てんかんになると脳波検査でスパイクの形をした特殊脳波が現れます

tag / / / / / / / /
[投稿日] '16/08/15 [最終更新日] '18/03/18 5,556views
てんかんになると脳波検査でスパイクの形をした特殊脳波が現れます

てんかんは慢性的な脳の病気

人間の大脳には、100億個を超える数多くの神経細胞(ニューロン)がネットワークを形成していることをご存じですか?視覚や聴覚などの感覚も運動も、また、話したり、考えたりする機能も神経細胞内に電気が流れ、情報を伝え合っているおかげといわれています。神経細胞内では、微弱な電気信号を規則的に送って情報のやりとりをするのが一般的です。しかし、てんかんになると神経細胞に突然、過剰な電気が流れ(電気発射)、多彩な症状を示すてんかん発作を繰り返すようになります。

てんかんは18歳以下に多い

てんかんにかかっている人は1,000人に5~8人ほどです。てんかんは赤ちゃんからお年寄りまで誰でも発症する可能性がありますが、18歳以下のお子さんがおよそ8割を占めています。

また、てんかん発作にはいくつものタイプがあり、全身のけいれんや意識がなくなるタイプもあれば、身体の一部だけに発作が現れるものなど症状はさまざまです。てんかん発作は突然、起こり、繰り返すのが特徴ですが、ほとんどの症状が短時間(数十秒~数分以内)で消失するという特徴もあります。

大部分のてんかん患者さんは薬で発作を抑えられる

治療では「抗てんかん薬」と呼ばれる薬を使うと、およそ7割の人は発作が起こらなくなります。しかし、治療をせずにいるといつまでも発作を繰り返し、日常生活に支障を来すことも少なくありません。

さらに、てんかんの中には薬を飲んでも発作を抑えられない「難治性てんかん」というタイプが約2割を占めていますが、頭部の手術によって改善が期待できることもあります。

 

てんかんには「症候性てんかん」と「突発性てんかん」があります

原因によるてんかんの分類

脳に何らかの障害があって起こるものは「症候性てんかん」と呼ばれ、脳腫瘍や脳出血、頭部の外傷などが原因となることが多いです。また、原因不明のてんかんは「特発性てんかん」といい、生まれつき脳に電気発射が起こりやすいといった素因が関連しているといわれています。

発作によるてんかんの分類

てんかん発作では多彩な症状が現れますが、異常な電気的興奮の起こり方で大別すると二つに分類できます。一つは脳の一部分に興奮が起きて、症状も身体の一部に出る「部分発作」、もう一つは初めから脳全体、あるいは脳の大部分に興奮が起こり全身けいれんなどが現れる「全般発作」です。

部分発作

部分発作には単純部分発作や複雑部分発作があり、単純部分発作は電気的な興奮が脳のどこに起きたかによって手足のつっぱりや光が見えるなどの症状に分かれます。ただし、発作のときに意識がなくなることはありません。複雑部分発作は徐々に意識がなくなり、フラフラ歩いたり、動作が急に止まってぼんやりしたり、口をもぐもぐさせるなどの症状が現れる発作です。

全般発作

一方、全般発作は強直間代(きょうちょくかんたい)発作をはじめ、数秒~数十秒間、意識がなくなる欠神発作や身体の力が一瞬で抜けてしまう脱力発作などに分けることができます。

強直間代発作はてんかん発作でもっとも多いといわれるもので急に大きな声を上げて倒れてしまい、意識の消失とともに手足を伸ばして身体の硬直が起こります(強直発作)。その後、手足をガクガクさせるけいれんに変わり(間代発作)、発作後は30分~1時間ほど眠ってしまうこともありますが、目が覚めると元の生活に戻れる人が多いです。

強直間代発作の発作自体は1分程度ですが、倒れたときやけいれんの間にどこかに身体をぶつけて負傷することも少なくありません。さらに、てんかん発作はたとえ短い時間であっても脳波を調べると発作から2週間以上経過しても脳にダメージが残っているといわれていますので、発作の抑制は大切なことです。

 

危険!発作を繰り返し意識がない状態の続く「てんかん重積状態」

てんかん発作が繰り返し起こったり、長い時間、発作が続いたりすると神経細胞内で過剰な電気的興奮が続き、脳の損傷などが起こりやすいと考えられます。そのため、てんかん発作がある程度、長く続く、あるいは短い発作を何度も繰り返し、その間、意識がないままの危険な状態を「てんかん重積状態」と呼んで区別しています。

発作の持続時間は、従来は「30分以上」とするのが一般的でした。これは、30~45分以上になると脳にダメージが起こることが動物実験で確認されたためです。しかし、最近では5~10分ほどの短い発作も生命に危険が及ぶとして、てんかん重積状態に含めるようになりました。

脳の二次的な障害を防ぐだけでなく、生命の危険を防ぐためにも病院できちんと診てもらいましょう。

 

てんかん患者さんが運転免許を取得するときは医師に相談を

てんかんの患者さんは、車の運転が一切できないという訳ではありません。てんかん発作がある一定の期間、起きていない、薬をきちんと飲んでいるなどの条件を満たしている場合には運転免許を取得できることもあります。

重要なことは、運転免許の取得を考えているときに主治医に必ず相談すること、また、運転免許の取得だけでなく、更新の手続きをするときにも自分の病状を正しく伝えて更新することです。特に、車の運転が主な仕事の場合には条件がさらに厳しくなります。てんかんの治療で服薬中の人は、運転を主とするような仕事に就くことや大型免許などの取得も控えましょう。

てんかんは必要な治療を受けずにいると発作を繰り返し、車の運転に限らず日常生活や社会生活の制約が大きくなる可能性があります。しかし、定期的に病院に通い、適切な治療を受けることで発作を抑えられ、てんかんが完治する人もいますので早めの受診を心がけましょう。

てんかん 神経内科

てんかんの検査

脳波検査

てんかんの診断だけでなく、治療の効果などを知る上でも脳波検査は不可欠です。脳の神経細胞は目を開けたり、閉じたりといったわずかな動きでも電気的な変化が起こります。脳波検査は、頭皮に電極を取り付けてこの電気的な活動を調べて脳の活動状態を知る検査です。

てんかんの場合、「棘波(スパイク)」と呼ばれる尖った形をした異常な脳波が現れることがあり、睡眠中に出現することが多いため、眠っているときと目が覚めた状態の両方を調べます。そのため、検査中に眠れるように、検査の前日は睡眠を短時間にして寝不足気味にしておくなど工夫が必要です。

それでも眠れない場合には睡眠薬を使用することもあります。睡眠薬を飲むと検査が終わった後にふらつきなどの副作用が現れることがあるため、外来で脳波検査を行う場合は患者さん自身が車を運転して病院に行くのは控えましょう。

また、外来の検査中にてんかん発作が起こるとは限りません。発作時の脳波を調べるには、入院して脳波検査とビデオ撮影を同時に行う「記録ビデオ脳波モニタリング」という検査を数日間にわたり、連続して行うことがあります。

頭部のMRI検査、CTスキャン

脳腫瘍や頭部外傷によっててんかん発作が起こることがあります。磁気共鳴画像装置と呼ばれるMRI検査は放射線を使うことなく、鮮明な画像を得られる検査です。脳の形態異常や腫瘍の有無などを調べる上でMRI検査は有用ですが、検査にはやや時間がかかります。そのため、動かずにじっとしているのが難しいなど短時間で検査をしたい場合には、CTスキャンというX線を利用した画像検査の方がよいこともあります。

核医学検査

核医学検査は「放射性医薬品」と呼ばれる放射性物質を含む医薬品を注射し、身体から出る微量の放射線を手がかりとして臓器や体内の組織などを調べたり、血液や尿を採ってホルモン量などを測定したりします。

核医学検査も、MRI検査やCTスキャンと同じように画像診断の一つです。しかし、核医学検査のSPECT(スペクト)という検査を行うと、MRI検査では把握が難しい脳の血流状態などを知ることができ、てんかんを起こしている部分(てんかん病巣)を探るときにも役立ちます。

血液検査、尿検査

血液や尿を調べることは栄養状態などの全身の状態のほかに、てんかん発作に似た症状を示す病気を区別する上でも重要です。また、てんかんの治療薬として抗てんかん薬を服用しているときは血中濃度を測定して服薬量を調整することも必要なため、定期的に血液検査を行います。

 

てんかんの治療

てんかんの場合、てんかん発作を抑えることを目的として治療を行います。また、薬によって抑えるだけでなく、発作の誘因となるものを日常生活の中でできるだけ回避することも重要です。誘因としては、たとえば睡眠不足や光の刺激などが考えられます。

薬物療法

抗てんかん薬は脳の異常な電気的興奮を抑えて、てんかん発作が起こらないようにする薬です。抗てんかん薬は10種類以上ありますが、その中からてんかんのタイプや出現している症状などによって使い分けています。

てんかんの治療に関するガイドラインでは、脳の一部から発作が始まる「部分発作」にはカルバマゼピン、脳全体に発作が起こる「全般発作」はバルプロ酸から使い始めるとよいとしています。

抗てんかん薬の副作用としては飲み始めの時期に眠くなったり、ふらついたりすることがありますが、服薬を続けている中で徐々に軽減するのが一般的です。また、長期間、飲んでいると肝臓や腎臓の機能障害、貧血などの血液の異常、さらに、多毛、あるいは脱毛などのトラブルが起こることもあります。

・抗てんかん薬の継続の必要性

子どもの時期にてんかんを発症した人でも、適切な治療を受ければおよそ7~8割の人は発作を抑えられるといわれています。このような治療効果を得るには、医師から中止の判断がでるまで服薬を継続することが重要です。抗てんかん薬を急に止めると再発しやすくなり、ときに大きな発作につながることもあります。

薬を止める時期については明確な基準がありませんが、発作がなくなって2~4年以上経過している、また、2年以上、脳波異常がないことなどが一つの目安になるようです。なお、服薬を中止して3年以内は再発しやすいという指摘もあります。

再発を防ぐには薬は徐々に減量し、薬を止めた後も定期的に通院し、検査を受けて発作のない状態を保ちましょう。 いつまで飲み続けるのかといった不安や服薬について何か気になることがある場合は主治医に相談することをおすすめします。

・てんかんの治療薬と妊娠

妊娠の初期に抗てんかん薬を多量に、あるいは複数の抗てんかん薬を飲んでいる人は赤ちゃんの奇形率が2倍程度、高くなるといわれています。しかし、妊娠前から薬の量を減らす、あるいは複数の薬を1種類にするなど薬を調整すれば、奇形の割合は必ずしも高くならないといった指摘もあります。

お母さんも赤ちゃんも、より健康的な状態で出産を迎えるには妊娠してからではなく、妊娠する前に医師に相談しましょう。

外科療法

・切除術

てんかん発作を起こしている脳の部位が手術で切除できる場合には、切除術を行います。また、専門医による薬物治療を2年以上続けても発作を抑えられない難治性てんかんも、手術による症状の改善が報告されるようになりました。中でも記憶に関連する「海馬」という部位にてんかんの原因がある「側頭葉てんかん」は手術の効果が高く、8~9割ほどは発作が起こらなくなるといわれています。

・迷走神経刺激術

小児てんかんを含め難治性てんかんを対象に、てんかん発作を少なくすることを目的に行われる治療で、体内に5cmほどの医療器具を埋め込んで、迷走神経に弱い電気で刺激を与えます。日本では2010年に治療法として認可された治療法です。

首(頸部)を通っている迷走神経は脳の深いところに作用する神経で、電気刺激をすることで半数ほどの人がてんかん発作を半分程度に少なくできるとされています。ただし、この手術ができるのは必要な研修を修めた専門医だけですので、行える病院は限られてしまいます。

 

てんかんは、適切な治療を行うことで発作を少なくできることが報告されています。定期的に病院に通うのは大変な面もありますが、発作が起こらない生活をおくるには治療を継続しましょう。

下記のコラムでは、てんかんの中でも、子供に発症する「小児てんかん」について紹介しています。

 

 

名医検索サイトクリンタル
名医検索サイトクリンタルでは日本全国の約30万人の医師から厳選された名医だけを掲載しております。手術数や外来の待ち時間など、受診する名医を決めるために必要な詳細情報を掲載しておりますので、受診先を検討される際の参考にしてください。

「どの名医に治療をお願いすればよいのかわからない!」とお悩みの方には、クリンタルの名医紹介サービスをお勧めしています。クリンタルが独自に厳選した「3,500人の有数の専門医」「35,000人の街の名医」の中から、あなたの病気/症状やご希望を考慮して、クリンタルの医師が最適な名医をご紹介します

クリンタルの名医紹介サービス