あなたの1日の喫煙本数×喫煙年数はいくつ?喫煙指数から肺がんのリスクを知っておこう

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[投稿日] '16/09/12 [最終更新日] '18/05/21 1,444views
あなたの1日の喫煙本数×喫煙年数はいくつ?喫煙指数から肺がんのリスクを知っておこう

肺がんの概要

肺は人間にとって非常に重要な臓器のひとつです。肺から酸素を取り込むと同時に体内で発生した二酸化炭素を体外に排出する役目があり、肺が機能しなくなると人は呼吸困難に陥り、すぐに心停止・脳の血流停止を起こし死に至ります。

そのような重要な臓器である肺・気管・肺胞・気管支などの部位が、がんに侵された状態を「肺がん」と呼びます。最近の統計調査では肺がんの死亡者数は男女合計で死亡者第1位と、日本人が最も悩むがんのひとつです。

毎年、8万人近くの方が亡くなる肺がんですが、特に男性の年齢別死亡者数はここ数年に関しては横ばいですが、1960年代後半から非常に多くなってきました*1

 

肺がんの症状

肺がんの主な症状はなかなか治らない咳や痰・胸の痛みや血痰(血液が混じった痰)、ゼーゼーという呼吸音などです。

しかし、肺がん独特の症状とは診断できないので、肺がんに患っているとは気づかないことも多いようです。肺がんは他の臓器に比べて比較的進行が早い性質のがんであり、肺の周りにリンパ節がたくさん存在することなどから、がん細胞が血流やリンパ管を通じて全身に転移するリスクが高いのが特徴です。

 

肺がん

 

肺がんの検査

特に40代など若い年代で肺がんにかかると、がん細胞の増殖スピードも速く、早期発見が非常に重要になってきます。しかし、自治体で行っている「肺がん検診」や会社で行う「健康診断」のような単純レントゲン検査で早期に発見することはなかなか難しくあり、ある程度進んでから見つかることの方が多いでしょう。精密に肺を検査するためには、CT検査(胸部を輪切りにして観察できる検査)があり、これは人間ドックなどで受けられますが、待ち時間もあり、料金も高く受けるハードルが少し高いです。

また、レントゲン、CT検査のような画像診断で異常がみられた場合、細胞を採取してがん細胞が含まれるかどうかを調べる病理診断を行います。病理診断には喀痰の中のがん細胞を確認する「喀痰細胞診検査」や気管支を経由して器具を挿入し細胞を採取する「気管支鏡検査」、体の表面から針を刺して細胞を採取する「穿刺肺生検」などの方法があります。これら複数の検査を行って医師は「肺がん」と診断します。

 

肺がんの原因

肺がんに限らずがん細胞は、長い年月をかけて小さな細胞から数ミリ単位まで成長します。臓器や年代によっても変わりますが、1cm程度の大きさになるまで10〜20年かかるといわれています。しかし、そこから数年で進行がんへと大きく成長してしまいます。これが「がん」の特徴です。初期で発見されれば、ほとんどの場合5年後の生存率は100%に近いですが、大きくなっていくにつれ治療方法が限られていきます。

肺がんの発生に影響する要因は複数考えられますが、一番大きな要因は長期間に及ぶ「喫煙」と考えられています。タバコの煙には数百〜数千種類以上の有害物質が含まれており、正常な細胞ががん細胞に変異してしまうのを助長することが大きな原因と考えられています。

タバコの有害物質によって傷ついた肺は禁煙により、元どおり喫煙前の状態とは言わずとも、改善されます。このような有害なタバコの害から健康を守るため、厚生労働省は2006年から禁煙を支援する「禁煙外来」を保険診療として認めてきました。その効果か近年、男女ともに喫煙率は下がってきています*2

1日の喫煙本数と喫煙年数を乗じた値を「喫煙指数(Brinkman指数)」といい、肺がんの罹患しやすさを示す指標のひとつとして使われます。

喫煙指数 = 1日の喫煙本数 × 喫煙年数

例えば20年間、1日10本(1/2箱程度)のタバコを吸っている40歳の方は喫煙指数200以上となります。

喫煙者が肺がんになるリスクは非喫煙者に比べ4.2〜4.5倍と言われますが、この喫煙指数が高いほど肺がんになるリスクが高くなると言われます。肺がんの中でも喫煙の影響が大きいと言われる扁平上皮癌・小細胞癌と呼ばれるタイプでは喫煙指数が400以下の喫煙者が3.5倍、非喫煙者より肺がんのリスクが高いとされるのに対して、喫煙指数が400以上の場合、13.4〜15.9倍となるとされています*3

もちろん、肺がんはすべて喫煙によるものというわけではありません。大気汚染や粉じん・アスベストなどの有害物質を長期間吸い続けること、気づかない間の受動喫煙なども大きなリスクとしてあげられます。

タバコ 肺がん 呼吸器内科

タバコ 肺がん 呼吸器内科

肺がんの治療法

肺がんの進行状況は「ステージ」という指標で表され「ステージ1」~「ステージ4」の4段階で診断されます。早期発見の目安である「ステージ1」・「ステージ2」であれば、外科手術で「がん」に侵された患部を切除することで完治が期待できる場合もあります。しかし、がん細胞が肺の中に点在していたり、他の臓器へと進行していた場合は「外科手術」では成功率が低いと判断され、「化学療法」や「放射線治療」を組み合わせた治療を行うことが多いです。

外科手術

がん細胞を切除することで治癒を目指します。しかし、胸部に大きくメスを入れることで手術後の患者さんの負担は大きい上、すべて切除できるかどうかは難しい問題です。手術が可能かどうかについては、がんの進行度以外にも、手術前の全身状態が大きく影響します。特に呼吸機能は切除範囲にも大きく影響するため、十分な禁煙期間を設けることが大切です。また、リンパ節にがん細胞が転移している場合など、遠隔転移の可能性を考慮して術後に化学療法を併用する場合もあります。

化学療法

いわゆる「抗がん剤」でがん細胞を死滅させる目的で行われる治療法です。全身に点在したがん細胞などを治療する場合では、非常に優れた方法です。また、化学療法や放射線治療などでがん細胞を小さくした上で治癒を目指した外科手術を行う場合もあります。

抗がん剤治療には使われる治療薬の種類によって「吐き気」「食欲不振」「全身の倦怠感」「脱毛」などの副作用を伴う場合もあります。これらの症状は、一般の方でもかなり広く知られていると思います。ところが、このようなネガティブなイメージもある化学療法も製薬会社と大学病院の研究開発の努力によって、副作用の少ない抗がん剤や症状ごとの対処法も出てきています。

抗がん剤には上記のような副作用以外にも、患者さんの体質によって治療効果が上がったり、逆に効果が十分発揮されないなど、投与しなければわからないという面もあわせ持っています。

近年では働きながら治療を行う患者さんも多く、厚生労働省も企業などの事業主に対して、就業とがん治療の両立を積極的に支援するよう協力を求めています。大都市では、がん治療のために仕事を休まなくても良いように、平日でも夜遅くまで抗がん剤治療を受けられる体制を整えた医療機関も増えてきているようです。

放射線療法

上記の化学療法と同時、あるいは単独で行われる治療方法です。化学療法は全身に効果がある治療法に対し、放射線治療は「ピンポイント」で治療が行える特徴があります。治療法の選択は部位やがんのタイプ、進行度(ステージ)によって異なります。放射線治療は、細胞の死滅効果の高い放射線(エックス線)の性質を利用して、がん細胞に直接照射し死滅させる治療方法です。デメリットとして高エネルギーのエックス線を照射するため、正常な細胞にもダメージを与えてしまうリスクもあります。しかし最近では、技術の発達によりがん細胞により集中して照射できる医療機器も登場してきており、治療技術も格段に向上してきました。

肺がん

肺がん

肺がんの最新治療

肺がんに限らず、医療の発達とともに、がんの治療薬には目を見張るものがあります。

サイバーナイフ

自由に動く放射線治療装置が患者さんの体の周りを動き、複数の角度から腫瘍に放射線を集中させる治療法です。放射線を当てる方向を細かく調整しながら照射することで正常な組織へのダメージを抑えた治療が可能です。これまで、特に腫瘍が小さい場合、呼吸や心臓の拍動による微妙な臓器の移動を感知し、正常な細胞まで照射しないように座標を微修正することは不可能でした。しかし、ロケット追尾システムの技術などを医療転用することで機器が微妙な動きを感知し、正確にがん細胞の座標を計算、照射することを可能にした画期的な放射線治療装置です。

血管新生阻害剤

がん細胞は増殖するためにたくさんの栄養を必要とします。そのため、栄養や酸素を取り込むための新しい血管(新生血管)を張り巡らせる特徴があります。その新生血管に作用して、増殖を抑制する働きをすることで抗腫瘍効果を示すと考えられています。

分子標的薬

がん細胞の表面にあるがん特有のたんぱく質に反応する「マーカー」を探し出し、分子レベルでがん細胞を特異的に攻撃する薬剤として注目されています。新生血管阻害剤との併用することで相乗効果が期待できる治療法のひとつです。

免疫チェックポイント阻害薬

人間が備え持っている「免疫細胞」の働きを活性化させる薬剤が「免疫チェックポイント阻害薬」です。がん細胞などの異物を排除する「T細胞」には攻撃する「アクセル」と攻撃をやめる「ブレーキ」の役割分担があることがわかってきました。そこで「免疫チェックポイント阻害薬」を使用することによってブレーキのかけ具合を調整し、「アクセル」の時間を長くするよう働きかける部類の薬剤が「免疫チェックポイント阻害薬」です。自己免疫力に働きかけるため、ほとんど副作用はないとされています。しかし、新しい薬剤であり、まだ金額が非常に高いこともあり、現段階では適応となる方は限定的でないかと推測されます。

今後も、このような低襲性(患者さんの負担が少ないこと)の治療方法が開発される可能性は非常に高いと考えてよさそうです。現在でも、大学病院はじめ医療機関によって多くの薬剤の「治験」が行われており、いずれ分子レベルでの治療がこれからの流れになるでしょう。

 

*1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

*2 日本専売公社、日本たばこ産業株式会社による調査

*3 国立がん研究センター「たばこと肺がんとの関係について」

 

 

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