空気感染する数少ない病気、結核

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[投稿日] '16/09/16 [最終更新日] '18/03/18 511views
空気感染する数少ない病気、結核

結核という病名は、かなり一般的に知られている病気だと思いますが、「どんな症状なのか」「なぜ発症するのか」「どんな治療をするのか」ということまで細かく知っているかというと、そうでもないかもしれません。漠然と「怖い病気だ」ということ、ツベルクリン検査は結核の検査、ということまでは皆さんご存知だと思いますので、ぜひこの機会に結核についてもう少し理解を深めていきましょう。

 

結核の概要

結核とは、結核菌による感染症のことをいいます。風邪に似た症状から始まり、全身のだるさ、食欲不振、体重減少、咳や痰、胸痛、37度前後の発熱、だるさなどが出現します。軽度の肺炎にも似ていますが、症状が悪化してくると血痰や呼吸困難などの症状がみられます。結核は最初肺に感染することが多いのですが、肺から腎臓や脳など他の組織に感染が広がっていき、最終的には生命の危険や重い後遺症を残す可能性もあります。

結核に感染しても、必ずすべての人が「発病」するわけではありません。「発病」とは、吸い込んだ結核菌が体内で活動を始め増殖していくことです。結核に感染した人の10人中8人程度は体の免疫によって押さえ込まれて活動しない状態となります。通常は「感染」から「発病」までの潜伏期間は6ヶ月〜2年といわれていますが、感染したけれどもずっと発病しない方も多くいます。結核菌は大変活動が遅く、免疫によって一度押さえ込まれると、体内で冬眠のような状態となりますが、10年後など免疫力が低下した時に、急に活動を始め、発病することもあります。抵抗力のない赤ちゃんや、他の病気によって免疫力が落ちている人の場合、結核に対しての免疫力がなく、結核菌がすぐに繁殖しやすい状況を作ってしまいます。

発病したすべての人が他の人に感染させる訳ではなく、症状が進んだ場合、咳や痰とともに菌を体外に排出する「排菌」した状態になった際に初めて、感染力をもちます。そのため、「排菌」してなければ、周囲に感染させません。

結核菌は、体内のあらゆるところで増殖、病気を作ることが特徴です。肺結核では、肺の組織に炎症を起こします。首のリンパ節が腫れることが最も多くみられます。骨や関節にもできることがあり、「脊椎カリエス」と呼ばれます。腎臓に炎症を起こす「腎結核」もあります。皮膚や生殖器、喉頭など全身に拡大することもあり、血中にばらまかれた結核菌が脳に達すると、「結核性髄膜炎」という病気を引き起こします。髄膜炎は、適切な治療が遅れた場合、死に至る確率も高く、また生命は助かったとしても、重い後遺症を残すことがあります。

 

結核の患者数

昭和の前半には、日本において死因第一位の病気でしたが、その後徐々に減少してきました。しかし、2013年においても、人口10万人に対し、16.1人という罹患率がみられ、いまだなお過去の病気というわけではありません。そして、実は年間で2,000人以上の人が結核が原因で死亡しています。ちなみに世界に目を向けるとAIDS(エイズ)の次に死者数が高い病気であり、またAIDSという病気を起こすHIVというウイルスに感染した場合、結核に感染・発病しやすくなります。HIV患者の4分の1が結核により死亡しているとされています。このように、日本でも海外でもまだまだ注意が必要な病気ですが、世間の結核に対する認識は薄れているため、1999年に厚生労働省によって「結核緊急事態宣言」が出されました。日本では、中年期以前は女性の罹患率が高く、それ以降だと男性の方が高くなります。

 

結核の感染の原因

結核の感染の原因は、くしゃみや咳などで放出された結核菌を口や鼻から吸い込むことにより感染します。結核菌は感染力の強さはありますが、紫外線に弱いため、長時間は空気中に残存していることはありません。そのため、学校や職場など、長時間一つの空間で他人と接する状態の時に感染が拡大されやすいのです。しかし、結核に感染している人であれば誰でも感染源になるという訳ではなく、「排菌」とよばれる「咳や痰の中に菌がいる状態」でなければ感染しません。

結核を悪化させる原因

赤ちゃんや乳幼児は免疫力が低いため、発病するリスクが高まります。大人では、糖尿病や胃潰瘍、人工透析などの治療をしているか、既往歴がある人は発病しやすいといえます。膠原病や喘息、癌などの治療のために抗癌剤や副腎皮質ホルモン剤の使用をしている場合も、免疫を抑える作用があるため結核を発病しやすくなります。HIV感染をした場合も免疫力の低下のために結核にも二重感染しやすくなります。その他、遺伝的な要因や、ストレス、喫煙なども結核の発病に関係があります。BCG接種をせずにツベルクリン反応が陽性の人はリスクが高まります。

2005年からの法改正で日本ではBCG予防接種が生後6ヶ月程度の乳児に対して行われるようになっていますが、それまでもツベルクリン反応が陰性の場合は接種されていました。大人はワクチンの効果が薄れているため、結核が発病した場合に重症化の可能性がありますが、BCG接種は乳幼児の重症化を防ぐのに大きな役割を果たすため、大人になってからBCG接種をしてもあまり効果が期待できません。そのため、大人では、バランスのとれた食事や十分な睡眠をとること、適度な運動を行い、過度なダイエットを避けることで免疫力の低下を防ぐことができます。

結核 呼吸器内科

結核 呼吸器内科

結核になった場合の受診・入院

結核が疑われる場合は、子供であれば小児科、大人であれば内科か呼吸器科を受診しましょう。2週間以上咳や痰などが続くようであれば、周囲への感染を防ぐため、すぐに医療機関への受診が必要です。排菌が活発な場合、入院対象となります。通常、結核菌が排菌している場合は、菌の活動を抑えるために薬物治療を行いますが、3~4ヶ月で排菌は停止するため、その後は発病していても通院治療に切り替えることができます。発病していても排菌していない場合、入院は必要ではありません。そのため、排菌しているかどうか、つまり痰の中に結核菌がいるかどうかの喀痰検査を最初に行い、陽性だった場合に入院をします。

結核の検査

ツベルクリン反応、血液検査(インターフェロンガンマ遊離試験)を行い、感染しているかの診断をします。ツベルクリン反応とは、皮下注射をしたあとに、皮膚の反応をみる検査です。血液検査は、一回で結核に感染しているかどうかを調べることができる検査です。ツベルクリン反応は、過去にBCG接種を受けている人の場合、感染の有無に関わらず陽性にでてしまうことがあるため、血液検査を併用して診断します。

発病しているかどうかの診断をするためには、X線画像検査、喀痰検査を行います。X線検査は胸部CTやレントゲン検査を行います。喀痰検査は痰の中に菌がいるかどうかを調べます。塗沫検査と培養検査があり、結核菌の発見には精度が高いですが、いずれも結果が出るまでに数週間を要することがあります。

 

結核の治療法

薬物治療

結核の主な治療法は薬物治療です。治療は3~4種類の薬(イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブドールかストレプトマイシン等)を最初の2ヶ月間併用します。これらは結核菌を殺菌し、また静菌といって、菌がこれ以上増殖しないように働きかけ、菌の活動を停止させます。その後、治療が順調であれば、4ヶ月イソニアジド、リファンピシンの2種類を使用します。この期間中、看護師による対面服薬指導を行い、飲み忘れや、服薬の中止を防ぎます。途中で服薬を中断してしまうと、多剤耐性結核菌とよばれる薬によって死滅できない菌を増加させてしまう原因となります。

服薬治療の場合、副作用に注意していく必要があります。特に重篤な肝機能障害や腎機能障害を合併している患者さんには特に注意が必要です。

具体的な副作用

イソニアジドやリファンピシンを始め、結核治療では、結核菌を殺菌し、増殖させないようにするための効果的な薬剤を用いますが、同時に副作用もみられます。その多くは、肝障害やアレルギー反応、食欲不振や胃腸障害、関節痛です。また、エタンブドールは視力低下や視野狭窄などの視神経障害があり、ストレプトマイシンは第八神経障害とよばれる、耳鳴りや難聴、平衡障害です。いずれも、肝機能障害患者や妊婦には用いることができない場合があるため、医師の指示の下、適切な服用をしていく必要があります。

結核の外科治療

結核は主に薬物療法を行っていきますが、多剤耐性菌の治療法として、外科療法も行う場合もあります。全身状態が手術に耐えられる症例の場合です。主病巣が肺にある場合、肺切除が基本です。

 

結核の最新治療

2014年に多剤耐性肺結核症に対して「デラマニド」という薬剤の製造・販売が認可されました。1日2回を服用します。今までの結核治療で、薬剤に耐性がついてしまい、効きにくい結核患者に対して、他の抗菌剤で治療を行っていましたが、治癒率が50~70%と報告されていました。デラマニドを使用した際、症状が改善し、他の薬剤に比し予後の改善と死亡率の低下が認められました。副作用は不眠症、頭痛、傾眠、心臓疾患などがみられます。また製薬会社によって登録され、限られた医療機関や医師の下で処方が行われています。

 

 

 

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