腎移植は手術を受ける先生や病院によって、治療経過も費用も大きく違う!

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[投稿日] '17/06/17 [最終更新日] '18/03/18 782views
腎移植は手術を受ける先生や病院によって、治療経過も費用も大きく違う!

腎不全により老廃物の排出や水分・電解質のバランス機能が低下!

腎臓は身体の老廃物や不要な水分を尿として排泄する臓器ですが、それ以外にも体内のナトリウムやカリウムなどのの電解質バランスを保ったり、赤血球を作るためのホルモン(エリスロポエチン)を分泌するなど、私たちが生きて行くうえで重要な役割を果たしています。

腎不全とはこれらの腎臓の機能が低下して、正常に働かなくなった状態のことを言います。慢性的に腎臓の機能が低下した状態(慢性腎不全)が進行して、正常時の1割以下にまで腎機能が低下した状態(末期腎不全)に至ると、日常生活に支障をきたし、場合によっては死に至ることもあります。そのため、末期腎不全では腎臓の機能を補うための治療が必要となります。

 

腎臓の機能を補う治療法は人工透析と腎移植

末期腎不全に対しての腎臓の機能を代替する治療としては2つあります。

  • 人工透析:機械を用いて血液中の老廃物や不要な水分を除去する治療法です。腎臓の機能を回復させる方法ではなく、腎臓の機能を機械に代替してもらう治療法で、週3日ほど透析のためにクリニックへ通い続ける必要があります。
  • 腎移植:末期腎不全の唯一の根治的治療であり、成功すれば免疫抑制剤を飲む以外は普通の人と同じように生活することができます。生体腎移植と献腎(けんじん)移植があり、生体腎移植とは、親や兄弟などの親族から2つある腎臓のうち1つを提供してもらい移植を受ける方法のことです。また、献腎移植とは、心停止により亡くなってしまった方や脳死状態となってしまった方から腎臓を提供してもらい移植を受ける方法のことです。

腎移植により、腎機能が回復しますので、透析などを受ける必要も無くなります。しかし腎移植後に感染症を起こすリスクや、他人の腎臓を自分の腎臓として受け入れられず拒絶反応を起こしてしまうことにより、うまく腎臓として働かないという可能性もあります。また、そもそも腎臓のドナーがいないことには移植ができないというハードルも存在します。

また、腎移植は開腹手術となるため身体へ負担も大きく、末期腎不全となった際の治療方法については、診療実績の高い専門医・名医と一緒に考えていくことが大切です。

 

腎移植の件数と治療成績との関係を調べた論文

今回ご紹介する論文では、腎移植の件数と治療経過や費用に関係性があるかどうかが検討されています。本研究では、台湾の国民健康保険研究データベースに集積されたデータのうち、末期腎不全で腎移植術を受けた患者を対象としており、1999年から2007年までの9年間に行われた1,779件の腎移植について調査が行われました。

また本研究では、1年間に医師が執刀した腎移植術の件数に基づき、年間手術件数が多い医師(年間33件以上)と少ない医師(年間33件以下)の2つのグループで比較がされています。

比較項目については下記の3点です。

  1. 腎移植後の重症敗血症の割合:手術の感染による全身状態の悪化の割合
  2. 腎移植後1年以内の移植腎喪失率:移植した腎臓が拒絶反応などで機能しなくなる割合
  3. 腎移植にかかる治療費

また1施設あたりの腎移植の件数についても、年間手術件数が多い病院(95件より多い)と少ない病院(95件以下)とに分類され、同様の検討が行われています。

 

腎移植では、年間手術件数が多い医師/病院ほど治療効果が高く、治療費も低くなる

分析の結果、腎移植の年間手術件数が多い医師に執刀してもらうと、手術件数の少ない医師に比べて重症敗血症になるリスクが「2割近く減少する」ことがわかりました。また腎移植後1年以内の移植腎喪失率は、年間手術件数の多い医師が執刀した場合だと、手術件数の少ない医師が執刀した時と比べて「約1/3程度まで減少する」ことも示され、腎移植にかかる治療費は年間手術件数が多い病院だと「平均20万円以上低くなる」こともデータから判明しました。

さらに、1施設あたりの腎移植の件数で比較した結果からも件数の多さと治療成果は相関があることが明らかとなっており、腎移植件数が多い病院は、少ない病院と比べて重症敗血症になるリスクが「約1/2以下となる」ことが示されました。また病院別に見た治療費の違いは、同様に年間手術件数が多い病院で「平均10万円以上低くなる」こともデータから示されています。

これらの結果から、腎移植の年間手術件数が多い名医や病院ほど移植後の合併症が少なく、少ない費用で高い治療効果が得られることが分かりました。

 

末期腎不全における腎移植の名医は年間手術件数を基準に選ぶと良い

今回紹介した論文の結果から、腎移植の年間手術件数が多い医師は少ない医師に比べて手術成績が良い名医であることがわかりました。また、年間手術件数が多い病院ほど腎移植の治療成績が良いことも明らかとなりました。

腎移植は海外では珍しくない治療ですが、日本では年間1,500人程度しか移植が実施されておらず、治療実績は十分ではありません。今回の論文で示された移植件数をそのまま参考にすることは難しいかもしれませんが、腎移植の経験症例数が多い病院あるいは医師ほど腎移植の治療成績が良くなると言えます。

末期腎不全で腎移植の適応があると診断された場合には、腎移植の実施件数を基準として、腎移植の名医あるいは腎移植の経験が豊富な病院を探してみてはいかがでしょうか?

 

参考文献:Renal Transplantation: Relationship between Hospital/ Surgeon Volume and Postoperative Severe Sepsis/Graft Failure. A Nationwide Population-Based Study. Int. J. Med. Sci. 11:916-924, 2014

 

 

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