メラノーマ(皮膚がん)の新しい治療薬は年間4,000万円もかかる!?

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[投稿日] '16/08/31 [最終更新日] '18/03/18 2,087views
メラノーマ(皮膚がん)の新しい治療薬は年間4,000万円もかかる!?

メラノーマ/皮膚がんの概要

皮膚がんとは、皮膚にできる「がん」のことです。皮膚は外側から、表皮・真皮・皮下組織と分かれており、表皮はさらに外側から、角層・顆粒層・有棘層・基底層に分かれています。皮膚がんで最も多いのは基底層から発生する「基底層がん」で、次いで有棘層から発生する「有棘層がん」となっています。

新たに皮膚がんにかかる人は年間1万人~1万5千人程度といわれており、10万人に1~5人程度と推測されています。男性にやや多いですが男女差はあまりなく、50歳を越えると増加しはじめ、70代が全体の約45%を占めており、高齢者に多いがんといわれています。

発生頻度は高くありませんが、悪性度が高く死亡率も高い「メラノーマ(悪性黒色腫)」も皮膚がんの種類の一つです。メラノーマは基底層などに存在するメラニン色素をつくるメラノサイトという細胞やホクロの細胞から発生すると考えられており、ホクロのがんと呼ばれることもあります。ここでは主にメラノーマに焦点を当ててご紹介します。

 

メラノーマの症状

メラノーマは大きく以下の4つの病型に分類されますが、明確に分けられないこともあります。

①表在拡大型黒色腫

ホクロの細胞から発生することが多いと考えられ、全身のどこにでもできます。特に白人の人に多いですが、近年では日本人にも増加しています。わずかに盛り上がったシミが見られ、患部と他の部位の境界がはっきりしておらず、濃淡の混ざったまだら状の色をしています。がんの成長は比較的ゆるやかですが、治癒する確率はあまり高くありません。

②悪性黒子型黒色腫

顔面や首、手の甲などにできることが多く、患部と他の部位の境界ははっきりしていません。まだらな黒褐色で平らなシミができます。がんの成長はゆっくりで、治癒する確率も高いといわれています。

③末端黒子型黒色腫

メラノーマの中で日本人に最も多い病型です。足の裏や手のひら、手足の爪に発生することが多く、はじめのうちは褐色や黒褐色のシミができ、一部が濃くなったりまだらになったりします。進行すると盛り上がってきたり、えぐれてきたりすることもあります。爪の場合は、縦に黒い筋ができ、やがて爪全体に広がって爪が割れることがあります。

④結節性黒色腫

全身のどこにでも発生し、はじめから急速に成長することが多いです。はじめから硬いしこりや盛り上がりが見られ、褐色や黒褐色からだんだんと濃い黒色となったり、濃淡が混じるような色が見られます。早期に深部まで進行したり、他の部位に転移することが多い病型です。

 

メラノーマの早期段階の症状

メラノーマには早期段階の症状(前駆症状)があり、以下の5つの特徴が早期発見に役立つといわれています。

①形が左右非対称である
②辺縁がギザギザして整っていない、色のにじみだしがある
③色が均一でなく、色むらがある
④直径が6mm以上である
⑤大きさが拡大する、色や形、症状が変化する

これらの特徴が見られればメラノーマの可能性が高いといわれており、気になったときには早めに医療機関を受診するようにしましょう。

 

メラノーマ/皮膚がんの原因

皮膚がんのはっきりとした原因はわかっていませんが、様々な要因が考えられています。最大の要因は紫外線の影響といわれており、紫外線エネルギーによって細胞の遺伝子が傷つけられることでがんの発生が促されると考えられています。そのため、特に白人種に多く発症することが知られています。

その他の要因としては、放射線やウイルス感染、喫煙、ヒ素などの化学物質なども関与するといわれています。また、ヤケド・骨髄炎などの傷痕や、慢性的な皮膚疾患が長引いた結果、皮膚がんが生じることもありますので注意が必要です。メラノーマは、足の裏や爪などいつも刺激を受けている場所にできやすいことから、外からの刺激も関係していると考えられています。

近年はオゾン層の破壊により紫外線量が増えていることが要因となり、皮膚がん患者数も増加していると考えられています。そのため、紫外線を必要以上に浴びないよう日頃から注意することが大切です。また、ホクロや傷痕などを中心とした皮膚の観察を習慣づけ、異常を感じたらすぐに皮膚科を受診することで早期発見に繋げることができます。

 

メラノーマ 皮膚科

メラノーマ/皮膚がんの治療法

メラノーマの分類

メラノーマは病期(ステージ)に基づいて治療法が決められますので、まずはメラノーマの病期分類をご紹介します。メラノーマは大きくⅠ~Ⅳ期の4つの病期に分類され、さらにⅠ期がⅠA期とⅠB期に、Ⅱ期がⅡA~ⅡC期に分けられます。全部で7つのステージに分類されているということです。

  • ⅠA期 がんは原発巣のみで、がんの厚さは1mm以下、潰瘍(皮膚のえぐれ)がない
  • ⅠB期 がんは原発巣のみで、がんの厚さが1mm以下で潰瘍がある、または、1mm~2mm以下で潰瘍がない
  • ⅡA期 がんは原発巣のみで、がんの厚さが1mm~2mm以下で潰瘍がある、または、2mm~4mm以下で潰瘍がない
  • ⅡB期 がんは原発巣のみで、がんの厚さが2mm~4mm以下で潰瘍がある、または、4mm以上で潰瘍がない
  • ⅡC期 がんは原発巣のみで、がんの厚さが4mm以上で、潰瘍がある
  • Ⅲ期 1個以上のリンパ節に転移がある、または、2~3個のリンパ節転移があるかリンパ節転移を伴わない皮膚や皮下の転移がある、または、4個以上のリンパ節転移があるかリンパ節転移を伴う皮膚や皮下の転移がある
  • Ⅳ期 別の臓器へ転移している

 

メラノーマの治療法

メラノーマの治療法は大きく、手術療法・化学療法・放射線療法・インターフェロン療法・免疫療法に分けられます。Ⅰ期~Ⅳ期でこれらの治療法が併用されますが、かなり進行したⅣ期では特に、手術・化学療法・放射線療法など、さまざまな手段を組み合わせた治療が行われます。それでも治療が功を奏しないこともあり、その場合は病気そのものを治すためではなく、苦痛を取り除くための緩和治療が行われます。

手術療法

メラノーマでは、手術によってがんを取り除くことが優先され、Ⅰ期~Ⅳ期の広い病期で手術療法が用いられます。目に見えない部分にまで広がっていることがあるため、目に見える部位のみを切除しただけでは周囲に再発する危険性があります。そのため、最初の手術で目に見える部位の縁から1~3cm離して広範囲に切除するのが原則となっています。進行すれば原発巣の周囲に皮膚転移が数か所発生することがあり、その場合はさらに広く切除します。離隔のリンパ節も郭清(切除)することがありますが、手足のむくみやしびれが残ることがあるため、基本的には手術中にリンパ節に転移があるかどうかを検査し、転移がなければ切除は行いません。

手術による皮膚の傷が大きくて縫い寄せるのが困難な場合は自分の皮膚の一部を移植する「植皮手術」が行われることもあります。皮膚を採る部位は、脇腹や太ももの足の付け根、耳の後ろ、太ももの前面や後面、お尻などです。皮膚科の名医に加え、形成外科の名医が必要となることもあります。

化学療法

手術療法と組み合わせてⅠ~Ⅳ期の広い病期で行われます。手術によって取り切れなかった少数のがん細胞を攻撃し、再発や転移を予防したり、内臓やリンパ節などに転移した病巣を消滅させるために抗がん剤を点滴で投与します。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーのX線や電子線を照射してがん細胞を攻撃することで、がんを小さくする効果があります。しかし、メラノーマでは一般的な放射線療法はあまり効果が期待できないといわれており、速中性子線や重粒子線と呼ばれる特別な放射線の照射が効果的といわれていますが、これらはごく限られた施設でしか行われていません。症状がある程度進んだⅢ~Ⅳ期で用いられることがあります。

インターフェロン療法

インターフェロンとは、体内で異物に反応して細胞が分泌するタンパク質のことで、がんなどの細胞増殖を抑制する働きがあります。皮膚転移を抑制する目的で、このインターフェロン製剤が用いられます。メラノーマでは、主にⅠ~Ⅲ期の手術後に、再発予防のためにインターフェロンを切除部位周辺に注射することがあります。また、皮膚転移や皮下転移に直接注射を打つ方法も行われています。

免疫療法

自分の免疫力を高めることによる治療を免疫療法といいますが、メラノーマではがんの中でもその効果が期待できると考えられています。ただし、現在のところ保険適用の治療法はありません。患者さん自身の細胞(免疫を担当するリンパ球)を体外に取り出し、それを培養・増殖させて体内に戻す、養子免疫療法などを行っている施設もごく一部あるようです。Ⅰ~Ⅳ期の広い病期で用いられます。

 

メラノーマ/皮膚がんの最新治療

メラノーマの治療においては、近年新たな治療薬が承認されてきており、今までの治療が功を奏しない病期のメラノーマにおいても、その効果に期待が寄せられています。

まず、2014年に承認された2種類の治療薬です。1つ目はオプジーボ(一般名:ニボルマブ)という抗がん剤で、主に3週間間隔で点滴投与されるもので、がんを異物と認識し、除去する免疫反応を促す作用が期待されています。このオプジーボは日本発の免疫療法薬で、2014年9月に発売されました。患者が年間約500人と少ないので、100[mg]で約70万円という非常に高価な値段が承認されました。それから、2015年12月から肺がんも保険適用となったことで、対象患者が数万人に拡大しました。この薬を一年間投与する場合、金額は約3,000万円~4,000万円になるとの試算もあります。この高額な薬剤費が、日本の保険財政に与える影響が問題視されており、薬価の改定を速やかに行うべきだという議論をよんでいます。

2つ目はゼルボラフ(一般名:ベムラフェニブ)という薬で、主に1日2回服用する飲み薬で、分子標的薬の一つです。分子標的薬とは、がん細胞の増殖・浸潤・転移に関わる分子を標的とする薬で、がん細胞の増殖を抑制してがんの進行を阻害することによって、原発巣の進行と、がんの転移を抑制することを目的に開発された薬のことです。メラノーマ患者では約20~30%でBRAFという細胞増殖を促進するタンパク質の変異がみられていますが、ゼルボラフはこのBRAFの働きを阻害する作用があり、その効果が期待されています。

さらに2016年に入り、新たに2種類の治療薬が承認されました。1つ目はタフィンラー(一般名:ダブラフェニブメシル酸塩)で、ゼルボラフと同様、変異を起こしたBRAFの働きを阻害する作用があります。2つ目はメキニスト(一般名:トラメチニブ)です。BRAFが変異することでMEKというタンパク質の働きが活性化され、がん細胞の増殖や転移を促進するシグナルが伝達されるため、そのMEKの活性化を抑える働きをする薬です。タフィンラーと併用することにより、その効果が高まると期待されています。タフィンラー・メキニストと、免疫療法の3つを併用する治療法も現在研究が進められています。

 

 

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