抗がん剤治療も年間症例数の多い名医のいる病院で受けると死亡リスクが低下します

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[投稿日] '16/09/06 [最終更新日] '18/03/18 689views
抗がん剤治療も年間症例数の多い名医のいる病院で受けると死亡リスクが低下します

日本人の死因の第1位はがんで、アメリカでも第2位を占めています。がんは、世界各国に共通する生命を脅かす病気であり、日々研究が進められています。残念ながら現時点でも、全てのがんに効く治療薬はありません。しかし、時に抗がん剤治療によって改善することもあります。今回は抗がん剤治療と名医に関する論文をわかりやすくまとめます。

 

抗がん剤治療とは

抗がん剤治療とひとことでいっても、分子標的薬、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、プラチナ製剤、ホルモン剤、生物学的応答調節剤などさまざまなものが含まれます。今回の研究対象になっている、皮膚がんや腎臓がんをはじめ、大腸がん、胃がん、乳がん、前立腺がんなどそれぞれのがんに対して有効性が認められている抗がん剤があります。

初期のがん、または切除可能と判断されたがんであれば、手術による切除を行いますが、手術が難しい場合には抗がん剤や放射線治療を優先して行うことがあります。また、手術の前に抗がん剤治療を行い、がんを小さくしてから手術を行う方法もあります。

抗がん剤は医学の進歩と共に改善されており、1つの薬剤だけでなくいくつかを組み合わせることによって一定の効果を得られる可能性があります。しかし、抗がん剤による副作用により命に関わることもあります。抗がん剤は、がん細胞だけでなく健康な細胞も攻撃してしまうので、発熱や嘔吐、発疹、脱毛、免疫抑制による感染症などの強い副作用が起きる可能性があります。

 

今回の研究の内容

今回の研究で使用されているIL2製剤(インターロイキン2製剤)とは、生物学的応答調整剤の1種で、生物学的療法または免疫療法とよばれることもあります。IL2は、多くの免疫細胞の成長と活性化を助け、その作用を高めるといわれています。特にリンパ球を刺激し、活性化することでがん細胞を死滅させる効果があると考えられており、皮膚がんや腎臓がんに使用されます。

最近では、従来の抗がん剤の作用の仕方と異なる免疫チェックポイント阻害薬とよばれる新しい治療薬も出現しています。2016年時点で、一部の皮膚がんと肺がんに保険適用となっていますが、今後有効性が確認され次第、適用が拡大となるのではないかと期待されています。

 

抗がん剤治療における死亡率は年間症例数の少ない病院だと6倍に

今回の研究では、8年間の間に皮膚がんや腎臓がんに対しIL2製剤による治療をアメリカの病院で受けた患者を対象にしています。年間症例数で病院を3つのグループにわけ、死亡率に差が出るかどうか検証しています。

年間に1-40例の症例を経験している病院を最も年間症例数の少ない病院、年間に120例以上を年間症例数の多い病院、年間41-120例を年間症例数が中程度の病院と定義しました。

 

研究の結果

8年間で29,532人の患者が対象となり、入院中に124人(全体の0.4%)が亡くなりました。年間症例数の多い病院で治療を受けた患者数は9,865人、中程度の病院で治療を受けた患者数は9,876人、症例数が最も多い病院で治療を受けた患者数は9,791人でした。

気になる死亡率ですが、年間の症例数が最も少ない病院において、死亡率が最も高く0.83%でした。年間の症例数が中程度の病院における死亡率は0.29%、最も症例数が多い病院では0.13%でした。

症例数の少ない病院で抗がん剤治療を受けると、症例数の多い病院で治療を受ける場合よりも6.1倍死亡率が高くなることが明らかになりました。

 

症例数が最も少ない病院と最も多い病院を比べてみると、どうでしょうか。両者を比較すると、症例数がより少ない年間1-20例の病院と、症例数の最も多い病院では死亡するリスクは8.9倍とさらに上昇することがわかりました。

 

つまり、抗がん剤治療においても年間症例数の多い病院で治療を受けた方が死亡するリスクが低くなるということです。年間症例数の多い病院には、経験豊富な名医がいる可能性が高いと考えられます。

今回の研究結果から、抗がん剤治療も名医のいる病院で受けた方が安全ということがわかりました。

 

抗がん剤治療の名医を探す方法

では日本で抗がん剤治療の名医を探すにはどのようにしたらよいでしょうか。

年間の症例件数を調べれば、論文で報告されていたように抗がん剤治療を安全に受けることのできる病院を探せる可能性があります。

クリンタルでもメラノーマ(皮膚がん)の名医腎臓がんの名医を紹介しています。

例えば、皮膚がんの名医がいる病院として挙げている国立がん研究センター中央病院では、1年間の症例数を毎年ホームページ上に掲載しています。

 

今回紹介した論文にあったように、年間症例数の多い病院では比較的安全に抗がん剤治療を受けることができる可能性が高いのでホームページなどで確認するのもよいでしょう。副作用が重く発現する可能性のある抗がん剤治療だからこそ、経験の豊富な名医に出会える可能性の高い年間症例数の多い病院で治療を受けた方が安心といえます。

 

<参考論文>Annual Hospital Volume of High Dose Interleukin-2 and Inpatient Mortality in Melanoma and Renal Cell Carcinoma Patients.

 

 

 

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