入院日がかなり先だけど何でだろう…と思われている方へ。医師がその理由をお教えします。

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入院日がかなり先だけど何でだろう…と思われている方へ。医師がその理由をお教えします。

みなさんは入院されたことありますでしょうか?

子供の頃に入院したことはあるみたいだけれどもよく覚えていない、という方は結構いらっしゃるかもしれません。その時にはご両親が入院の手続きを進めてくれたものと思います。

長い人生誰しも必ず一度は入院することがあると思います。今回はそんな時のために、知っておきたい入院にまつわる知識を、医師がお伝えします。

 

そもそも入院になる時とはどんな時でしょう

そもそも病院に行って、外来通院ではなく入院での治療になる理由はなんでしょうか。「〇〇さん入院したみたい」と聞くと、『入院するほど重症なんだ』というイメージが湧くと思います。『軽症の時は通院でいいけど、重症の時には入院が必要なんでしょ』というのはもちろん間違ってはいないのですが、せっかくなので、入院が必要になる理由をさらに細かくみてみましょう。

入院の理由は下記のようなものが主になります。

  1. 原因疾患にかかわらず、呼吸や循環など全身状態のモニター管理が必要な状態
  2. 身体へのダメージの大きい治療や手術が必要で、治療・手術後に経過を見る必要がある状態
  3. 補液や抗生剤などの点滴が、数日にわたり必要な状態
  4. 糖尿病の教育入院(病気や治療法を理解してもらい、血糖値のコントロールの意欲をわかせるもの)
  5. 精神科の措置入院(疾患のために自分や他人を傷つける恐れがあるが、自分が病気であるという認識がなく、強制的に入院させるもの)
  6. 介護に疲れた家族が休むためのレスパイト入院(病院に数日間患者さんを入院させることで、介護者に休息の時間を作る)

特に最初の1、2、3が多いので、それぞれ見ていきましょう。

<1.原因疾患にかかわらず、呼吸や循環など全身状態のモニター管理が必要な状態>
これはいわゆる、心電図や呼吸の状態(血中酸素)のモニタリングが必要な状態です。心筋梗塞や脳梗塞、敗血症(血液中に細菌が入り多臓器にダメージがでている状態)、出産、など様々な状態において当てはまります。患者さんに心電図などのモニターを付けて、呼吸や循環の状態をまさに24時間管理することで、心電図に異常が出た時や呼吸状態に異常が出た時に、即座に対応することができます。
外来の通院では病院内に常時いるため、何かが起こった際にも円滑な対応を受けることができますが、家に帰ってしまった後では即座な対応は難しくなってしまいます。最悪のケースですと、寝ている間に不整脈を起こして心臓が止まってしまい、家族の方が朝に様子を見に行って分かる、ということ起こりうるわけです。

<2.身体へのダメージの大きい治療や手術が必要で、治療・手術後に経過を見る必要がある状態>
このケースでは、手術で体にダメージがある場合がわかりやすいと思います。例えば胃がんの開腹手術の場合は、大体1週間程度でお腹の傷がふさがります(体内の胃の傷はもう少し早くふさがります)。それまでの間は、傷が完全には塞がっていない状態なので、菌に感染してしまうリスクが高いです。ですので、胃がんの手術後は最低でも1週間は必ず入院になります。実際は、手術後に食事を食べて問題ないということがわかってから退院となるので、退院までおよそ2週間程度はかかります。
しかし眼の白内障手術などは、傷が小さいのため治りも早くなります。そのため、入院する場合でも2泊程度と短くなります。また感染するリスクが小さい場合や、そもそも元気な人の場合などには、入院なしの日帰りで手術をすることもあります。

<3.補液や抗生剤などの点滴が、数日にわたり必要な状態>
点滴が必要な場合というのは、例えば肺炎などで数日間抗生剤が必要なときなどです。その際に内服薬で症状が抑えられる場合もありますが、症状の強さによっては点滴をしたほうがよい場合もあり、その場合には入院になります。
点滴は血管から薬を体内にいれるため、外来で行うとなると、毎日その管を抜き差しする必要が出てきます。身体への負担が大きく、通院の負担も大きいため、連日で点滴が必要となる場合は入院して管を入れた状態を維持して治療を行います。
また吐き気が強くて食事がとれない患者さんや、認知症の患者さんなどで食事が取れない場合にも、点滴で水分を補充するために入院することもあります。ですが認知症の患者さんの場合など、健康的には問題がない人で、食事が取れない人に対して、入院のまま補液を永続的に続けることは現実的に困難です。治療を行っても食欲が改善しない場合には、途中で別の方法を検討する必要があります。

上記のような状態になると、病院に行った時に入院が必要ですねと医師から言われます。しかし医療の大きな流れとして、昔は入院で行っていた治療や検査も徐々に外来通院で行うようになっています。

先程の白内障手術もそうですが、抗がん剤治療もその代表例になります。抗がん剤に伴う吐き気や倦怠感などの副作用のために、抗がん剤治療を行う場合に以前は入院が必要でしたが、今は外来で行う場合も増えてきています。副作用の少ない薬も増えてきたのと、化学療法室など外来で行える設備が整ってきたことが背景としてありますが、これらはたゆまぬ薬の進化や診療技術の進化によるものであり、今後も入院から外来へのシフトは続いていくものと思われます。

入院には種類がある?

ここまでに入院のおもな理由を説明しましたが、医師・病院からみた時には、入院を「予定入院」と「緊急入院」という2つにわけることがあります。つまりは入院が前々から予定されていたものなのか、それとも当日緊急で入院になったかというものなのか、という分類です。これらは、病院側にとっては大きな差がでてくるのと、患者さん側にとっても多少違いがでてきますので、説明いたします。

まず「予定入院」というのは、なんらかの病気で病院に通院していて、入院が必要になって何週間か後の入院が予定される場合です。例えばがんの場合、ほとんどが予定入院になります。がん検診などでがんがみつかり、その後外来でがんの進行具合を確認するため、CTやMRI・内視鏡などの検査を受けます。その結果をもって、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの治療方法が決定し、そこで初めて入院の予定をたてるわけです。がんであれば数週間後の入院となることが一般的です。ですので基本的には、一刻を争う病気はない、”待てる”病気の場合に予定入院となります。白内障の手術も入院の場合には予定入院となりますが、この場合には数ヶ月後になる場合も多く、非常に混んでいる病院ですと1年以上先になるケースもあります。

一方「緊急入院」とは、病院を外来受診した時にそのまま入院となるものになります。外来で診察した医師の判断で入院したほうが良い状態と思われる場合には、その場で入院が必要と言われます。これは心筋梗塞や脳梗塞を起こして救急車で救急外来を受診して、そのまま入院になる場合はもちろん、風邪が治らないなと思って受診したら肺炎でそのまま入院になる場合や、見え方がおかしいなと受診したら網膜剥離でそのまま手術になる場合なども、全て緊急入院となります。こちらの場合には患者さんもご家族も、急に入院になり驚くことになります。

これらの2つによって患者さんにとって何が違うかというと、入院する部屋の決め方が変わってきますがそれは後ほどお伝えします。

 

入院日がいつになるかは病院の中でこう決まっている!

では予定入院のときの『入院日がいつになるか』はどのようにして決まっているか、想像がつきますでしょうか?これは実に様々な要素を考慮されており、入院日を決めるというのはある意味熟練のなせる技になります。

考慮するポイントは大きく下記の3点になります。

  1. 入院するベッドの空き具合
  2. 手術室や検査の空き具合
  3. 患者さんの状態、病状

これらの3つを複合的に考えて、日にちを決めるのです。

まず1つめのベッドの空き具合ですが、入院するからには、入院するための病室・ベッドを準備する必要があります。1部屋にベッドが多数ある部屋もありますので、病院ではキャパシティを基本的にベッドで数えます。ただこのベッドの今後の空き具合を把握するのがかなり困難です。ホテルや旅館のように誰がいつ入ってきて、いつ出ていくというのがはっきりわかればもう少しシンプルなのですが、そうもいかないのが病院なのです。

まずは予定入院以外にも緊急入院があるため、いつどの程度の患者さんがはいってくるかがはっきりはわかりません。常にバッファーとなる余剰な空きベッドを抱えておき、緊急入院にも対応できるようにはしているのですが、それを上回る入院がないとも限りません。さらに退院の時期も予定より延びてしまうこともあります。

入院中に何らかの合併症がおきて回復が遅れたり、患者さん家族が退院日を遅らせてほしいなどということもあります。退院日が予定よりも早まるということはないのですが、遅れる可能性は十分にあり、空きベッドを圧迫することになります。それらの発生を経験値で予測しながら、来週には何人ぐらい入院できるだろう、と空きベッドの予測をたてます。それを担うのが、多くの場合その診療科の看護師長さんになります。緊急入院や退院日の延期の発生率は、診療科によっても全然異なりますので、それを最も間近で経験している看護師長さんの予測が最も外れが少ないからです。

ちなみに診療科ごとにベッド数は決まっていて、その診療科の中のベッドにしか入院できない場合が多いです。そのため病院全体に空きベッドがあっても、その診療科に空きベッドがなければ、入院はできないことになります。

2点目の手術室や検査の空き具合に関しては、入院の目的が「手術・検査」の場合、そもそも手術室や検査の枠が空いている時でないと入院できません。こちらもベッドと同様に、緊急の手術、緊急の検査などがあるために、空き状況は非常に予測困難です。さらにベッドのスケジューリングよりも難易度が高いのは、手術は全部が同じ時間かかるわけではないからです。「この手術とこの手術なら1日にはいるね」という時間レベルでの予定調整になります。手術枠は、各診療科ごとに何曜日の午前中は外科というように割り振られているので、その与えられた枠の中で、各診療科の手術枠調整担当医師が最も効率よく手術が行えるように調整します。

上記の2点が患者さんの病状によってさらに細かく調整されます。やはり病状が重く、入院までそこまで待てない方が優先され、入院が比較的待てる状態の方は優先順位が低くなります。より正確に言うと「その入院までの待機期間の間に病状がどの程度進行するか」によります。がんですと、1~2週間では目に見えるような明らかな進行がなかったとしても、2~3ヶ月ではCT画像上でも新しい転移などができてしまうかもしれません。そのため、なるべく数週間後には手術を行うのが一般的です。

一方で、白内障では、例えば1年ほど待っても進行は緩やかですので、手術が1年後となる病院も実際存在します。病状を鑑みて、早めに手術を行ったほうが良さそうな場合などは、すでに決まっている手術の予定をずらして先に入れたりすることもありますが、それにより影響を受ける患者さんの数も少なくない(かつどの患者さんも手術を待っている)ので、そういう場合は多くはないです。

外来の担当医師が患者の病状から入院までどの程度待てるかを判断し、その上で看護師長とベットの空き状況を調整し、手術枠担当医師と手術日を調整し、というように、実は入院日を決めるのは高度な経験と知識が必要になります。また、看護師長も手術枠担当医師も人ですので、それぞれと調整する際にはコミュニケーション能力が必要となります。他の医師も同時に同じように自分の患者を入院させようとしているわけですから、毎回無理を言って自分の患者を優先してもらうことも難しいですし、そこをどう交渉するかは担当医師の力量にかかっています。

 

今回は入院についての一般的なことをお伝えさせていただきました。急な入院となった方や、入院まで時間がかかることを不思議に感じていた方が、このコラムを通して「入院の仕組み」が分かり、疑問が解決できていれば何よりです。次のコラムでは、「入院部屋の違い」や「入院部屋の室料」についてお伝えさせていただきます。よろしければぜひご覧ください。

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