心不全治療は名医のいる症例数の多い病院の方が良い
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心不全とは
日本人の死因の第2位は心血管疾患となっています。”狭心症”、”心筋梗塞”、”心不全”などが心血管疾患に含まれる病気です。今回はその中の”心不全”と名医に関する論文をご紹介します。
“心不全”はその名の通り心臓の動きが悪くなってしまうことを言います。心不全の原因は様々ですが、心臓に酸素をおくる血管がつまる心筋梗塞や、心臓の中の弁に異常が起き血液の逆流などがおきる弁膜症だけでなく、長期間高血圧で心臓に負担がかかっている場合にも発症します。心臓は全身に血液を送るポンプのような働きをしているので、心不全になると体の主要な臓器に十分な血液が行き渡らなくなり肝不全や腎不全なども合併する可能性があり、死に至ることもあります。
このように心不全は命に関わる可能性が高く、緊急治療が必要な病気です。そのような心不全に対しても名医の方がもちろんいい成績を出しています。外科的な処置や手術に関しては、経験症例数の多い名医が良いという報告は多いのですが、心不全のような内科疾患に関する報告は珍しいので分かりやすくまとめていきます。
経験症例数の多い名医の方が心不全治療において死亡率が低い
今回の報告は2009年のアメリカの入院患者データを解析したもので、解析対象となった医師は78,227人、患者は471,612人とかなり多く、大規模な研究です。
心不全の経験症例数に基づいて、医師を1万5千人ずつ5つのグループに分けて分析をしています。最も少ない医師グループの平均症例数は年間1例、最も多いグループでは年間14例でした。
各グループ間で、心不全で入院後の30日以内の死亡率を比較してみると、経験症例数が多い医師が心不全の治療にあたった方が、少ない医師に比べて死亡率が低いことが明らかになりました。経験症例が多い医師では死亡率が8.9%である一方、少ない医師では9.7%でした。つまり、心不全治療を多く経験している名医に診てもらった方が助かる確率が高いということです。
この傾向は、循環器内科医でも内科医でも同様に見られましたが、特に内科医でその傾向が強かったということがわかりました。さらに、病院全体の心不全症例数が少ない病院の中で特に、医師間の死亡率の差が大きいこともわかりました。
言い換えると、心不全治療を専門とする循環器内科医が治療をすればたとえ年間の経験症例数が少なくても多くても死亡率に大きな影響はないですが、循環器を専門としていない一般内科医が診ると経験症例数が多いほど救命率が高いことが分かりました。
この理由については循環器専門医の方が心不全治療ガイドラインをよく理解しているだけでなく、腎不全などの合併症に対する治療を早めに始めたり、心不全の状態が悪化していることを早く見分けられるからではないかと考えられます。
心不全治療における名医の見分け方
今回の報告から、心不全治療はできれば年間経験症例数の多い病院で、経験症例数の多い名医から受けた方が良いことが分かりました。しかし各病院のホームページを見ても、医師1人ごとの経験症例数を載せている施設はほとんどありません。一方で、病院としての年間経験症例数は載せている施設もあります。
クリンタルで名医がいる病院として紹介している、東京医科大学病院循環器内科のホームページの例をとると、2010年の心血管疾患集中治療室に入院した患者は307例で、そのうち心不全は73例（24％）と明記してあります。また急性期死亡は全体で4例(4.3%)と非常に少ないです。そして良く読むと24時間365日救急体制で循環器診療を行っていると書いてあるので、循環器専門医が常に診療を行っている可能性が高いです。
内科疾患においても、経験症例数の多い病院の方が名医がいる確率が高く、助かる確率も高いことが分かりました。そしてなるべく、その疾患を専門とする名医に診てもらった方が良いでしょう。
参考論文：Physician volume, specialty, and outcomes of care for patients with heart failure.
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