができるだけでなく、回復までの期間も短縮することが可能になりました。

しかし可能な限り侵襲を最小限としても、手術ですので合併症の可能性はあります。しかし手術後の合併症発生率は医師の熟練度によって大きく異なります。今回ご紹介するのは、泌尿器科腹腔鏡手術とその合併症について、医師の熟練度による影響を調査した論文です。

 

1人の医師が行なった601件の腹腔鏡手術について追跡調査を行った

対象となったのは、2004年12月から2010年8月までに行われた601件の泌尿器科腹腔鏡手術です。手術内容は、311件の腹腔鏡下前立腺全摘術、103件の腹腔鏡下腎摘徐術、39件の腹腔鏡下副腎摘除術、15件の腹腔鏡下膀胱摘除術、およびその他133件の腹腔鏡手術です。

この医師は腹腔鏡手術研修を9ヶ月間受けた後に、今回の601件の手術を実施しています。

医師の手術経験による影響を分析するため、2004年12月~2007年12月までの前半3年間と、2007年12月~2010年8月までの後半3年間に分けて、合併症の発生率に焦点を当てて比較を行いました。

 

執刀経験4年目以降に手術成績が安定

調査を行ったところ6年間の調査期間の中で、38名の患者さんに47例(全体の7.8%)の合併症が発生しました。

  • 前半3年間で41例(2004年に3/20例、2005年に15/90例、2006年に15/88例、2007年に8/135例)
  • 後半3年間で6例(2008年に2/127例、2009年に2/89例、2010年に2/52例)

となり、軽度の合併症は36例(5.9%)、重度の合併症は11例(1.8%)となりましたが、死亡例は報告されませんでした。合併症発生については前半3年間では実施症例数の上昇と相関する形で増加していましたが、2008年以降の後半3年間では発生率は徐々に低下し、年間発生率1%程度の低値で安定しました。

 

合併症の内容

  • 術中合併症

腹腔鏡手術から開腹手術へ移行したものは4例(0.6%)ありました。手術中、血管損傷による出血のために、腹腔鏡下前立腺全摘術で2例、腹腔鏡下腎摘除術で1例、開腹手術への移行が必要になりました。また、腎臓の腫瘤が大きく、腹腔鏡では対応できなかったために開腹した手術も1例ありました。

  • 術後合併症

術後、輸血が必要になったのは36名(5.9%)でした。この他、尿路感染症では、腎盂腎炎が2例、膀胱炎が7例報告され、肺塞栓症が1例、発熱が4例報告されました。

 

年間執刀数が多い医師は、術後合併症の少ない名医

傷の大きさや痛みの軽減、入院期間の短縮など、腹腔鏡手術には大きな期待が寄せられています。その中で、合併症は発生しうる大きな問題になります。

今回の研究では、初期では安全に行える手術を選択的に実施しており、経験を積んだ後に腹腔鏡手術の件数が増えていきました。そして4年目以降は安定した成績を残せるという結果が示され、追跡調査を行うことで経験とともに手術成績が向上することが立証されました。手術自体はもちろん、その後の合併症発生の可能性を低くするためにも、名医による治療を考えますよね。その際には、医師の年間執刀数に注目して探してみてはいかがでしょうか。

 

 

【参考論文】Yigit Akin, Mutlu Ates, et al : Complications of urologic laparoscopic surgery: A center surgeon’s experience involving 601 procedures including the learning curve.2013 May.

 

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