重症筋無力症は全身の筋肉が障害される病気

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[投稿日] '16/06/10 [最終更新日] '18/03/18 1,030views
重症筋無力症は全身の筋肉が障害される病気

重症筋無力症の概要

重症筋無力症は英語でMyasthenia Gravisと書き、略称「MG」として知られている難病です。病名にも示されているように、重症筋無力症は全身の筋肉が障害される病気です。現在日本で約2万人以上の患者がいると推定され、患者数は年々増加しています。約1:2の割合で女性に多く発症し、好発年齢は30‐40代と言われていますが、10歳以下の小児や高齢者にも発症します。

重症筋無力症の主な症状は、筋力の低下です。この病気は骨格筋(体を動かす筋肉)が侵されますが、初期症状では特に目の筋肉に関連した症状を訴えるケースが多いようです。患者の約8割以上に外眼筋(目を動かすのに使われる筋肉)に障害が起こり「複視…物が二重に見える」の症状が現れると言います。また、上眼瞼挙筋(瞼を開ける筋肉)に障害が起こると「眼瞼下垂…瞼が垂れ下がる」の症状が現れます。さらに筋力低下が原因で、運動をした後に非常に疲れやすくなり、一日のうち特に夕方に強い倦怠感を感じるようになります。

重症筋無力症にはいろいろな病型があり、進行しないケース、5‐7年で進行が止まるケース、進行を続けるケースがあります。また、症状が目の筋肉だけにとどまる場合もありますが、約5‐8割の症例で骨格筋の障害が全身に拡大し、腕や腿の筋力低下、呑み込みが悪くなる、しゃべりにくくなる、息苦しいなどの症状が起きると言われています。

重症筋無力症には合併症もあります。患者の約1割で、甲状腺機能異常、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの合併が見られます。また、患者の約6割以上に免疫細胞を作り出す胸腺の肥大が見られ、約2‐3割のケースで胸腺腫(腫瘍)の合併が起こるため、早期に胸部CTや胸部MRIによる検査を行います。さらに約1-3割のケースで、急激に呼吸筋が低下することによる呼吸不全が起き生命に関わるクリーゼ(危険な状態を表す言葉)の合併があります。

 

重症筋無力症の原因

重症筋無力症の病気のメカニズムは大方解明されてきています。重症筋無力症は自己免疫疾患とも言われ、自分の体を細菌やウイルスから守ろうとする免疫機能に異常が生じることが発症に大きく関わっています。

人の身体が動く仕組みは、神経から筋肉に情報を伝達するシステムが関係していますが、重症筋無力症になると神経と筋肉の繋ぎ目(神経筋接合部)にトラブルが生じ必要な情報が伝わらなくなります。この繋ぎ目の筋肉側には、アセチルコリン受容体というタンパク質や筋特異的受容体型チロシンキナーゼと呼ばれる受容体への神経伝達を助ける酵素が存在し、神経からの情報をキャッチし筋肉に伝える働きをしています。しかし、何らかの原因によってこれらのタンパク質や酵素に対する自己抗体(自分の細胞を異物と認識し攻撃する)が作られ、アセチルコリン受容体やチロシンキナーゼ酵素を攻撃し破壊してしまいます。その結果情報の伝達がうまく行われず、筋力低下に関連した様々な症状が現れます。

現在のところ、アセチルコリン受容体やチロシンキナーゼ酵素を攻撃する自己抗体がなぜ作られるのかという原因はまだはっきりと分かっていません。一説には、免疫系に関わる胸腺の異常が関係しているのではないかという意見もありますが、解明はされていないようです。また、これまで説明してきた自己免疫疾患としての重症筋無力症は、遺伝しないというのが現在の見解です。

先天性筋無力症は、自己免疫疾患としての重症筋無力症と発症のメカニズムや治療方法が少し異なります。先天性筋無力症は、染色体異常が遺伝し生まれつき神経筋接合部に形成不全や機能不全があるために、乳児期から重症筋無力症によく似た症状が現れます。

 

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