急性中耳炎がすすむと鼓膜に穴が開いた慢性中耳炎になってしまいます!

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[投稿日] '16/08/08 [最終更新日] '18/05/30 420views
急性中耳炎がすすむと鼓膜に穴が開いた慢性中耳炎になってしまいます!

慢性中耳炎の概要

中耳とは

耳には、鼓膜とよばれる空気の振動(=音)をとらえる膜があります。空気の振動がこの膜に当たることでで私たちは”音”を感じます。

耳の内側は、この鼓膜を境界として外側を外耳、鼓膜より内側の部分を中耳と呼びます。さらに中耳の奥には振動を音として脳に伝える蝸牛(かぎゅう)と体の傾きや揺れといった平衡感覚を感じ取る三半規管などがある内耳と呼ばれる部分があります。

中耳にはツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨という3つのとても小さな骨(耳小骨)があります。太鼓の様にピンと張った鼓膜に空気の振動が伝わると、その振動を耳小骨が増幅し内耳に伝えることで音が聞こえる様になっています。

慢性中耳炎とは

中耳炎とは、鼓膜の内側の中耳が細菌やウイルスによって炎症を起こしてしまう病気です。急性中耳炎は子供に多い疾患で、海外では生後3歳までに8割の子供が経験するとされています*1。急性中耳炎は幼少時に繰り返したり、治療が不十分なまま長引かせることで滲出性中耳炎へと進展していきます。その結果、鼓膜に穴(穿孔)が生じることで慢性的に炎症が持続する状態が慢性中耳炎となります。

慢性中耳炎では鼓膜に穴が開いてしまっていることから中耳が外気にさらされてしまいます。そのため、風邪などで体調を崩した際やプールなどで耳に水が入った際に炎症を繰り返すことになります。炎症が起きている時期には中耳に膿がたまり鼓膜に開いた穴を通して出てくることで耳だれが起こります。

炎症が落ち着いている時でも鼓膜に穴が開いていることによって音が伝わりづらくなり、難聴(伝音性難聴)を伴います。炎症が長びくと中耳の粘膜に肥厚や石灰化がおこり、さらには中耳の奥にある内耳の神経にダメージが及ぶことで感音性難聴へと進行してしまいます。

 

慢性中耳炎の検査と診断

検査は、まず鼓膜の状態を確認することから行ないます。レントゲンやCTをとっても鼓膜は見えませんので、拡大鏡や内視鏡を使って肉眼的に観察します。これにより、鼓膜に開いた穴のサイズやその位置、腫れていないかなどを確認します。鼓膜の観察から慢性中耳炎の状態や今まで炎症をどれくらい繰り返していたかがわかります。

耳の聞こえ具合については聴力検査を行い、鼓膜に穴が開いたことによる難聴(伝音性難聴)なのか、内耳の神経の部分まで影響が及んだ難聴(感音性難聴)なのかを評価します。

鼓膜を一時的に閉鎖することで難聴が改善するかどうかをみるパッチテストやCTの撮影によって中耳・内耳への炎症の進行具合の評価を行う場合もあります。

耳だれがある場合は膿を採取して検査することで原因となっている細菌の種類や抗菌薬の効き具合(感受性)を調べます。

 

慢性中耳炎の治療

慢性中耳炎の治療方法は、手術をしない保存的療法と、手術を行なう外科的治療とがあります。

慢性中耳炎の保存的療法

炎症が悪化し、耳だれがある場合、先ずは抗菌薬を使い炎症を治めます。慢性中耳炎の場合は点耳薬という耳用の液状の塗り薬を使うことが多く、急性中耳炎のように飲み薬や点滴を行うことは稀です。使い方は中耳炎の側の耳が上になる様に横になり、朝夕と1日2回くらい耳の穴にたらします。その後、暫くじっとして薬が広がるのを待ちます。

また、耳鼻咽喉科では器械を用いて耳だれを吸い出したり、専用の薬を使って耳の洗浄を行うこともあります。

慢性中耳炎の外科的治療

鼓膜に開いた穴は、残念ながら薬だけでは治りません。穴が開いた状態のままですと、そこから細菌が侵入して中耳炎を繰り返す原因となり、難聴が進行してしまいますので、鼓膜形成術という手術を行い穴を塞ぐ必要があります。時期が適切でそれほど大きくない穴であれば、90%以上の確率で穴を閉じることが出来、耳の聞こえ具合の改善が期待できます。手術は一般的には30-45分程度で済み、2-3泊の入院期間となることが多いです。最近では入院せず、日帰りで実施する施設もあります*2

薬を使っていても耳だれが良くならない場合や中耳にある骨(耳小骨)が溶けたり、固まってしまっている場合、鼓室形成術という手術を行います。鼓室形成術で閉鎖が困難な鼓膜の再建や人工の耳小骨の留置など行います。

鼓膜形成術とは異なり、こちらは全身麻酔が必要となることが多いです。病気の経過、中耳の状態にもよりますが、1時間半から2時間半程度の手術が必要となり、入院期間も2-3週間程度はかかります。鼓室形成術は施設の方針や重症度によって手術法も変わるため、手術時間や入院期間も変わります*2

急性中耳炎が慢性中耳炎に進展してしまった場合でも、症状の軽いうちであれば薬や外来の治療で治すことが出来ます。手術が必要な状態になる前に耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

 

*1 小児急性中耳炎診療ガイドライン(2013)

*2 日本耳鼻咽喉科学会「慢性中耳炎:やさしい耳鼻咽喉科講座」

 

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