慢性疼痛の治療でかかる診療科はペインクリニックから精神科まで様々!

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[投稿日] '16/09/27 [最終更新日] '18/03/18 703views
慢性疼痛の治療でかかる診療科はペインクリニックから精神科まで様々!

慢性疼痛、ご存知でしょうか。慢性痛とも呼ばれますが、簡単に言うと、腰痛や膝の痛みなど慢性的に続く痛みのことです。

今回は長引く痛みである慢性疼痛について少し詳しく説明していきます。

 

慢性疼痛の概要

そもそも痛みは急性と慢性の2種類に分類されます。急性疼痛は、突然起こり、比較的速やかにおさまる痛みです。これに対し、慢性疼痛は「病気やケガの状態から予想される治療期間から1ヶ月以上経っても痛みが治まらない」、「数ヶ月から数年にわたって痛みが再発する」、「慢性疾患(がんや関節炎、線維筋痛症、糖尿病など)または完治しづらいケガ(椎間板ヘルニア、靭帯断裂など)を負っている」などが当てはまる痛みになります。

慢性疼痛をもつ患者さんの数は、全人口の14%~23%といわれており、約5人に1人がなんらかの痛みを抱えていることになります。

具体的な痛みとしては、肩こり、腰痛、手足の関節が痛む、頭痛、にように場所が限定されていることもありますが、全身の関節、筋肉が痛む場合もあります。例えば男性では、30代以降に最も多い訴えは腰痛であり、加齢に伴ってその割合は増えていきます。一方、女性では20~60代前半までは一番多い訴えは肩こりですが、60代後半以降では腰痛が1位になり、また手足の関節が痛むという訴えが増えていきます。このように、痛みは生じる場所は性別や年齢によって異なります。

慢性疼痛に特徴的なのは、これらの痛みに加えて、下記のような症状が現れることです。

  • 抑うつ気分
  • 睡眠障害
  • 食欲の低下
  • 体重の減少
  • 性欲の減退
  • 意欲の低下 など

急性疼痛では、痛みによって交感神経が活性化し、心拍数や呼吸数の増加、血圧の上昇、発汗などの症状が現れますが、慢性疼痛ではこれらの症状はみられません。

慢性疼痛は正しい治療がなされないと心理的、社会的に障害が現れます。具体的には、痛みに対するストレスから怒りやすい性格になってしまったり、同じ理由でうつ病を発症してしまったり、外出に不安感や恐怖感が芽生えて引きこもるようになってしまう、などのような障害です。また、痛みが長時間続くと、痛みを伝える神経の感受性が高くなることがあり、通常なら痛みを感じないような刺激に対しても、強い痛みを感じるようになっていってしまいます。

 

慢性疼痛の原因

慢性疼痛の原因は、大きく分けると「痛みを伴う疾患」「神経の障害」「精神的な影響」の3つに分類できます。

痛みを伴う疾患

「痛みを伴う疾患」には、たとえば変形性関節症などが含まれます。関節は、骨と骨をつなぐ部分にある構造です。骨と骨の境目には関節包といって膜に覆われた空間があります。関節包の中で、それぞれの骨の先端には軟骨と呼ばれる柔らかい骨があり、さらにその隙間には関節液と呼ばれる液体があるため、骨同士が直接衝突するのを防いでいます。軟骨は加齢とともに擦り減ってしまうものであるため、高齢者や肥満の方、関節への負担が多い職業に就いている方では、次第に骨と骨が直接ぶつかってしまうようになります。すると、骨が削れて変形してしまったり、動くたびに硬い骨同士がぶつかることで痛みが生じるようになります。

神経の障害

「神経の障害」では帯状疱疹などの感染症や、糖尿病などが挙げられます。帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症です。帯状疱疹はほとんどの人が子供の頃にかかる水痘と同じウイルスによって生じる皮疹です。帯状疱疹ウイルスは、一度感染すると神経の中に潜み続け、疲労や体調を崩したときなどの免疫力が低下した際に、再び活性化することがあります。再発の症状としては、神経の走行に沿って帯状の皮疹とその部分に一致する痛みが現れます。皮疹自体は抗ウイルス薬によって速やかに治療できますが、「帯状疱疹後神経痛」といって、ウイルスが活性化した際に神経が傷つけられてしまうことで、皮疹がよくなっても痛みだけが数ヶ月残る場合があります。帯状疱疹後神経痛は、抗ウイルス薬での治療が遅くなってしまった場合や70歳以上の高齢者で起こりやすいことが知られています。

一方、糖尿病によっても神経は障害されます。糖尿病では血液中の血糖値が高い状態が続いています。高血糖の状態では血管の壁を作っている細胞が傷つき、血管が細くなってしまいます。神経は血管のそばを走っていますが、血管が細くなってしまうことで、その血管を通る血液量が少なくなり、その結果血液からの栄養が神経に届きづらくなることで、神経も徐々に障害されていくのです。特徴としては手足の先の方から、左右対称に「ぴりぴり」「じんじん」といったしびれや痛みが出てきます。

精神的な影響

「精神的な影響」としては、痛みに対する不安や恐怖が痛みを増強させてしまうことがあります。痛みが繰り返し起こると、痛みに対して不安や恐怖が生じ、痛みを予期するようになります。すると、身体の中ではプロスタグランジンなどの痛みを強く感じるような物質が作られます。これらの物質は痛みに対する神経の感受性を高めることで、通常では痛みを感じないような状態でも痛みを感じるようになったり、本来の痛みよりも強い痛みとして感じるようになります。

また、不安や恐怖は、身体にもともと備わっている痛み止めの働きをもつ物質(エンドルフィンなど)の産生量を減らしてしまうことも知られています。このため、やはり痛みに対して敏感になり、異常な痛さを感じてしまうようになります。

 

慢性疼痛の治療法

慢性疼痛では薬物による治療が行われています。第一選択薬はNSAIDsやアセトアミノフェン、効果が得られなかった場合はオピオイドや鎮痛補助薬が使われます。

NSAIDsは抗炎症薬です。一般的に痛み止めとして広く使われている薬です。炎症を抑えることで痛みの原因物質であるプロスタグランジンの発生を抑え、痛みを落ち着かせる働きがあります。副作用としては吐き気や腹痛などの胃腸障害が知られています。

アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬です。作用はNSAIDsと同じく、プロスタグランジンの発生を抑えることで、痛みを落ち着かせる働きがあります。

いずれにしても、炎症が痛みの主な原因となっている急性疼痛では治療効果の大きい薬ですが、神経の障害や精神状態が影響している慢性疼痛に対しては効果が得られない場合もあります。

オピオイドは、神経に作用して、痛みを抑制する働きを活性化させ、逆に痛みを伝える作用を抑える働きがあります。その作用は強く、痛みの改善だけでなく、食欲の増加や睡眠障害の改善、意欲の向上などもみられます。副作用としては、吐き気や便秘、眠気などがあります。また、オピオイドはその作用の強さから乱用されてしまうことが問題となっています。乱用すると副作用が強く現れ、また離脱症状として、薬の効果が切れると不安を感じたり、心拍数の増加、ふるえ、興奮などの症状がみられることがあります。薬に頼りすぎず、用法用量をしっかり守って使用することを心がける努力が必要です。

またペインクリニックや麻酔科では神経ブロックという治療が行われます。これは神経の周囲に麻酔薬・鎮痛薬を注射することで痛みを遮断するという治療になります。直接神経の伝達を遮断しますので、痛みを抑える効果は強いです。しかし、薬の効果が数週間ほどで切れるとまた痛みが起きる場合がありますので、内服薬などと組み合わせて行い、一回で終わる治療ではありません。

鎮痛補助薬には、抗てんかん薬や抗うつ薬、筋弛緩薬などが用いられます。
抗てんかん薬は、神経の過剰な興奮を抑えることで鎮痛作用をもたらします。副作用としては、その鎮静作用のためにめまいやふらつき、眠気を感じたり、頭痛がみられることもあります。

慢性疼痛 カウンセリング ペインクリニック

慢性疼痛 カウンセリング ペインクリニック

抗うつ薬は精神を安定させる物質であるセロトニンの働きを強めることで、痛みを抑制する働きを強めることができます。副作用には、便秘や眠気、吐き気や下痢などの胃腸症状、頭痛などがあります。

筋弛緩薬は筋肉の過剰な緊張を解く薬です。痛みによって身体に不必要な力が入ってしまっていると、その筋肉が凝り固まって新たな痛みを誘発する原因になります。これを抑えるのが筋弛緩薬です。副作用としては、脱力感やふらつき、吐き気や腹痛などの胃腸症状などがみられることがあります。

また筋肉をほぐすという意味では、マッサージやリハビリテーションなども役立つことがあります。そのため整形外科やリハビリテーション科を受診することが適切な場合もあります。そして同様に精神的な理由に対して、抗うつ薬だけではなく、カウンセリングや心理療法が効果を示す場合もあります。そのため、慢性頭痛の治療は麻酔科やペインクリニックを中心として様々な診療科に渡ります。

 

慢性疼痛の最新治療

慢性疼痛を招く原因の1つに精神的な影響があることをお話しました。このため、治療薬には抗うつ薬や抗不安薬が用いられることもあります。これらのように精神的な領域で使う薬物には副作用が多く、専門医でないと扱いづらい薬物となっています。このため、心が病んでいなくても、抑うつ症状がなくても、慢性疼痛の治療には精神科にかかることが助けになることも少なくありません。現状では、精神科は「精神が不安定な人がかかる科」というイメージがありますが、その偏見を払拭し、正しい理解が広まることが望まれます。

慢性疼痛は正しい治療を始めるまでのスピードが求められる病気です。医療者側も患者側も、この症状には薬が効かないと諦めずに、正しい診療科で正しい治療を受けていくことで、慢性疼痛は治る病気に変移していくことでしょう。

 

 

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