単なる高血圧だと思っている人の10人に1人は原発性アルドステロン症!

単なる高血圧だと思っている人の10人に1人は原発性アルドステロン症!

原発性アルドステロン症の概要

アルドステロンとは、腎臓の上にある副腎と呼ばれる1cmほどの小さな臓器から分泌されるホルモンで、血圧を上げる働きがあります。原発性アルドステロン症は、このアルドステロンが過剰に分泌されてしまう病気で、主な症状は高血圧となります。

日本では高血圧の患者さんは約4,000万人おり、このうち5~10%が原発性アルドステロン症による高血圧だと考えられています。つまり、全体の患者数は200万~400万人で、30~60人に1人は原発性アルドステロン症による高血圧となっています。原発性アルドステロン症はあまり聞き慣れない病名かと思いますが、30~60人に1人といことで、発症する確率がものすごく小さい病気、というわけでもありません。

患者さんの年齢層は50歳前後にピークがあります。また、発症する年齢は40代前半に多いことが報告されています。このことからも、発症した場合に、治療してすぐに治る、という短期的な病気でもないということもわかります。男女比は1:1.5でやや女性に多い病気です。

 

原発性アルドステロン症の症状

原発性アルドステロン症になると、高血圧になるわけですが、この症状として頭痛、耳鳴り、肩こり、めまいなどです。また、高血圧に伴って血管内から水分が漏れ出すことがあります。これが皮下で起こるとむくみとして現れ、肺で起こると呼吸困難感が生じることがあります。

原発性アルドステロン症の2大症状は低カリウム血症と高血圧です。カリウムは筋肉の収縮や神経の活動に関与しているミネラルであり、血液中のカリウムが減少する低カリウム血症では、手足の筋力の低下や脱力感、易疲労感(いひろうかん:疲れやすい)、または腸の動きが悪くなることによる便秘などの症状が現れます。

原発性アルドステロン症で最も重篤な問題となるのは高血圧で、治療せずに放置すると心臓や血管に過度な負担がかかり、動脈硬化や心不全、不整脈、さらに悪化すれば心筋梗塞や脳卒中など命に関わる場合もあります。

 

原発性アルドステロン症の原因

原発性アルドステロン症の原因は、副腎腺腫または副腎の過形成です。これらはいずれも副腎が大きくなる変化であり、大きくなった副腎から、より多くのアルドステロンが分泌されるようになるため、アルドステロンの量が過剰になります。

もう少し副腎について詳しく触れておきますと、副腎には2層の構造があり、内側の髄質と外側に皮質に分かれます。皮質はさらに球状層、束状層、網状層の3層に分かれます。球状層からはアルドステロン、束状層からはコルチゾール、網状層からは性ホルモンが分泌されていますが、この球状層に腫瘍(細胞が異常に増殖して部分的にかたまりを形成したもの)または過形成(なんらかの刺激によって細胞の数が全体的に増えてしまい、臓器全体が大きくなるもの)が生じることで、アルドステロンの分泌量が増加します。

つまり、副腎のうち、アルドステロンというホルモンを出す部分が異常に大きくなることで発症するのが、原発性アルドステロン症というわけです。

原発性アルドステロン症でなぜ血圧があがる

原発性アルドステロン症でなぜ血圧があがるのかというと、これはアルドステロンに血液量を増やす働きがあるためです。アルドステロンは腎臓や尿管に働きかけ、これから尿になろうとしている水分からナトリウムを吸収します。ナトリウムには浸透圧の作用があります。浸透圧とは、濃度の低い液体から濃度の高い液体へ水分が移動するときに生じる圧力のことです。血液中のナトリウム量が増えると、ナトリウムの浸透圧に引っ張られて血管内に水分が溜まりやすくなり、血液量が増加します。このようにして血管内を通る血液量が増えることで血管に加わる圧力も高くなり、血圧も高くなります。

このような高血圧状態では、血液を送り出すポンプとして働いている心臓にも負担がかかるため、心臓の病気を引き起こす原因にもなるのです。

腫瘍も過形成も時間が経つにつれて少しずつ大きくなっていくため、大きさに伴って分泌されるアルドステロンの量は増加していき、症状はより悪化していきます。

 

原発性アルドステロン症の治療法

副腎腺腫とは、副腎にできる良性腫瘍です。良性腫瘍は、がん(悪性腫瘍)とは異なり、その場所に留まって大きくなるものであって周囲の臓器に広がっていくことはありません。第一選択となる治療法は、副腎を摘出する手術です。

外科手術

副腎の摘出術は、腹腔鏡を用いて行われます。腹腔鏡とは、お腹に小さな穴を4ヶ所あけ、その穴からカメラや手術機器を入れて、モニターを見ながら行う手術です。お腹を大きく開かずに手術を行うため、傷を小さくすることができ、それに伴って手術の後の痛みも少なく、入院日数も短くすることができます。また、傷が大きければ大きいほど、その部分に細菌が繁殖しやすくなりますが、腹腔鏡手術ではこれらの感染のリスクも低下させることができます。

腹腔鏡手術についてはこちらのコラムも御覧ください。
開腹手術 vs 腹腔鏡手術ー知っておくべき治療法①

副腎は左右2つにある臓器なので、片方を取ってももう片方が正常であれば、手術後に問題が生じることはほとんどありません。このため、片方のみの副腎に病変がある場合は積極的に手術が行われています。手術した患者さんのうち60~70%は完治し、血圧を下げる薬を飲む必要がなくなります。しかし、残りの30~40%は、高血圧が長く続いてしまったために動脈硬化が進んで血圧が下がりにくくなっていたり、肥満など他の原因によって血圧があがってしまっているために、血圧を下げる降圧薬での治療を続けることになります。

抗アルドステロン薬による薬物治療

副腎腺腫のほとんどは片側に形成されます。一方、過形成は両側に生じることが多くなっています。副腎を2つとも取ってしまうと、副腎で作られているアルドステロン、コルチゾール、性ホルモンなど様々なホルモンが分泌されなくなってしまいます。この状態を副腎不全と呼びます。副腎不全では全身倦怠感(身体のだるさ)、脱力感、低血圧、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢、精神症状(不安、うつ)など非常に多彩な症状を示します。

このため、両側に病変がある場合は、手術を行うことは少なく、薬物による治療が行われます。治療には、アルドステロンの働きを抑える抗アルドステロン薬が用いられます。

スピロノラクトン(商品名:アルダクトン)は、アルドステロンの働きを抑えることで身体の溜まった余分なナトリウムや水分を尿として排泄させる利尿薬です。この結果、血圧が下がり、心臓の負担も軽くすることができます。利尿薬には多くの種類がありますが、他の利尿薬では尿中にナトリウムやカリウムなどのミネラルを排泄するのに対し、スピノロラクトンはカリウムを排泄させない働きがあります。原発性アルドステロン症では、アルドステロンの作用によって血液中のカリウムが低下して、筋力低下や易疲労感などが生じるため、これ以上カリウムを排泄するのは避けなければなりません。そのため、利尿薬の中でも特にスピノロラクトンが使われています。

副作用として、血液中のカリウムが増えすぎてしまうと不安やうつなどの精神症状がみられることがあります。また、心臓の筋肉の収縮力が変化することで不整脈を起こすおそれがあります。この他、乳房に痛みが出たり、女性では生理不順を起こす可能性もあります。

同じ抗アルドステロンとしてエプレレノン(商品名:セララ)も使われます。スピロノラクトンでは、アルドステロン以外の他のホルモンにも影響を与えてしまうため、上記のように様々な副作用が生じる頻度が高くなっていますが、エプレレノンではアルドステロンを選択的に抑制させる作用が強いため、同じ効果を得ながら副作用の頻度を減らすことができます。

治療法は第一選択が外科的手術、両側性の過形成や他の病気で手術が出来ない場合、手術を希望しない場合は薬物療法となります。原発性アルドステロン症は、副腎腺腫が約80%、過形成は約8%であり、多くの症例で外科的手術が可能です。治療成績は明らかに手術治療の方がよいことが報告されています。

 

原発性アルドステロン症の最新治療

現在は片側性では手術、両側性では薬物治療が主流となっていますが、施設によっては両側性でも手術を行っているところもあります。このとき行われるのが「腹腔鏡下副腎部分切除術」です。標準的な手術は副腎摘出術であり、副腎をまるごと取るという方法をとっています。

副腎部分切除術では、1cm大の副腎の中のどこに病変があるかを見つけ出し、その部分だけを切除する方法です。検査では、副腎近くの血管にカテーテルと呼ばれる管を挿入して静脈の採血を行い、ホルモン量が変化している部分を探し出します。検査の精度があがり、小さい病変でも正確に判別できるようになれば、両側性の場合でも手術が選択できる機会が増えると考えられます。薬物療法では薬を飲み続ける必要があり、副作用も少なくありません。特に妊娠中の服薬は赤ちゃんに影響を及ぼす可能性もあります。副腎部分切除術を行っている施設は年々増加しており、いずれ標準的な治療法になると考えられます。

 

 

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