脳腫瘍の膠芽腫の治療は年間9件以上の治療経験がある病院のほうが生存日数が延長!

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[投稿日] '17/08/13 [最終更新日] '18/03/18 1,714views
脳腫瘍の膠芽腫の治療は年間9件以上の治療経験がある病院のほうが生存日数が延長!

数多く知られる脳腫瘍の中で、「グリオブラストーマ」というものをご存知でしょうか?日本語名では「膠芽腫(こうがしゅ)」とも呼ばれる脳腫瘍です。脳を発症基点とする腫瘍の中では最も頻度の高い悪性腫瘍です。予後は非常に悪く、手術に加えて放射線療法や化学療法などの集学的な治療が必要な疾患です。本日は、膠芽腫の治療成績に関しての論文を紹介します。

 

脳腫瘍の一種、グリオブラストーマ(膠芽腫)とは

脳の組織には神経活動を担う「神経細胞」と、神経細胞の働きをサポートする働きをもつ「神経膠細胞」が存在しています。神経膠細胞から発生する腫瘍を、一般的に神経膠腫と呼びます。神経膠腫の種類は多岐に渡り、非常に細かく分類がされています。その中でも、グリオブラストーマ(日本語名:膠芽腫)は最も悪性度が高い腫瘍に分類されます。

脳に腫瘍が認められる際、肺がんや乳がんの場合でよく見られるように、脳以外の組織のがんが転移していることがあります。しかし、グリオブラストーマにおいてはこうした脳以外の組織由来のがんではなく、脳を基点とした悪性腫瘍になります。こうした悪性腫瘍を「原発性脳腫瘍」とも呼びますが、グリオブラストーマは原発性脳腫瘍としては最も頻度の高いものになります。

アメリカの統計数値になりますが、2016年度には1万人以上の人が新たに診断されており、主に50歳台以上の成人で認めることが多いと言われています。

 

グリオブラストーマの診断と治療

グリオブラストーマは、数週間から数ヶ月の経過で発症する頭痛や嘔吐などをきっかけとして疑われます。診断は頭部CTやMRIといった画像検査に加えて、実際に病変部位の組織を顕微鏡的に検査する「病理検査」をもとにして行われます。

グリオブラストーマの治療では、手術療法、放射線療法、化学療法などを組み合わせて行います。手術療法では可能な限り腫瘍を取り除くことが目的とされますが、グリオブラストーマの進行は非常に早く、手術的にすべての腫瘍を摘出することは困難なことが多いです。実際的には、後遺症が残存しない程度の範囲での手術的な摘出にとどまることも多いです。

そのため、化学療法と放射線療法の組み合わせ治療が重要です。化学療法としては「テモゾロミド」を使用することが一般的であり、放射線療法と併用しつつ治療を行います。

 

グリオブラストーマに対する治療件数と予後との関係は

しかし、積極的な治療を行ってもグリオブラストーマの病状を抑制することは困難なことも多いです。発症後の生存期間の中央値は1年程度であり、5年生存率は10%未満であると報告されています。

グリオブラストーマの予後は非常に悪いものでありますが、先に述べたような集学的な治療方法について、少しでも質のよいものを受けることができれば、予後の改善につながりうる可能性があると報告されています。

今回ご紹介する論文はアメリカ合衆国からの報告であり、グリオブラストーマの治療件数と予後の関係性について検討しています。本論文では、可能な限りの腫瘍を手術的に摘出した後に、放射線療法と化学療法の併用療法を受けた4892例の患者さんが対象になっています。年間治療件数に応じて、9.1件以上の施設、3.9件以下の施設に分類しており、それぞれの施設における治療成績を比較検討しています。

対象となった半数近い医療機関は年間3.9件以下の治療件数しかなく、年間9.1件以上の治療経験を有する施設は全体のおよそ10%に留まっていました。両者の治療成績(生存日数の中央値)を比べると、それぞれ14.1ヶ月と16.5ヶ月と、治療経験数が多い施設ほど生存日数の延長が期待できることがわかりました。

 

グリオブラストーマの治療件数を基準として名医を選ぶとよ

本研究結果から、グリオブラストーマの治療成績は、年間9.1件以上の症例を扱う施設で行うと生存日数が改善することが期待できることがわかりました。この結果は、少しでも治癒の可能性をさぐり、生存日数の延長を図るためにも、治療件数に着目することが有用である可能性を示唆しています。

確かに、グリオブラストーマそのものの治療成績はまだまだ納得のいくものではなく、さらなる治療成績が改善することが強く望まれる部分でもあります。さらに再発を来たした場合の標準的な治療も確立はしておらず、より少しでも経験のある医療機関、医師にめぐり合うことで、何かしらの可能性が広がるかもしれません。

 

参考文献:Waqar Haque, Vivek Verma, E. Brian Butler, Bin S. teh. Definitive chemoradiation at high volume facilities is associated with improved survival in glioblastoma. Journal of Neuro-Oncology July 7th 2017.

 

 

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