手術数が多い病院は緩和ケアも上手!?

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[投稿日] '17/06/21 [最終更新日] '18/03/18 868views
手術数が多い病院は緩和ケアも上手!?

胃がんと食道がんに対する緩和ケア

今回ご紹介する論文は胃がんと食道がんに対する緩和ケアの論文です。

胃がんは40歳代後半から罹患率が高くなる病気で、日本を含む東アジアで罹患率が高いという特徴を持っています。早期の胃がんは症状が出づらく、また、症状が出たとしても胃の痛みや吐き気、食欲不振など胃がん以外の原因でもよく起こる症状であるため、自分で胃がんかな?と疑うことは難しいです。40代からは内視鏡検査やがん検診などを受けるようにしましょう。

食道がんも胃がん同様に初期には症状が出ないことが多く、検査しなくては見つかりにくい病気です。症状としては食道がしみるような感覚や、食物がつかえるような感覚を覚えます。さらに進行すると痛みや咳などの症状が出ますが、この頃にはかなり進行した状態になります。

どちらのがんにしろ、進行していくと痛みや吐き気などの症状がでます。手術や抗がん剤などでがん自体を治療するのは、消化器外科や腫瘍内科とよばれるような診療科が行いますが、痛みや吐き気などの症状に対しては緩和ケアとよばれる診療科が対応することがあります。

 

緩和ケアとは

緩和ケアというのは、がんと闘う体の痛みや心の辛さを和らげるケアのことです。緩和ケアでは精神的なサポートや鎮痛剤などを用いることで日々の生活の質を保つ手助けをします。

転移性胃がんや転移性食道がんでは、緩和ケアを取り入れることで患者の生存期間が延びることがこれまで報告されています。では、どのような医師や施設で治療を受けると、適切な緩和ケアを受けることができ、生存期間の延長へ繋げることができるのでしょうか。今回は胃がんと食道がんに関する緩和ケアについての論文をご紹介します。

 

診断件数、化学療法件数、摘出手術件数のどれが生存期間と関係性が強いかを調べた論文

本論文では、オランダにおいて2005年から2013年の期間に「転移性食道がんまたは転移性胃がん」と診断された患者を対象に「どのような病院で緩和ケアを受けたか」と「その後の生存期間」との関係が調査されました。

病院は次の3つの基準で選ばれました。

  1. 転移性食道がんまたは転移性胃がんの診断件数が多い上位25%の病院。
  2. 転移性食道がんまたは転移性胃がんに対して化学療法を始める件数の多い上位25%の病院。
  3. 食道がんまたは胃がんに対して根治目的の摘出手術を行う件数の多い上位25%の病院。

これらの病院で緩和ケアを受けた、転移性食道がんまたは転移性胃がんの患者が、それぞれの基準での下位75%の病院で緩和ケアを受けた患者と比べて生存期間に違いがあったかどうかが調べられました。

 

手術件数の多い病院で緩和ケアを受けた患者は生存期間が長い

特徴的な結果をいくつかご紹介します。

転移性食道がんでは

  • 根治目的の摘出手術を行う件数の少ない下位75%の病院で緩和ケアを受けた患者の生存期間が37週だったのに対して、件数の多い上位25%の病院では生存期間が47週に長くなっていました。
  • 化学療法を始める件数の少ない下位75%の病院で緩和ケアを受けた患者の生存期間が38週であったのに対して、多い上位25%の病院では生存期間が44週に長くなっていました。

転移性胃がんについては

  • 根治目的の摘出手術を行う件数の少ない下位75%の病院で緩和ケアを受けた患者の生存期間が34週であったのに対して、件数の多い上位25%の病院では生存期間が39週に長くなっていました。

 

食道がんや胃がんの手術件数が多い病院で緩和ケアを受けると良い

今回紹介した論文から、胃がんや食道がんの手術件数の多い病院で緩和ケアを受けている方が、生存期間が長いことがわかりました。転移性食道がんに対する化学療法の件数も参考になります。これは根治手術が可能なほどのよい状態の患者が多いということもあるかとは思いますが、やはり症例数の多さによる緩和ケアの経験値の蓄積の影響もあるでしょう。

先日のコラムでは手術件数が多く専門性を持つ病院のほうが癌の治療成績が良いという研究をご紹介しましたが、緩和ケアの領域においても手術件数を参考にしてみるということはあるかもしれません。

手術件数が多く専門性を持つ病院の方が、がんの治療成績がよい

 

 

参考論文:Volume-outcome relation in palliative systemic treatment of metastatic oesophagogastric cancer.

 

 

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