血清カルシウムの値が低い、というのはどんな状態?

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血清カルシウムの値が低い、というのはどんな状態?

健康診断で「血清カルシウムの値が低い」という結果が出たあなた。「血清カルシウム」という検査項目が何を示すかご存知ですか?また、血清カルシウムの値を正常に戻すにはどうすべきか、ご存知でしょうか。

「血清カルシウムが低いっていうのは、つまり血液の中のカルシウムが少ないってことだから、今までより多くカルシウムを摂取すればいいだけでしょ」という安易な判断を自分で下してはいけません。血清カルシウム濃度が低いということは、もちろん単純にカルシウム不足が原因でカルシウムを補う必要がある場合もありますが、裏に様々な病気が隠れている可能性があります。

本日のコラムでは、血清カルシウムの値が低い場合に、体はどんな状態になっているのか、血清カルシウムが低い原因、その時に考えられる疾患などについて詳しく説明していきましょう。

 

血清カルシウムの「カルシウム」の働きについて

生命維持に不可欠なカルシウム

血清カルシウムの説明に移る前に、まずはカルシウムについての基本的な知識をおさえておきましょう。

カルシウムは歯や骨の材料となっていることは広く知られています。しかし、役割はそれだけではありません。カルシウムの役割はそれ以外にも、

  • 神経の刺激伝達
  • 筋肉の収縮
  • 体内のイオンバランスを保つ
  • 血液凝固を促進
  • 心機能の維持

などにも関与しています。このようにカルシウムは生命維持に欠かせないミネラルなのです。

体内のカルシウムの在り処

体内に存在するカルシウムのうち99%は歯と骨に、残り1%が血液中や細胞にあります。

血液中のカルシウム濃度が低下した場合は、首にある甲状腺にくっついている「副甲状腺」から分泌される「副甲状腺ホルモン」が骨を刺激して、骨のカルシウムを血液中に放出させます。その他にも「副甲状腺ホルモン」は尿中に排出するカルシウム量を減らしたり、消化管のカルシウムの吸収量を増加させたりします。「副甲状腺ホルモン」によって、血中カルシウム濃度のバランスが保たれているのです。

 

血清カルシウムが低いのはどういう状況か

血清カルシウムの値は、血液中の血清部分のカルシウム濃度のことを示しています。

血清カルシウムは約40%がアルブミンというタンパク質と結合して、残りは単体でカルシウムイオンとして存在しています。アルブミンと結合しているカルシウムは貯蔵用で実際に何も機能せず、「カルシウムイオン」のみが体の生理機能に働きかけます。つまり、血清カルシウム濃度が低いことで生じるさまざまな影響は、アルブミンと結合しているカルシウムの量は関係しておらず、血清中の「カルシウムイオン」の濃度が低いことによって生じているということです。

ただし、健康診断などで測定する血清カルシウムというのは、この血清中のカルシウムイオンの濃度だけではなく、血清中のカルシウムの総濃度を測定していますので、注意が必要です。

 

血清カルシウムが低いと判断する基準は?

つづいて血清カルシウムの正常値・異常値についてです。

血清カルシウムの検査値として、値が8.4~10.0 mg/dlの範囲にあると正常と判断します。意味合いとしては、血清1デシリットル(100cc)の中に血清カルシウムが8.4~10.0 mg存在している場合、正常と判断する、ということになります。

したがって、血清カルシウム濃度が8.4 mg/dl未満まで血清カルシウムが少なくなっている状態ですと、検査項目として正常値ではないと判断され、この状態を「低カルシウム血症」(hypocalcemia)と呼びます。

参考:日本透析医学界雑誌 http://docs.jsdt.or.jp/pdf/guideline1/secondaryGL5.pdf

 

血清カルシウム濃度が低くなる原因・疾患

血清カルシウムが少なくなる原因・疾患には以下のものが挙げられます。

カルシウム不足

単純にカルシウムの摂取量が足りていないと血清カルシウムが少なくなります。

副甲状腺機能低下

副甲状腺の機能が低下すると、副甲状腺ホルモンの分泌量も低下してしまいます。そのため、副甲状腺ホルモンによって、骨から血液中に補充されていたカルシウム量が減少し、血清カルシウムが少なくなってしまいます。

ビタミンD欠乏症

ビタミンDは、腸管でカルシウムの吸収を促進したり、腎臓でのカルシウムの再吸収を促進したりする働きを持ちます。つまり、血清カルシウム濃度を上昇させます。そのため、ビタミンDの摂取不足や日光に浴びずに体内でのビタミンDの合成量が低下すると、血清カルシウムが少ない状態になってしまいます。

腎機能障害

血清カルシウムが少なくなる原因の中で多いものが腎機能障害によるものです。腎機能が低下するということは、「尿のろ過機能がうまく働かなくなる」ということです。そのため、再吸収されるべきカルシウムが尿中に排泄されてしまい、結果として血清カルシウムが少なくなってしまいます。

急性すい炎

急性すい炎は、異常に活性化されたすい臓の消化酵素によってすい臓や他の臓器を消化してしまう炎症性の疾患です。臓器が消化されると脂肪組織が壊れ、分解されます。このとき分解された脂肪酸は血中のカルシウムイオンと結合して組織に沈着するのです。こうして血中のカルシウムイオンが消費され、血清カルシウムが少なくなってしまいます。

 薬剤

薬の副作用で血清カルシウムが少なくなることがあります。例えば、骨粗しょう症の薬では、骨からカルシウムが溶け出すのを止める働きがあるため、血清カルシウムは低くなります。その他にも、抗生物質(リファンピシン)や抗けいれん薬(フェニトイン、フェノバルビタールなど)、胃炎の薬(H2ブロッカーなど)などで低カルシウム血症がおきることがあります。

血清カルシウム低い

 

血清カルシウムの値が低い場合には内分泌科で精密検査

血清カルシウムが低いという結果がでた場合は、まず純粋なカルシウムイオンの濃度を調べる必要があります。なぜなら血清カルシウム濃度は「アルブミンと結合しているカルシウム濃度」と「カルシウムイオン」の総カルシウム濃度が測定されているからです。

前述した通り、アルブミンと結合しているカルシウムは生理活性がないので、カルシウムイオン単体の濃度が低いかどうかを見極める必要があります。そのため、アルブミン濃度を測定してカルシウムイオン濃度を算出しなければなりません。

その他の精密検査としては、血清カルシウムが低い原因を特定するために、腎機能の評価や、マグネシウム、リン酸、副甲状腺ホルモン、ビタミンDなどの各濃度の測定を行います。

併せて、遺伝や薬剤による影響や症状なども確認しながら原因を特定していくということを行います。

様々な検査および総合的に判断するための知識が必要ですので、専門の内分泌科で診てもらうようにしましょう。

 

血清カルシウムの値が低い場合の自覚症状について

血清カルシウムは筋肉や神経の働きにも関わっているため、カルシウムの濃度が低くなると、神経・筋肉の興奮性が亢進して、手指や唇のしびれ、異常感覚、こわばりや手足、腹部の痙攣を生じることがあります。また、高度に血清カルシウムが低くなると全身性の痙攣(けいれん)を引き起こすことがあります。

こういった症状が現れたとしても、血清カルシウムが低い意外に考えられる疾患や原因が多くあるため、この症状だけで気づくということはありませんが、もし健康診断で血清カルシウムが低かった場合、日頃から上記のような自覚症状がなかったかを振り返ってみてください。

 

血清カルシウムの値が低い場合の治療方針

何か基礎疾患があって血清カルシウムが低くなっている場合は、まず基礎疾患の治療が第一です。基礎疾患を治療することで血清カルシウム値は正常に戻ります。

血清カルシウムが低いことですでに何らか重大な症状(不整脈、痙攣、他強い自覚症状のある状態)の場合には、点滴でグルコン酸カルシウムを投与します。単純な摂取不足や消化吸収不良の場合は、経口のカルシウムサプリメントやビタミンDサプリメントを摂取します。過剰投与しすぎると良くないため、血清カルシウムは8.4mg/dl〜9.0mg/dl(正常値中央〜下限値くらい)を目標として治療します。

 

まとめ

血清カルシウムが低いということが判明したらまずは、原因・疾患を特定することが大切です。血清カルシウムが低いということはカルシウムをたくさん取ればよいのだろうと、やみくもにカルシウムを摂取しても、原因がカルシウム不足でなければ、そちらを改善しない限り治りません。カルシウムは骨をつくるだけでなく、生命維持に欠かせないミネラルです。そのため不足すると、心機能、神経や筋肉の働きにも悪影響を及ぼしてしまいます。1日でも早く原因を特定し、治療を開始しましょう。

 

 

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