悪性脳腫瘍には、手術・抗がん剤治療・放射線治療の全てで対抗!

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[投稿日] '16/09/24 [最終更新日] '18/04/13 524views
悪性脳腫瘍には、手術・抗がん剤治療・放射線治療の全てで対抗!

悪性脳腫瘍の概要

脳腫瘍は文字通り脳にできた腫瘍のことを指すのですが、脳にできる腫瘍は、原発巣が脳にあるのか、脳以外にあるのかによって2つに分けることが出来ます。前者を、”原発性脳腫瘍”、後者を”転移性脳腫瘍”といいます。このうち、原発性脳腫瘍については、良性腫瘍と悪性腫瘍の2種類に分けられます。転移性脳腫瘍は、違う場所でできたがんが血液の流れによって脳に運ばれ、転移しているということなので、すべて悪性腫瘍となります。

脳腫瘍を語る上ではその腫瘍が良性なのか、悪性なのかで特徴が大きく変わってきます。
そのため、まず良性腫瘍と悪性腫瘍それぞれの定義から見ていきましょう。

良性腫瘍は、「他の部位に腫瘍が転移することがなく」、「成長のスピードが年単位と緩やかで」、「腫瘍組織と周囲の正常組織との境界がはっきりしている」ものを指します。代表的な良性腫瘍には髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫が挙げられます。
一方で悪性腫瘍は、「他の部位に腫瘍が転移することがあり」、「成長スピードが数週単位と極めて速く」、「腫瘍組織と周囲の正常組織の境界がはっきりしない(浸潤性に広がる、ともいいます)」ものを指します。代表的な悪性腫瘍としては、膠芽腫、神経膠腫が挙げられます。

脳は人間の生命を維持する上での司令塔に相当する臓器ですが、その脳に悪性腫瘍ができた場合、先程悪性腫瘍の特徴として記述したように、腫瘍が周囲の正常組織に浸潤しながら広がっていくため、腫瘍を完全に取りきるのが困難となってしまいます。(腫瘍を完全に取りきろうとすると正常は脳組織も切除することとなってしまい、生命活動に対するリスクが大きすぎるためです。)
また、脳は身体の他の部分とは異なり、リンパ系組織がありません。悪性腫瘍は、このリンパ系組織を通じて身体の他の組織に転移を起こすのですが、脳にはこのリンパ組織がないので、脳に発生した悪性腫瘍が体の他の部位に転移を起こすことはほとんどありません。ただし、脳に発生した悪性腫瘍が、脳の別の部分に転移することはあります。

悪性脳腫瘍の進行具合の指標

悪性腫瘍の進行具合をしめす指標として、ステージ(病期)分類というものがありますが、悪性脳腫瘍の場合は、これがありません。グレード(進行度)という指標を用いて表します。ステージ(病期)分類とは、悪性腫瘍の他の部分への転移状況により、進行具合を判断する方法です。ところが、悪性脳腫瘍が、ほかの悪性腫瘍とは異なり、脳以外の組織や臓器に転移することが少ないので、ステージ(病期)分類では、進行具合を表しにくいのです。

脳腫瘍のグレード分類

グレードのⅠが良性腫瘍で、グレードⅡ・Ⅲ・Ⅳが、悪性腫瘍となります。

グレード Ⅰ(良性腫瘍)
腫瘍が大きくなる速さが、非常に緩徐な腫瘍です。周囲の正常組織との境界が明瞭であるため、外科手術で完全に摘出できれば治ります。(ただし腫瘍ができた部位などによっては手術が難しい場合もあります。)

グレード Ⅱ(悪性腫瘍)
腫瘍が大きくなる速さが、ゆっくりで数年かけて大きくなる腫瘍です。グレードⅠの良性腫瘍とは異なり、周囲に浸潤していきます。そのため、完全に摘出することが難しいことがあり、その場合、再発することもあります。

グレード Ⅲ(悪性腫瘍)
腫瘍が大きくなる速さが、速い腫瘍です。病理検査で明らかに悪性腫瘍を示します。手術で完全にとりきれることはまずなく、化学療法や放射線治療が必要です。

グレード Ⅳ(悪性腫瘍)
腫瘍が大きくなる速さが、とても速い腫瘍です。悪性度は非常に高く、脳の中の広い範囲に腫瘍が広がっていきます。多くの場合、1年以内に亡くなります。

悪性脳腫瘍の検査

上記のようなグレードは、CTやMRIの画像検査で脳腫瘍のタイプを診断することで決まります。

 

悪性脳腫瘍の症状

頭痛・吐気・嘔吐

脳は、頭蓋骨という分厚い骨で、外部から守られています。脳腫瘍ができて、どんどん大きくなっていっても、頭蓋骨が大きくなることはないので、必然的に頭蓋骨の内側の圧力が高まってきます。これを”頭蓋内圧亢進”といいます。その結果、頭痛、吐気、嘔吐を起こすようになるのです。脳腫瘍が原因の頭痛の特徴は、頭痛が持続性に起こり、特に朝目覚めた時には強く、昼間には若干改善することにあります。頭痛の症状が進行していきますと、次第に吐気や嘔吐を伴うようになってきます。

けいれん

脳腫瘍が、腫瘍周辺の脳神経を刺激することで、けいれん発作が起こります。けいれんの症状はさまざまですが、成人にけいれんが起こった場合は、まず脳腫瘍を疑います。

その他症状

脳腫瘍が発生した部位におり、さまざまな症状が現れます。もし、言葉をつかさどる部分に発生した場合は、”単語や言葉を間違えやすくなる”、”言葉が出にくい”、”うまく話すことが出来ない”といった症状になります。この場合を”失語症”といいます。また、視力を司る部分に脳腫瘍が発生した場合は、ものが二重に見えるようになる”複視”や、視野が狭くなったり、視野の一部が失われてしまったり、目がかすむなどの視力に関連する症状があらわれることがあります。その他、ふらつきやめまい、歩きにくくなる、手がうまく動かせなくなる、物忘れがひどくなるなどの症状もあります。

悪性脳腫瘍 脳神経外科

悪性脳腫瘍の治療

悪性脳腫瘍治療は、腫瘍切除手術・抗がん剤治療(化学療法)・放射線治療の3種が基本となります。まず、画像診断で腫瘍が疑われた場合、手術を行い、腫瘍組織の病理学的検査を行ないます。これにより、どのタイプの脳腫瘍かを特定します。腫瘍の病理学的検査は、手術中に腫瘍の性質を確認するために行なわれる”術中迅速診断”と”、手術後にしっかり時間をかけて丁寧に確認する”永久病理診断”にわかれます。前者は、どのタイプの腫瘍かを特定することで、腫瘍の切除範囲を決定する判断材料となります。手術中に行われるために病理医にもスピードが求められます。

悪性脳腫瘍切除手術

悪性脳腫瘍の治療の基本となるものです。腫瘍はどこにできてもそうですが、外科手術により腫瘍をあますことなくすべて切除することが出来れば、完治が望めるからです。しかしながら、摘出しやすい良性脳腫瘍を除いて、悪性脳腫瘍は、水がスポンジにしみ込んでいくように脳神経組織に腫瘍細胞が広がっているために、手術だけで腫瘍を完全に取り除くことは非常に困難です。手術に際しては脳の機能をなるべく温存すべく、患者さんと対話したり、手などを動かしてもらったりしながら手術を行う覚醒下手術が行われます。また神経ナビゲーションシステムを用いることで、腫瘍の位置を正確に把握することが出来るようになりました。現在では、そのおかげで脳腫瘍手術の安全性と正確性が非常に高められました。

神経ナビゲーションシステム

手術中に、脳のどの部分を処置しているのかをリアルタイムで確認出来るものです。手術前にあらかじめ撮影しておいたCTやMRIの画像上に、手術部位の情報を表示することで、見えづらい頭蓋内の状況を立体的に把握しやすくするものです。位置情報を得る方法は、カメラを使う方法や磁力を使う方法などさまざまで、各メーカーの特徴となっています。

 

悪性脳腫瘍に対する放射線治療

脳は、身体の感覚や動きを司るいわば生命の司令塔ですので、悪性腫瘍だからといって、がん細胞が浸透していそうだと疑われるところをすべて取り除くわけにもいきません。そこで、放射線治療が行なわれます。また、たとえ良性腫瘍であっても、再発を繰り返す場合には、放射線治療を行なうこととなります。放射線治療は、大きく分けて”通常分割外照射法”と”定位的照射法”というの2つの方法があります。

通常分割外照射法

大きく正常な脳組織に浸潤する悪性脳腫瘍の場合に用いられます。照射範囲は広範囲に及びますが、1クール20~30回に分割して照射しますので、正常な脳組織への影響を最小限に留めることができます。その代わりに、必要な治療日数は数十日になります。

定位的照射法

腫瘍組織にだけ放射線照射が可能な近年開発された新しい放射線治療の方法です。定位的放射線治療装置、通称ガンマナイフとよばれる装置を用いて行ないます。通常分割外照射法とは異なり、照射を行うのは治療1クールで1回(通常2泊3日の入院期間のうち照射を行うのは1日だけ)と、入院期間が短期間であることや、脳腫瘍の位置をあらかじめCTやMRIを用いて正確に測定し、頭をしっかりと固定した上で放射線を照射するため正常脳組織が余分な放射線を受けないのが大きなメリットです。この大きなメリットがある反面、適応となる腫瘍の大きさに限度があります。腫瘍の直径が30mm程度までの転移性脳腫瘍などが適応となりますので、腫瘍径30mm以上の大きな腫瘍には使えません。治療に用いるガンマナイフという装置は新型モデルになればなるほど、自動化される範囲が広くなり、操作ミスなどの人的エラーのリスクが低下しています。

 

悪性脳腫瘍に対する抗がん剤治療(化学療法)

悪性脳腫瘍の場合の抗がん剤治療は、外科手術の後に、もしくは放射線治療と同時に行ないます。悪性脳腫瘍でも、抗がん剤治療の効果が期待出来るかどうかは、腫瘍の性格によって異なりますので、病理学的検査で正確に腫瘍を診断することが大切となります。

このように、脳腫瘍に対しては様々な治療法を総動員して治療を進めていくのです。

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