急性大動脈解離の手術は年間4件しているかどうかで生存率に大きく差が出る!

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[投稿日] '17/07/12 [最終更新日] '18/03/18 1,155views
急性大動脈解離の手術は年間4件しているかどうかで生存率に大きく差が出る!

大動脈解離は日本人に多い病気

大動脈とは、心臓の左心室 から弓なりに出る形で下方に伸び、左右の足へと別れていく総腸骨動脈の分岐までの血管のことをさし、全身に血液を供給する最も太い動脈です。

通常、血管は弾性に富んでおり、心臓から流れ出た血液の勢いを血管の弾性で吸収するのですが、動脈硬化が進んだ人は血液の勢いを吸収しきれず、大動脈の内壁がはがれてしまい(解離)、はがれた部分へ血液が入り込んでしまいます。これが月日とともに進行することで解離性大動脈瘤・大動脈解離を形成してしまいます。

解離性大動脈瘤は非常に危険な病気であり、形成された胸部大動脈瘤が破裂してしまうと生命に危険が及んでしまいます。また大動脈解離は日本人に起こりやすい病気であり、心疾患における大動脈解離の割合はイタリアと並んで世界のトップとなっています(大動脈瘤・大動脈解離治療ガイドラインより)。大動脈解離の治療は手術療法が主ですが、太い動脈の手術を行うためリスクも非常に高くなります。

 

大動脈解離の症状は胸や背中の強い痛み。救急車が来るまで、仰向けになって安静に!

大動脈解離は発症からの期間で、急性期と慢性期に分けられています。発症直後の急性期を過ぎ、2ヶ月経過すると慢性期として分類されます。

発症直後の急性期は非常に危険な状態にあり、治療をしなければ死亡率はおよそ75%にもなります。一方で、慢性期に至ると予後は順調と言われています。病状が安定している場合には、内科治療がすすめられます。

大動脈解離の症状は強い胸背部痛であり、四肢の血圧を同時に測った際に、各上下肢で血圧の数値に差が生じることが特徴です。解離によって形成された大動脈瘤が破裂してしまうと大量の出血を起こしてしまい、医療的な処置が遅くなると生命に危険が及んでしまう可能性が高いです。もし急に強い胸部痛・背部痛が出た時は大動脈解離を起こしている可能性もあるため、仰向けに寝て安静を保ち、速やかに救急車を呼んでください。

 

急性大動脈解離はA型とB型があり、A型は緊急手術が必要。しかし手術には高いリスクも

急性大動脈解離には、スタンフォードA型とスタンフォードB型があります。

スタンフォードA型は上行大動脈に解離があるもの (心臓から出てすぐ上方に伸びる部分)を言います。上行大動脈からは、脳や上肢にいく血管が分岐しているため、そこが解離をおこすと脳への血流障害などを起こしやすく、非常に危険で、多く場合に緊急手術を要します。

一方でスタンフォードB型は上行大動脈には解離がなく、弓なりに曲がって下方へと伸びている下行大動脈部分のみに解離が生じたものを言います。スタンフォードA型に比べると比較的危険性は低く、まずは血圧コントロールを目的とした内科治療が行われることも多いです。

スタンフォードA型の急性大動脈解離は、未治療のまま経過すると死亡率が1時間ごとに1~2%ずつ上昇すると言われているほど危険であり、ほぼ必ず外科手術が行われます。しかし外科治療は効果的であるとはいえ、手術後1週間の死亡率は10%以上とも言われています。

では、どのような医師に執刀してもらうと、手術のリスクを減らすことができるのでしょうか。今回は大動脈解離の名医に関する論文をご紹介致します。

 

大動脈解離の年間手術件数と患者の生存率との関係性を調査

2007年4月から2013年3月までの間にイギリスで行われた急性A型大動脈解離の手術を対象に調査がおこなわれました。この調査で対象となったのは1,550件の症例で、各患者は41の異なる病院で手術を受け、その際に執刀した医師は249人です。

1人の医師がこの期間に手術した件数は1件から33件と医師によって手術件数は大きく異なっており、これらの医師の手術件数と患者の生存率について関連性があるか調査が行われました。

 

大動脈解離を年間4件以上手術する医師は、高い術後生存率の名医

調査期間の6年間における、医師一人当たりの年間平均執刀数は1件から6.6件であり、全体の死亡率は1,550件中283件で、18.3%との結果が出ました。

死亡率の改善について調査を行ったところ、年間平均執刀数4件を境に、統計的に有意な差が生じることがわかりました。年間4件未満の医師が手術した場合、死亡率が19.3%であったのに対して、年間4件以上手術を行っている医師の場合では死亡率が12.6%でした。

つまり急性A型大動脈解離において、年間手術数の多い医師が名医であるということになります。

 

動脈硬化のリスクの高い人は一度人間ドックをうけましょう。大動脈解離が見つかったらすぐ名医に相談を

今回紹介した論文から、急性A型大動脈解離の手術では年間手術件数が多い医師が手術をすると患者の生存率が高いことがわかりました。つまり急性A型大動脈解離の名医を探すには、医師がどれほどの数の手術を行っているかを調べればよいということになります。

急性A型大動脈解離は緊急性が高いため、症状が出てから調べても間に合わないと思われます。大動脈解離は高血圧や動脈硬化の進行がリスク要因になると考えられており、高齢者ほど緊急性が高くなります。健康診断で長年高血圧を指摘されている人は、一度人間ドックでCTやMRIを取り、緊急時に頼ることのできる名医へ早めから健康相談をすることをおすすめします。

 

参考論文:Acute type A aortic dissection in the United Kingdom: Surgeon volume-outcome relation.

 

 

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