最近物忘れが多くなったかも…これって認知症のはじまり?

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[投稿日] '16/12/01 [最終更新日] '18/03/18 683views
最近物忘れが多くなったかも…これって認知症のはじまり?

家の鍵を忘れてしまう、料理をしているときにうっかりして火を消すのを忘れてしまったなど、物忘れがひどいと感じるときはありませんか?誰でも毎日の生活の中で、何かひとつやふたつは忘れてしまうこともあります。ただ突然、物忘れがひどいと感じるようになった、物忘れを繰り返す、という方は、何かしら病気がひそんでいるかもしれません。物忘れがひどいときに、どんな病気の可能性があるのかみていきましょう。

 

物忘れと記憶の関係

記憶には種類がある

記憶は大きく分けると、「即時記憶」「近時記憶」「遠隔記憶」の3つがあります。特に覚えようと意識していなくても、私たちは日々大量な情報を記憶しています。記憶は様々な種類があるのと、学問によって分類が異なり「即時記憶」は数秒前の出来事です。知人の電話番号など、すぐに忘れてしまいますね。覚えておく容量には限界があります。大人では5~9くらいの項目を瞬時に記銘できます。重要でない内容はすぐに忘れてしまいます。

情報は無意識に重要度や頻度によって選択され、脳に「保持」させます。その保持された段階が「近時記憶」です。頭の中に引き出しがあり、その情報を数分から数ヶ月ほどストックしておくのです。そして何らかの原因で頭の引き出しから、情報を取り出します。これを「想起」と呼びます。「昨日何食べた?」といわれて、すぐに取り出せないのは想起する力が弱いのです。ふだん会わない人の名前が思い出せないのもこれにあたります。記憶は「記銘」と「保持」と「想起」でできています。そして、それが数ヶ月と長い時間保持された状態が「遠隔記憶(長期記憶)」なのです。これには容量の限界はないと考えられています。

記憶にはその他に、言葉の意味などを記憶する「意味記憶」、車や自転車の運転など体で覚える記憶を「手続き記憶」、同時に2つ以上のことを行う「作業記憶(ワーキングメモリ)」があります。子供の頃の出来事などを「エピソード記憶」と呼ぶこともあります。

物忘れは近時記憶の低下が関係している

一般的に、物忘れがひどい、といった場合、記銘力の低下が考えられます。そして認知症の場合は近時記憶(数分から数ヶ月保持される情報)が著しく低下していきます。そのため、たった今起きたことを忘れてしまったり、同じ話を繰り返したりするのです。逆に遠隔記憶、つまりずっと昔の話は覚えていることも多いです。

 

物忘れしないための日常生活での予防法

物忘れがひどい、といった場合にはその原因として、脳の老化、ストレス、睡眠不足、などがあげられます。これらの原因は病的なものというよりは、何らかのきっかけで誰にでも起こりうることです。老化は加齢とともに進んでいき、脳も例外ではありません。脳は使わなければ衰えていきます。子供の頃は神経細胞の数が多いため、すぐにいろいろなことを覚えることができましたが、大人になると神経細胞は減少していくため、なかなか記憶が難しいことがあります。

しかし脳に新しい刺激を与えることができれば、脳は何歳でも発達します。例えば、単調な繰り返しの生活は脳に新しい刺激を与えることはありません。ルーティーン化した作業や習慣は、脳への十分な刺激となりにくいのです。例えば、普段同じ道を歩いているなら、違う道を使ってみる、いつもと違う服装をしてみる、テレビよりも新聞や読書をする、趣味を増やしてみる、などが効果的でしょう。また料理をしてみるのも良いかもしれません。なぜなら料理はマルチタスクだからです。普段料理が得意な方であれば、あまり意識していないかもしれませんが、料理は複数の作業を同時に行っているのです。2つ以上の作業を同時に行うことは、記銘力の向上につながります。想起する力を伸ばすためには、日記を書いてみることも良いでしょう。簡単なメモでも良いので、今日1日の出来事を思い出してみます。毎日続けることで、記憶力の向上につながります。

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また不規則な生活、睡眠不足も脳を疲れさせてしまいます。良質の睡眠をとることで記憶力の向上につながります。

物忘れがひどい、と感じたときは、まずは日々の生活を見直してみることが必要です。

 

物忘れがひどいとき考えられる病気

日々の生活を改善しても改善が見られない場合には病気が原因である可能性があります。その場合は下記のような病気が代表的です。

認知症

認知症は脳が萎縮するなど脳に異変が起きることで起こり、基本的には物忘れの程度が進行していきます。そして、その他の理解力が衰える、日付や今いる場所などがわからなくなる、計算ができない、同じ話を繰り返してしまう、あまり身だしなみを気にしなくなるなど、生活への支障をきたす場合が多くみられます。つまり、認知症は、物忘れがひどいという症状は中核症状ではありますが一側面にすぎず、その他の多くの認知機能とよばれる生活する上で重要な脳の機能全般の低下を指します。ただし、認知症の初期だと、その他は比較的保たれているのに、物忘れだけがひどい場合もあり、周囲の方がみても明らかな病気とはわからない場合が多々あります。

認知症にはさまざまな種類があります。

・アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の最も代表的な原因であり、脳が少しずつ変性してしまう進行性の病気です。アルツハイマー型認知症は、高齢者だけの病気ではなく、若い方でもなる場合があります。脳には、記憶を司る「海馬」とよばれる組織があり、脳が変性していくことで、海馬の症状が最初にでることが多いのです。そのため物忘れの症状(健忘)が現れはじめ、少しずつ、進行していき、最終的には判断力やさまざまな能力が低下し、食事などの日常生活も困難になる病気です。アルツハイマー型認知症の危険因子は、年齢や遺伝子なども考えられていますが、生活習慣も多く関わりがあるとも考えられています。特に糖尿病との相関性が高いとの報告もあります。

脳神経外科や、神経内科などで、検査、診断ができます。検査には、頭部MRIやCTを撮って脳の状態を調べます。治療は主に内服薬で行います。症状の緩和(物忘れや発語能力)や進行を遅らせることに役立っているものの、完全に治すものではありません。リハビリも治療の一つで、進行を止めることはできませんが、刺激を与えて脳を活性化することができます。ご本人のできることを行ってもらうことで脳に刺激を与えることができます。比較的子供の頃のことや、手作業などは記憶していることが多いため、歌や手芸など、ご本人のできることを見つけてあげることが必要です。

・脳血管型認知症

アルツハイマーの次に患者数が多いタイプです。脳梗塞などの既往歴がある場合に最も疑われます。男性の方が多いと言われています。脳梗塞やくも膜下出血など脳卒中を起こすと、その部分の脳の細胞に酸素が送られず、神経細胞が死んでしまいます。そのため、脳卒中が起こった部位(神経細胞がダメージを受けた部位)によって、でてくる症状が異なります。また、アルツハイマー型認知症が徐々に進んで行くのに対して、脳血管性認知症の場合は、血管が詰まるたびに進みますので、症状が段階的に変化します。また日によって、できないと思っていたことができたり、昨日までできていたことができないことがあります。予防法は、脳卒中自体は高血圧などの生活習慣病で起こりやすくなるので、生活習慣病の予防に気をつけるのが適切です。また、中年以上の方であれば、脳ドッグなどを受けて、現状の脳の状態をしっておくことも良いでしょう。早めに気がついてリハビリを行ったり薬を内服することで、症状の進行を抑制することができます。

うつ病

うつ病は気分の落ち込みや無気力が主な症状と考えられていますが、実は物忘れがひどいことも中核症状の一つです。認知症の場合は、脳がダメージを受ける(変性する)ことによって起こりますが、うつ病の場合は、年齢に関係なく、無気力や思考停止が原因となり、物忘れがひどい状態になります。必要なセロトニンなどの神経伝達物質が減少してしまい、頭がうまく働かなくなるのです。認知症と判別が難しい場合や認知症に合併する場合があります。うつ病は神経内科、精神科で診てもらえます。治療は薬物治療や心理療法が中心となりますが、物忘れがひどいのは、うつ病の改善とともに良くなります。うつ病の場合は、積極的に脳を活性化するように努めるよりも、ゆっくりと体とともに休ませることが大切です。

解離性健忘

強いストレスを感じたときやトラウマな出来事は、記憶が空白状態になってしまうことがあります。いわゆる一時的な記憶喪失(健忘)です。これを解離性健忘とよびます。治療は薬物療法や心理療法が行われます。大半の人が欠落した記憶と向き合って、心の葛藤を克服しますが、中には失った過去を取り戻せない人もいます。

 

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