血清クレアチニンは腎機能の指標。高いままだと透析や腎臓移植になってしまうかも

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[投稿日] '16/11/06 [最終更新日] '18/01/19 3,855views
血清クレアチニンは腎機能の指標。高いままだと透析や腎臓移植になってしまうかも

血清クレアチニンという項目を聞いたことのある方はなかなか少ないのではないでしょうか。血液検査で、血清クレアチニンが高いという結果が出てしまった場合、おそらく大半の方が自分の体の中でどのようなことがおこっているのか全く見当がつかないと思います。

実は血清クレアチニンは「腎機能の指標」になります。腎臓は機能が低下していることに気づかないでいると、透析や腎臓移植が必要な状態まで悪化してしまう可能性もあります。

血清クレアチニンが高いと分かった時点でどんな病気が考えられるか、何をすべきか、ということまでこれから詳しく説明していきます。

 

血清クレアチニンとは?

クレアチニンは、筋肉がエネルギーを消費したときに生成される代謝産物です。生成されたクレアチニンは通常血流にのって腎臓でろ過され、ほとんど再吸収されることなく尿中に排出されます。

健康診断で測定される「血清クレアチニン」とは、血液中(血清)に存在するクレアチニンの量を測っています。

血清クレアチニンは生成されてから、血液にのって腎臓を通って、尿として体外に排出される、という流れですので、血清クレアチニンが血液や尿の中に含まれることは正常なことです。

ただし、血清クレアチニンが通常よりも高い場合には、「腎臓のろ過機能がうまく働いていないため、尿に排出できず血液中にクレアチニンが溜まってしまっている」「クレアチニンの絶対量が多く、ろ過が間に合わない」ということなどが考えられます。

 

血清クレアチニンの測定方法

血清クレアチニンは血液検査で調べます。

血液を試験管などでしばらくほっておくと、赤い沈殿と黄色い上澄みに分かれるのですが、血清とはその上澄みの液体成分のことです。クレアチニンは血清に含まれるので血清の中での濃度を測定します。

現在は酵素法でのクレアチニンの定量が一般的です。クレアチニンと反応する酵素を用いて反応した量からクレアチニン量を測ります。

 

血清クレアチニンの基準値

血清クレアチニン値は男女で差があります。男女で差があるのは、クレアチニンが筋肉の代謝により生成されるため、筋肉量が生成量に影響を与えるからです。筋肉量の多い男性の方が基準値も上がります。

  • 要注意(異常値):男性1.6 mg/dl以上 女性1.2 mg/dl
  • 上昇が認められる範囲:男性1.2~1.5 mg/dl 女性0.9 ~1.1 mg/dl
  • 基準値:男性0.6~1.1 mg/dl 女性0.4 ~0.8 mg/dl
  • 低下が認められる範囲:男性0.6 mg/dl以下 女性0.4 mg/dl以下

ただし、血清クレアチニン値は個人差もあるのでこの基準値は目安です。

また、その日の体調などにも影響するので血清クレアチニン値を測定する日に体調を崩していると、正しい値が測れないこともあります。

 

血清クレアチニンより正確なクレアチニンクリアランスとは?

血清クレアチニンからさまざまなことがわかりますが、血清クレアチニンで異常値がみられた場合は既に腎機能が大きく低下していることが多いといわれています。腎機能の低下を初期に見つけるために血清クレアチニンの値を用いて「クレアチニンクリアランス」と呼ばれるより腎機能を詳しく知る検査を行うことがあります。クレアチニンクリアランスとは、クレアチニンが実際にどのくらい尿中に排泄されているかを調べ、尿中と血中の両方のクレアチニン濃度を用いて実際の腎臓のろ過機能を調べます。

クレアチニンクリアランスの基準値は以下の通りです。

  • 男性 90~120ml/分
  • 女性 80~110ml/分

この範囲より高値の場合は糖尿病などが疑われ、低値の場合は腎臓病が疑われます。

参考:http://www.zjk.or.jp/kidney-disease/inspection-method/index.html

 

血清クレアチニンが高いときに考えられる病気

血清クレアチニンが高いときに考えられる病気を「腎臓疾患」「腎臓以外の疾患」の2つに分けて説明します。

腎臓疾患

  • 急性・慢性腎炎
  • 腎臓結石
  • 腎不全
  • 腎臓がん
  • 尿毒症

繰り返しになりますが、血清クレアチニンは腎臓の機能の指標です。よって血清クレアチニンが高い場合、クレアチニンの排出が腎臓でうまくいっていないことが考えられます。腎臓に炎症がみられたり、結石や腫瘍がクレアチニンの尿の流れを悪くしたりすることがあります。

腎不全や尿毒症は、腎臓の機能がほとんど働いていない状態です。血液をろ過する「糸球体」の網目の部分が詰まってしまい、クレアチニンだけでなく体内の老廃物を外に排出することができない、危険な状態です。

腎臓以外の病気

  • 高血圧
  • 肝硬変

これらの疾患は「腎臓の機能が低下したことで発症する」あるいは「これらの疾患により腎機能が低下する」の2つが考えられます。腎臓は血液のろ過だけではなく、体内の血液量を調節したり、肝臓で解毒した毒素や老廃物を腎臓で尿として排出したりするなど他の臓器とも連携をとっています。よって、腎機能が低下することで高血圧を引き起こしたり、肝機能の低下から腎臓の機能を低下させたりしてしまいます。

 

血清クレアチニンが高いとき、病気以外に考えられること

前述した通り、血清クレアチニンは体のコンディションが値に影響します。例えば激しい運動をした後、または筋肉量が増加したときなど筋肉の代謝量が増えるので当然クレアチニンの絶対量が増加します。また、妊娠中も血清クレアチニンが高くなりやすいといわれています。胎児に栄養を送るため、循環する血液量が増え結果、腎臓のろ過が間に合わなくなるからです。

 

血清クレアチニンが低すぎるのも異常

血清クレアチニンの基準値で「低下が認められる範囲」という項目がある通り、血清クレアチニンが低い場合も体に異常がある可能性があります。疑われる病気としては、筋ジストロフィー、尿崩症、糖尿病などが挙げられます。

筋ジストロフィーとは筋肉が少しずつ萎縮してしまう進行性の筋疾患です。原因は遺伝子の変異です。筋肉量が減っていくので当然血清クレアチニンも低下してしまいます。

尿崩症とは腎臓の機能に関わるホルモンの働きの異常で水分保持がうまくできず多尿になる病気です。尿が増えて多くのクレアチニンが排出されるため、血清クレアチニンが下がります。

糖尿病の初期症状としても血清クレアチニンの低値がみられます。高血糖の影響でクレアチニンの尿中排泄が増加するためです。ただし糖尿病が進み、合併症の1つである糖尿病性腎症を発症している場合は腎機能が低下しているため血清クレアチニンは高値を示します。

ただし血清クレアチニンが低くでたからといって、積極的にこれらの病気を疑うかというとそういうわけではなく、先ほど書きましたように体調によって変動しますので、低い値が何ヶ月も続く、値が明らかに低い、などの場合に再検査を行えばよいでしょう。

 

血清クレアチニンが高いといわれたら?

高い場合には、必ず再検査を受けてください。腎臓内科で詳しく検査をする必要があります。

腎機能が低下している場合、早急に治療を進めなければ、将来的に人工透析か腎臓移植を行わなければならない体になってしまう可能性があります。人工透析は一度その段階になってしまうと一生続き、非常に時間を奪われるため仕事にも生活にも大きな影響を与えてしまいます。

 

血清クレアチニンを下げるには?

血清クレアチニン 高い

血清クレアチニンを下げるには腎機能を高める必要があります。腎機能を高めるには腎臓に負担をかけない生活を心がけることが大切です。

まずは食生活の見直しです。塩分の高い食事は、体内から塩分を排出するために腎臓のろ過機能に負担がかかってしまいます。塩分を排出する働きのあるカリウムを含んだ食べ物を積極的に摂るようにしましょう。カリウムを多く含んだ食材には、オクラ、大根、カボチャなどがあります。またタンパク質の摂りすぎも腎臓に負担をかけてしまいます。塩分とタンパク質の少ない食事を意識しましょう。

続いて運動です。激しい運動はクレアチニンの生成を進めてしまいますが、適度な運動は腎臓の機能を高めます。1日に30分のウォーキングで十分ですので日常生活に取り入れてみてください。

また、クレアチニンの値を下げるために漢方薬が使われることもあります。五苓散(ごれいさん)や猪苓湯(ちょれいとう)は腎臓の機能を高めてクレアチニンを下げるといわれています。

しかし重ね重ね言いますが、血清クレアチニンの値が高い場合には、かならず病院を受診の上再検査をしてください。

 

まとめ

腎臓は私たちの生命維持には欠かせない臓器で、腎機能が低下してしまうとさまざまな病気を引き起こします。ある程度腎臓の機能が低下してしまうと完治は厳しくなり、人工透析や腎臓移植といった治療しか選択がなくなってしまいます。

血清クレアチニンが高いという結果がでてしまった場合は、1日でも早く専門の病院で再検査を受けて治療を開始する必要があります。もちろん検査時の体調によりたまたま高値を示した可能性もありますが、再検査の結果がでるまでは安心しないようにしてください。

 

 

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