赤ちゃんの顔に赤い斑点が….これが血管腫!?

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[投稿日] '16/09/29 [最終更新日] '18/03/18 2,537views
赤ちゃんの顔に赤い斑点が….これが血管腫!?

生まれつき皮膚に赤いあざのようなものがあったり、場合によっては盛り上がってガサガサした部分があったりするお子さんがいます。これらがいわゆる血管腫というものです。多くの場合は悪さをするわけではないですし、年齢が上がるにつれて自然に色が薄くなることも多いため、特別治療が必要、というものではない場合が多いです。

しかし、生まれてすぐに皮膚に赤く大きな盛り上がりがあると、ご両親は当然心配されます。また顔など、他の方に見える位置の血管腫は美容的な側面から親御さんが気にすることもあり、治療するというのも一つの選択肢です。

今回はそんな血管腫についてご紹介をします。

 

血管腫の概要

血管腫の発生頻度や患者数などに関する実態調査は国内・海外とも詳しくは行われておらず、そこまで実態としては掴めていません。血管腫はいろいろな種類があり、正中部母斑(サーモンパッチ、ウンナ母斑)と呼ばれるものや単純性血管腫(ポートワイン血管腫)、いちご状血管腫とよばれるものがあります。その中でも代表的なものは、日本で赤ちゃんの8-10%の頻度で発生するいちご状血管腫です。

 

血管腫の種類

いちご状血管腫

いちご状血管腫は、赤あざの一種とされていて、未熟な毛細血管の増殖により起こるもので、小児(特に乳児)に発生する腫瘍では最も頻度が高いです。身体の表面であればどこにでも見られますが、頭から首の部分が60%、体幹部分が25%、手足に起こるものが15%とされています。大きさはミリ単位の小さなものや顔の半分を覆うほど大きいものもあります。男女間で比べると3倍ほど女性に多いです。皮膚表面にたくさんのいちご状血管腫が認められた場合には内臓にもいちご状血管腫が発生している場合がありますが、極めてまれなことです。

正中部母斑

正中部母斑(サーモンパッチ、ウンナ母斑)については、生後すぐに見られる血管腫です。できる場所で呼ばれ方も変わってきます。サーモンパッチは、上まぶたや眉毛のところ、額の真ん中に淡い赤い斑点として現れます。これは、新生児の20-30%と多い割合でみられるのが特徴です。泣いたり、熱が出たりして血流が多くなると、赤みが強くなります。上まぶたにできたものは、まれに薄く残ることもありますが、1歳6ヶ月ごろまでにほぼ自然になくなり目立たなくなります。額の真ん中にあるものや鼻の周囲のものは1歳6ヶ月ごろまでに無くならなければ将来的にも残る可能性が出てきます。ウンナ母斑は、うなじから後頭部にかけてできる血管腫です。不規則な形の赤い斑点です。1歳6ヶ月ほどで50%は自然に消えますが、残り50%は将来的にも残ります。しかし、日常生活には問題ありません。

ポートワイン血管腫

ポートワイン血管腫は、皮膚の真皮と言われる部分にある毛細血管の異常で、通常の皮膚との境界線があり、ピンク色から濃い紫色などの斑点が現れます。生後からすぐ見られるもので自然に消えることはありません。成長して皮膚が厚くなると目立たなくなることもありますが、逆に目立つようになる場合もあります。男性よりも女性に発生頻度は高く、顔面や首元に多く見られますが、手足にも比較的多くみられます。

 

血管腫の原因と症状

血管腫 形成外科 皮膚科

血管腫 形成外科 皮膚科

冒頭で述べた通り、血管腫で代表的なものはいちご状血管腫になります。ここでは、いちご血管腫で原因や進行していく過程、症状も合わせて説明していきます。発生原因は、はっきりとしたものは分かっていませんが、異常な血管内皮細胞の腫瘍性の増殖が関連している病気と言われています。

生後すぐから数週間以内に発症し、表面がいちご状に赤く盛り上がり斑点として認められます。生後数週間以内に細胞増えはじめて急速に増大しますが、次第に細胞増殖が収まり、徐々に小さくなっていくという経過をたどっていきます。斑点が増え始めてから止まるまでの期間を増殖期と呼び、徐々に小さくなって目立たなくなっていく時期を消退期と呼びます。斑点の状態が変化しなくなる時期を消失期と呼び、増殖期は生後より6ヵ月から1歳6ヶ月ごろまで、消退期が1歳6カ月から5歳ごろまでとされています。この期間に関しては、個人差があり、症例による差が大きくなります。最終的には、自然に色調も治り、機能的な問題を残さず消失する場合が多いですが、表面がでこぼこしたり、しわやたるみが残ったりして不自然な外観を呈する場合があります。

いちご状血管腫の分類

いちご状血管腫は、主として局面型・腫瘤型・皮下型と呼ばれるものに分類できます。

局面型は、血管が拡張したり、皮膚が赤くなったりするといった初期症状があり、皮膚表面からわずかに膨れて、境界がはっきりとした鮮やかな赤色の斑点となります。斑点の周囲は、熱感はわずかあります。斑点があることで痛みはないようですが、かゆみを伴い、皮膚を引っ搔く様子が見られることがあります。

腫瘤型は、局面型同様の初期症状が出現した後に膨れ、境界はっきりとした赤色の斑点とやや硬めの弾力がある境界が比較的はっきりとした腫瘤として触れたら分かるようになります。その腫瘤は、皮膚表面の範囲は必ずしも一致しないのが特徴で、腫瘤の大きさには日内変動があり、熱感や拍動を触割ると感じることが多いです。ちょっとしたことで傷つきやすく、感染や出血を起こすことがあり注意が必要です。消退して腫瘤として小さくなっても赤色の斑点部分がしわのようになって残ることが多く、整容的な問題になりやすくなります。

皮下型は、表面上には現れないですが、やや硬い弾力のある境界が比較的はっきりとした腫瘤として触ると分かります。消退後には、皮膚の表面上の整容的問題はなくても、皮下に腫脹が残ることがあります。腫瘤の発生部位とその大きさによっては、増殖期に機能的な問題が発生する場合があります。鼻や首元の腫瘤では大きくなることで呼吸困難をきたしたり、眼の部分にできて大きくなった場合には、弱視や乱視などの視力低下、口唇では潰瘍ができたら哺乳することが難しくなったりすることがあります。

 

血管腫の治療方法

多くの血管腫は自然と目立たなくなるため、経過観察のみで特に治療を必要としないことが多いです。しかし、外観が気になる場合には、整容目的でレーザー治療や切除が行われることもあります。また、重要な臓器が圧迫されて、機能低下や気道閉塞を生じる可能性がある場合には、副腎皮質ステロイドの全身投与や局部注射、インターフェロンの投与、塞栓術、外科手術などを行う場合があります。

上記のようにさまざまな治療方法がありますが、主な治療方法について記載していきます。

外科手術

外科手術は、消退期以降に残った腫瘍において有効な治療方法になります。腫瘍からの出血などの緊急性がない限りは、増殖期に通常外科手術を行うことはありません。手術以外の治療で生じてしまった皮膚瘢痕なども同時に治療することが可能です。術中の出血の危険性を考慮すると、増殖期で行うよりも消退期後半から消失期に手術を行うことで、腫瘍を切除した後の傷が閉じやすくなります。どうしても傷跡が出来てしまうデメリットはありますが、確実に切除ができ、病理検査も行えるというメリットがあるのが特徴です。

色素レーザー

色素レーザーは、増殖期の早い時期に照射することで、腫瘍細胞の増殖を抑えて、通常よりも早く消退期へと移行することを目的として治療が行われています。治療の副作用は、ほとんどありません。照射直後は内出血の跡のように、少し色が濃くなりますが、1週間程度で自然と薄くなっていきます。基本的には治療後の処置も特に必要ないです。医学的に大きな危険視すべき問題がない病変に対しての照射の必要性に関しては医学界の中でも意見が分かれており、根拠がしっかりした報告からは積極的な照射の必要はないとされている現状があります。

炭酸ガスレーザー

炭酸ガスレーザーは、極小範囲の病変に対して、直接的にエネルギーを加えることでタンパク質を凝固することにより、腫瘍細胞の数を減少させたり、容積を減少させたりする目的で行っています。周囲組織への熱による損傷が比較的少なく、治療部位だけの組織を狙って照射できますし、メスを使用する外科手術と比べて、出血がほとんどないことが特徴です。

 

血管腫の最新治療

2016年7月4日、乳児血管腫治療薬プロプラノロール塩酸塩のシロップ製剤(商品名ヘマンジオルシロップ小児用0.375%)の製造販売が承認されました。作用機序の詳細は明らかになっていないようですが、プロプラノロールの血管収縮作用、細胞増殖抑制作用、血管新生抑制作用などが関与するのではないかと考えられています。海外や国内でも、増殖期の血管腫患者を対象としたテストにおいても、高い有効性が認められ、2013年11月に希少疾病用医薬品に指定されています。こうした薬がこれからどんどん社会に出てくることで、手術やレーザー治療に頼らず血管腫が治る日が来るかもしれません。

 

 

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