口腔外科で抜歯するようにいわれたけど、ほんとに口腔外科じゃないとダメ…?

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[投稿日] '17/01/06 [最終更新日] '18/03/18 1,235views
口腔外科で抜歯するようにいわれたけど、ほんとに口腔外科じゃないとダメ…?

抜歯を口腔外科で受けたほうがよいのはどんなとき?

歯科医院では、むし歯や歯周病を治して、なるべく歯を残そうとしています。しかし、残念ながら、そうできない場合もあります。抜歯は、歯科医師にとって基本的な手技のひとつですので、一般的な歯科医院でも行なわれております。しかし、中には、一般の歯科医院よりも口腔外科で行なった方がいいのではないかと考えられる抜歯症例もあります。そこで、口腔外科に抜歯を依頼される様な歯の抜歯について、まとめてみました。

 

口腔外科での抜歯も多様になってきています

口腔外科に紹介される抜歯症例は、親知らずから深めのむし歯まで、多岐にわたります。以前は、親知らずの抜歯依頼が最も多かったのですが、近年は、社会の高齢化に伴い様々な病気を持った高齢者の抜歯の依頼も増えてきました。反対に減少傾向にあるのが、骨折線上にある歯の抜歯です。

 

口腔外科で行なわれる代表的な抜歯の例

それでは、具体的に口腔外科で抜歯するパターンにはどんなものがあるのでしょうか。まずは、局所麻酔(部分的な麻酔)で行う抜歯の例を挙げます。これらの場合は一般歯科ではなく、設備が整って、経験も豊富な口腔外科で抜歯することが望ましいです。

水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)

いわゆる親知らずです。水平埋伏智歯とは、親知らずのうち、まっすぐにはえずに傾いて埋まっている歯のことをいいます。傾く方向は前方が多いですが、後方へ傾いていることもあります。傾斜角度がきついと上下が逆転していることもあります。こうした歯は下顎に多いですが、上顎の親知らずにも認められることがあります。

水平埋伏智歯は、通常の抜歯とは異なる技術が必要となります。抜歯の方法は、歯茎を切開し親知らずの頭の部分をしっかりと露出させます。その後、親知らずの頭を削って、頭の部分だけ取り出します。そして親知らずの根を取り出す様になります。そして、縫合して閉じます。このため、普通の抜歯よりも難易度が高く、口腔外科で抜歯となります。

埋伏智歯(まいふくちし)

こちらも親知らずですが、傾かずまっすぐだけれども、埋まったままになっているところが、水平埋伏智歯と異なる点です。一見すると水平埋伏智歯の抜歯の方が難しそうに思われますが、まっすぐの親知らずの方が難しい場合も多いです。切開してから抜歯するのですが、歯茎の下で親知らずを骨が覆っていることもあり、骨を削らなければならないことがあります。そして、歯を抜いた後縫合して閉じます。そのため、口腔外科で抜歯することが多いです。

正中過剰埋伏歯(せいちゅうかじょうまいふくし)

上顎の前歯の間に埋まっている余分な歯のことです。完全に埋まっていて目で見ることは出来ません。レントゲン写真を撮影してみて初めて見つかります。たいていの場合は、前歯の隙間が閉じないため、歯科医院を受診して発見されます。ですので、年齢的には幼稚園から小学校低学年にかけて多くなっています。

もちろん、大人にもみられますが、成人した後は、矯正歯科治療をしない限り抜歯になることは稀です。子どもの場合は、早期にこれを抜歯することで、前歯の歯ならびが改善する可能性があるため、積極的に抜歯します。正中過剰埋伏歯は、埋まっていますので、抜歯に際しては切開が必要となります。しかも、骨を削らなければならないこともあります。そのため、抜歯を口腔外科に依頼されることが多いです。

嚢胞(のうほう)

歯の根の先に、膿の袋が出来ることがあります。これを嚢胞といいます。歯の根の先にあるものを、特に歯根嚢胞とよびます。嚢胞は、むし歯の治療や根の治療では治りません。嚢胞が出来た場合、歯を抜いて嚢胞を摘出するか、もしくは歯茎を切開して、骨を削って嚢胞を摘出するかを選択しなければなりません。どちらも局所麻酔で出来る処置なのですが、手術の一環となるため、口腔外科で行なわれます。

残根(ざんこん)

むし歯になり、進行した状態で放置したことにより、歯茎よりも低い位置まで歯が欠けてしまった場合、抜歯しなければなりません。しかし、この抜歯は、通常の抜歯の様にはいかないことが多く、切開や場合によっては、骨を削ることが必要となることがあります。そのため、抜歯を口腔外科に依頼されることがあります。

過剰歯(かじょうし)

余分な歯が存在していることがあります。これは奥歯に多いです。粘膜から出ている場合はいいのですが、埋まっており、他の歯との位置関係から抜歯が困難であると考えられる様なとき、口腔外科に抜歯を依頼されることがあります。

異所萌出歯(いしょほうしゅつし)

小臼歯とよばれる、前から数えて4番目、5番目の歯の付近に多いのですが、きちんと歯が並ばず、このどちらかの歯が内側に入り込んではえていることがあります。それを異所萌出歯といいます。この歯は、抜歯器具を挿入しにくい、つかみにくいなどの理由により、抜歯がとても難しいです。そのために、口腔外科に抜歯目的で紹介されることがままあります。

便宜抜歯(べんぎばっし)

矯正歯科治療で必要となることがある抜歯です。歯の大きさと、顎の大きさを比較した場合に、きちんと歯を並べようとすると、顎の大きさが不足することがあります。このとき、歯を抜くことで、歯ならび全体の長さを縮小し、顎の大きさにあわせます。この抜歯のことを便宜抜歯といいます。第一小臼歯とよばれる前から数えて4番目の歯が抜歯対象となることが多いですが、どの歯にするかはむし歯の有無、歯周病の状態の有無などを勘案して決定されます。抜歯に際しては、歯と骨の間にある歯根膜という靭帯と、そして骨を傷つけないことが要求されます。

基礎疾患のある場合の抜歯

社会の高齢化により、さまざまな病気を持った方が増えています。例えば、心臓の病気や脳血管の病気により、血をさらさらにする薬を処方されていることがあります。このような薬を飲んでいる場合に抜歯をすると、抜歯後の出血のリスクが高まるため、以前は薬を中止して抜歯していました。しかし、中止することで、薬を出している元の病気である心臓や脳血管の病気が再発するリスクが高まってくることがわかってきました。そこで、最近では、薬を出来るだけ飲み続けた状態で抜歯をすることが推奨されています。すると、抜歯後の出血のリスクが高まってきます。そこで、普通の抜歯であっても、術後の出血のリスクを考慮して、口腔外科に依頼されることが増えてきました。口腔外科で抜歯をしたら、抜歯後の出血がないわけではないのですが、抜歯後の出血の対応がしやすくなります。また、他にも糖尿病や慢性腎臓病、肝臓病、骨粗しょう症など、いろいろな病気があります。患者や病気の状態に応じて、抜歯が口腔外科に依頼されることがあります。

 

全身麻酔で行なう抜歯もあります

鼻内歯(びないし)

非常に稀ですが、鼻の中に歯が埋まっている場合があります。これを鼻内歯といいます。この場合の抜歯は全身麻酔が必要です。

下顎管より下方にある親知らず

下顎管という下顎の先や下唇の感覚の神経や太い血管が通っているトンネルが下顎骨の中にあります。下顎管を抜歯の際に傷つけますと、顎先の感覚がしびれたり、大出血をきたしたりすることがあります。通常は、下顎管よりも上に親知らずはあります。ところが、かなり稀ですが、下顎管の下に親知らずが埋まっていることがあります。この場合、お口の中から抜歯することはとても難しいです。下顎管より下にある親知らずの抜歯に際しては、安全性を考えると皮膚を切開した上でお口の外から抜歯することになります。そのため、全身麻酔下で行なうことが要求されます。

含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)

含歯性嚢胞とは、主に親知らずの頭の部分を覆う様に出来た嚢胞のことをいいます。含歯性嚢胞の治療法は、含歯性嚢胞の摘出と、原因になっている歯の抜歯です。小さいものであれば局所麻酔で十分実施可能なのですが、稀に下顎管にかかる様な大きな含歯性嚢胞ができていることがあります。そのような大きな含歯性嚢胞を摘出する場合、下顎管に対するリスクが高くなります。ですので、嚢胞の摘出術と抜歯術を、全身麻酔をかけた上で行ないます。

 

まとめ

抜歯は、歯科医師にとってむし歯治療や歯周病治療と並び、基本的な手技のひとつです。

しかし、抜歯しなければならない歯の状態によっては、一般的な歯科医院で行なうことが難しい場合があります。そのようなときは、口腔外科に抜歯を依頼されます。口腔外科に依頼される様な歯とは、具体的には、水平埋伏智歯・埋伏智歯・正中過剰埋伏歯などが代表的です。

しかし、近年の社会の高齢化により、さまざまな基礎疾患をもつ患者が歯科医院に来院する様になり、抜歯自体が難しいわけではないケースでも口腔外科に紹介されることが増えてきました。例えば、心臓や脳の病気に対して、血をさらさらにする薬を飲んでいることがあります。すると、抜歯した後の出血が止まりにくくなります。しかし、この薬を止めると、元の病気である心臓や脳の病気の再発リスクが高まるため、薬を継続したまま抜歯をすることが望まれます。このようなとき、抜歯後の出血のリスクが高まりますので口腔外科で抜歯を、ということになるのです。

また、局所麻酔では抜歯が難しいことがあります。この場合は全身麻酔での抜歯となりますが、やはり口腔外科ですることになります。

抜歯に限らず、医療の基本は安全にあります。そこで、かかりつけの歯科医師が、口腔外科で抜歯をした方がいいと判断した場合には、そうすべき理由があります。たとえ、通院が手間であっても、口腔外科にて抜歯を受ける様にしてください。

参考:口腔外科学(ISBN-10: 4263405226)

 

 

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