下垂体腫瘍の経鼻的内視鏡手術は経験を積んだ名医ほど、寛解率や合併症などの治療成績が良い!

下垂体腫瘍の経鼻的内視鏡手術は経験を積んだ名医ほど、寛解率や合併症などの治療成績が良い!

下垂体腺腫とは

下垂体とは、あまり聞きなれませんが、鼻の付け根の奥にらへんで脳にぶらさがるように存在し、ホルモンを分泌する器官です。

下垂体からは成長ホルモン(GH)やプロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺ホルモン、性腺刺激ホルモンなどさまざまなホルモンが分泌されています。下垂体に腫瘍ができると、その腫瘍のためにホルモンの産生量が過剰になったり、あるいは逆に低下してしまうことで、そのホルモンに応じて多彩な症状が現れます。そのようにホルモン異常により症状が出現してしまう腫瘍を「機能性腺腫」と言います。

例えば、成長ホルモンが過剰になると、先端巨大症という病気になり、手足の先端・鼻・唇などが肥大するのが特徴的です。また、プロラクチンが過剰になると、無月経や乳汁漏出に、ACTHが過剰になるとクッシング病という病気になります。クッシング病では、ホルモンの過剰分泌により、高血糖となったり、骨の代謝が促進され、骨がもろくなってしまうなどの症状がおきます。

また、下垂体の腫瘍には、これらのようなホルモンを分泌する作用がないものもあり、それを「非機能性腺腫」と呼びますが、その場合ホルモンによる症状が出ないために、腫瘍が大きくなってから視野障害などで気付くことが多いです。

 

下垂体腺腫に対する治療

下垂体腺腫の治療の第一選択となるのは外科的に下垂体を切除する手術療法です。かつては、下垂体腺腫の治療は口の中の上側を切開して鼻腔に入り、そこからさらに鼻腔の奥を切開して、蝶形骨洞という鼻の奥にある骨の空洞を経由して、下垂体にアプローチする方法が取られていました。しかし、この方法では口から頭蓋骨を覗きこむ形になるため、術者にとっても視野が取りづらく、患者にとっても負担の大きい手術でした。

そこで行われるようになったのが、内視鏡を用いた経鼻的下垂体手術です。これは、鼻の穴から内視鏡や手術器具を入れて、蝶形骨洞に達する方法であり、小さい傷口から広い視野を得ることができるようになりました。

今回ご紹介するのは、上海の病院において2人の脳神経外科医が行った内視鏡下経鼻的下垂体手術の経験数と結果を分析した論文です。

 

下垂体手術の対象となった患者の症状と診断名

研究の対象となったのは、2011年3月~2014年5月に行われた178件の内視鏡下経鼻的下垂体手術です。患者は14~74歳、平均46.1歳の男女で、178件のうち男性は78名、女性は100名でした。

症状の内訳として、視野のゆがみや視力障害(65例)、眼球運動障害(6例)、月経不順および続発性無月経(28例)、乳汁漏出(6例)、男性性機能不全(25例)、先端巨大症(49例)、中心性肥満および多毛(4例)、発達遅延(1例)、再発に対する再手術(19例)でした。

診断は、非機能性下垂体腺腫(92例)、プロラクチノーマ(32例)、GH産生腫瘍(43例)、多機能腺腫(7例)、ACTH産生腫瘍(4例)でした。

 

手術経験数が増加すると治療成績が良くなる

術後のMRI検査を行ったところ、腫瘍のすべてが除去された患者は129名、腫瘍の大部分が除去された患者は33名、部分切除の患者は16名となりました。また機能性腺腫において、内分泌症状が寛解(完治)したのは38名(44.1%)という結果が出ました。

手術を行った医師の経験による成績の変化を比較するため、178件の手術を前半と後半の2つのステージに分け、

  • 初め18ヶ月間に手術が行われた89件:グループ①、
  • その後20ヶ月間に手術が行われた89件:グループ②

と区別すると、以下のような結果になりました。

  • 総切除:グループ①72件(81%) グループ②57件(64%)
  • 浸潤性腺腫:グループ①45件(51%) グループ②63件(71%)
  • 浸潤性機能性腺腫の内分泌症状寛解率:グループ①2件(11%) グループ②10件(29%)
  • 重篤な合併症(頭蓋内感染、頭蓋内出血、水頭症):グループ①5件 グループ②1件

下垂体腺腫は通常、下垂体に留まり、周囲の脳組織や骨に広がりにくいのですが、稀に周囲の組織へ浸潤してしまう腫瘍が存在します。このような病態のことを「浸潤性腺腫」と言います。浸潤性腺腫は病変部が大きく、色々な部分に存在する腫瘍を細かく切除しなければならないため、病変部を全て摘出することが非常に困難となります。

この結果を見ると、グループ②の腫瘍の総切除の割合が低く、一見すると治療成績はグループ①の方が高く見えます。しかし治療の困難な浸潤性腺腫の割合がグループ②では高いことから、医師が経験を重ねて手術手技が向上したことにより、より手術が難しい患者を多く執刀しているということになります。

また浸潤性腺腫における内分泌症状の寛解率は11%から29%へとグループ②では明らかに増加しています。つまり、手術の難しい患者を多く担当しながらも、症状の完治した割合が上がっており、医師が経験を積むことで、治療成績が良くなることがこの結果から分かります。

また合併症の出現においても、グループ②の方が成績が良いという結果があります。手術の経験を重ねたことで、消毒の徹底や手術技術の向上が図れ、合併症の発生はみられなくなったということを示しています。

 

合併症リスクの低減と症状改善のためには、名医の手術を受けた方が良い

下垂体腺腫に対して内視鏡が用いられるようになったことで、手術成績の大幅な改善が見込まれるようになりました。しかし、その結果は脳神経外科医の知識や手術の経験数に大きく左右されます。

今回の研究から、内分泌症状の寛解率や合併症の発生率は、経験を重ねた名医であるほど、成績が良くなることが分かりました。脳の手術は大きなリスクを伴う治療のため、術前の不安も非常に大きくなります。不安を少しでも緩和して治療に臨めるよう、執刀経験の多い名医の手術を受けることをお勧めいたします。

 

参考文献:Shou X, Shen M, Zhang Q, et al : Endoscopic endonasal pituitary adenomas surgery: the surgical experience of 178 consecutive patients and learning curve of two neurosurgeons. 2016 Nov.

 

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