重症筋無力症は免疫療法、対処療法、手術療法を組み合わせて治療します

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[投稿日] '16/06/11 [最終更新日] '18/03/18 438views
重症筋無力症は免疫療法、対処療法、手術療法を組み合わせて治療します

重症筋無力症の治療法

重症筋無力症の治療は、

  1. アセチルコリン受容体を攻撃する抗アセチルコリン抗体が陽性のケース
  2. チロシンキナーゼ酵素を攻撃する抗マスク抗体が陽性のケース
  3. 抗アセチルコリン抗体と抗マスク抗体の両方とも陰性のケース

と発症のメカニズムに応じて3つに分類し、治療方針を選択します。

主な治療方針には、重症筋無力症のメカニズムの発生を抑える免疫療法と症状を抑えるための対症療法、手術療法があり、これらの療法を病型や病態に応じて組み合わせて治療を行います。治療の中心となっているのは薬物による治療で、新しい薬の開発により薬物療法は年々進歩しています。

免疫療法は、主に「免疫抑制剤」と「副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤」を使用し、これらを併用するケースが多いようです。免疫抑制剤には、免疫細胞の働きを調節しているカルシニューリンという酵素の働きを抑えるカルシニューリン阻害薬(薬剤名:タクロリムス、シクロスポリン)があります。免疫抑制剤が重症筋無力症で使用されるのは、前述したアセチルコリン受容体やチロシンキナーゼ酵素に対する免疫反応(自己抗体の産生)に関わる細胞の増殖や分裂を抑えるためですが、同時に正常な免疫反応も抑えてしまい、副作用として下記のような症状が起こる可能性があります。

  • 骨髄抑制…赤血球や白血球が骨髄で生産されにくくなる
  • 易感染…細菌やウイルスに対する抵抗力が低くなり、風邪やその他の感染症にかかりやすくなる
  • 胃腸障害・肝臓障害…薬剤の毒性によってこれらの臓器の機能を低下させる恐れがある
  • その他…高血圧、高血糖、多毛、脱毛、皮膚湿疹など

ステロイド剤にも免疫抑制効果があります。ステロイドを内服投与する場合や大量のステロイドを短期間に点滴で投与するパルス療法を行う場合など使用方法は様々です。ステロイド剤にも易感染や高血圧、高血糖、中心性肥満(頬や体幹に脂肪が付く)、骨粗鬆症、骨壊死などの副作用があるので長期使用、大量投与は慎重に行われます。

 

対症療法で使用されるのは抗コリンエステラーゼ薬で、筋肉の動きをスムーズにする働きをします。この薬は、神経伝達物質アセチルコリンの分解を抑制し、濃度の高いアセチルコリンが筋肉の受容体に作用するようにする効果があります。

この抗コリンエステラーゼ薬は即効性があり、筋力低下を補う薬として長く使用されてきましたが、多用すると効果が薄れることやクリーゼや循環器系の重い副作用が現れることがあります。

その他にも、人の血液から抽出したグロブリンというタンパク質を注射してアセチルコリン受容体の破壊を抑える「免疫グロブリン療法」、透析で血液中の抗アセチルコリン抗体を取り除く「血液浄化療法」、胸腺腫瘍に対する「胸腺摘出手術」などが組み合わされますが、神経内科の専門医とよく相談して治療を続けることが大切です。

 

重症筋無力症の最新治療

先天性筋無力症のひとつ、神経筋接合部のDOK7遺伝子に生まれつき異常があるDOK7型筋無力症に対する遺伝子治療がいま研究段階にあります。

2014年の報告では、DOK7遺伝子が欠損した筋無力症のマウスに対して神経筋接合部を形成するのに必要なタンパク質を作る遺伝子を注射したところ、神経筋接合部が大きくなり、筋無力症の症状に明らかな改善が見られたこということです。今はまだマウスによる実験段階ですが、さらに研究が進んで一日も早く臨床へ応用されるようになることを願います。

 

 

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