【米国論文】脳血管奇形の経験豊富な病院では治療費が200万円も安くすむ!

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[投稿日] '17/06/03 [最終更新日] '18/03/18 606views
【米国論文】脳血管奇形の経験豊富な病院では治療費が200万円も安くすむ!

脳血管奇形?奇形だと何が危ないの?

正常な脳では、動脈が枝分かれをして細い血管(毛細血管)へと変化し、脳のすみずみまで酸素と栄養を供給しています。また、毛細血管は二酸化炭素や老廃物を受け取り、静脈に合流して全身へ戻すという役割も果たしています。脳血管奇形では、これらの構造に異常があり脳と心臓の間で正常な循環ができなくなる病気です。

代表的な脳動脈奇形としては、「脳動静脈奇形」と「海綿状血管腫」が挙げられます。

脳動静脈奇形の大半は胎児期から小児期に発生し、大人になってから発生することはほとんどありません。脳動静脈奇形は毛細血管がないため動脈を流れる血液の圧力が静脈に直接かかります。脳動静脈奇形の中には動脈瘤(りゅう)という動脈にこぶができた状態を合併する場合もあります。

一方、海綿状血管腫は20代から40代に発症することが多い疾患で、動脈あるいは静脈が独立した血管の異常な塊を作っています。脳血管奇形のうち、脳動静脈奇形に次いで2番目に多く認めます。

このような脳血管奇形では、動脈の圧力が血管奇形を起こした部位や静脈に直接かかることになります。そのため、血管が破裂しやすく、破裂すると脳内出血やくも膜下出血を起こします。また、頭痛や脳梗塞、てんかん発作の原因となることもあります。脳内出血やてんかん発作が原因で脳血管奇形と診断されることも珍しくありません。治療が必要となる年齢が若年層にも多く、重症化するリスクもあるため、どのように治療を行なっていくか慎重な選択が必要になります。

 

脳血管奇形は、複数の方法を組み合わせて治療することもある

脳血管奇形に対する治療としては、開頭手術、放射線治療、血管内治療などがあります。

  • 開頭手術:頭蓋骨の一部分に穴を開けて血管奇形を直接手術にて取り除いたり、奇形を起こした部位に血液が流入するのを遮断したりします。
  • 放射線治療:放射線の一種であるガンマ線を用いて脳血管奇形を治療する方法です。正常な脳組織への照射を少なくし、確実に病変部位にガンマ線を集中することで、安全に治療を行うことができます。
  • 血管内治療(カテーテル手術):足の付け根にある動脈(大腿動脈)の中に細い管(カテーテル)を通して、奇形血管の入り口部分に、血管を閉塞するための物質を注入することで、脳血管奇形本体と奇形本体に血液を送る血管を閉塞します。血管内治療は足の付け根から管を入れるだけで治療ができるため、身体に負担が少ない手術とされています。

脳血管奇形の治療は、血管内治療(カテーテル手術)だけで完了することもありますが、開頭手術や放射線治療と組み合わせて治療することもあります。脳血管奇形の大きさや部位によって治療は異なり、開頭手術を行う場合は治療のリスクも非常に高いため、治療を希望される方はまず脳血管内治療の名医に診断してもらうことが大切です。

 

脳血管奇形の治療件数と治療成績との関係を調べた論文

今回ご紹介する論文は、脳血管奇形治療の件数と治療成績に関係があるかどうかを検討した研究です。本研究では、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のデータベースに集積されたデータのうち、脳血管奇形の治療を行った患者を対象としています。対象期間は2000年から2009年までの10年間で、8,227名の患者が対象となりました。

本研究では、1年間に医師が行った脳血管奇形の治療件数に基づき、死亡率や在院日数などを評価項目として治療件数と治療成績との関係を検討しています。また、1施設あたりの年間治療件数でも同様の検討を行っています。

 

年間治療件数が多い名医が脳血管奇形の治療を行うと死亡リスクや治療費が減少する

分析を行ったところ、1施設あたりの年間治療件数が多い病院(年16件以上)では少ない病院(年2件以下)に比べて、統計的に以下の3点で成績が良いとの結果がありました。

  • 治療後の死亡率が低い(0.7% vs 1.16%)
  • 在院日数が平均1日短い(2日 vs 3日)
  • 治療費用が2万ドル(約200万円)近く安い ($37,374 vs $19,986)

また、医師一人あたりの年間治療件数を軸に比較したところ、同様の結果が得られていました。具体的には、治療件数の多い医師(年7件以上)と治療件数の少ない医師(年1件以下)を比較したところ、以下の結果が示されました。

  • 治療後の死亡率が低く(0.7% vs 1.10%)
  • 在院日数が1日ほど短くなる(2日 vs 3日)。

今回の結果から、脳血管奇形の年間治療件数が多い医師ほど治療に伴う死亡リスクが低くなるため、名医であると言えます。治療費用についてはアメリカと日本では保険制度などの違いもあるので、単純に比較はできませんが、治療費用が2倍近くかかってしまうという結果が出たのは興味深い点ですね。

 

脳血管奇形の名医は年間治療件数を基準に選ぶと良い

今回紹介した論文の結果から、脳血管奇形の年間治療件数が多い医師は少ない医師に比べて治療成績が良い名医であることがわかりました。また、年間治療件数が多い病院ほど脳血管奇形の治療成績が良いことも明らかとなりました。

脳血管奇形では奇形の種類や大きさ、部位などにより治療方法が異なりますので、脳血管治療の名医に診断してもらうことが大切です。医師から脳血管奇形の手術あるいは放射線治療の適応があると診断された場合には、脳血管奇形の治療件数が多い病院や名医を探して、治療方法について相談されてみてはいかがでしょうか。

 

参考文献:Improved outcomes for patients with cerebrovascular malformations at high-volume centers: the impact of surgeon and hospital volume in the United States, 2000–2009. J Neurosurg 14:1-12, 2016

 

 

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