【ヨーロッパ論文】急性虫垂炎の腹腔鏡手術では、名医の目安は年間20件以上!

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[投稿日] '17/05/30 [最終更新日] '18/03/18 1,915views
【ヨーロッパ論文】急性虫垂炎の腹腔鏡手術では、名医の目安は年間20件以上!

急性虫垂炎でも行われる、腹腔鏡手術ってどんな手術?

近年、手術で切開する傷を小さくする低侵襲医療への注目が高まっており、腹腔鏡手術が行われる頻度も増加しています。

腹腔鏡手術とはお腹に数カ所、数cm程の穴を開けて、そこから内視鏡と呼ばれるカメラを挿入して行う手術であり、一般的な開腹手術と比較して切開した傷が非常に小さくなります。

手術による傷が小さくなる利点として

  • 回復が早い
  • 術後の痛みが少ない
  • 感染リスクが低い
  • 投薬の必要性も低下する

など様々なメリットがあります。そのような腹腔鏡手術ですが、緊急手術の際にも腹腔鏡は使用されます。その代表的な例としては、急性虫垂炎です。

 

急性虫垂炎ってどんな病気?腹腔鏡手術はどういう時に行うの?

急性虫垂炎とはいわゆる「盲腸」のことで、腸のうち虫垂という部分に感染が起こる病気です。

主な症状は腹痛で、初めはみぞおちの辺りから始まり、時間が経つにつれて右下腹部へ痛みが移動するという特徴があります。炎症が悪化すると腸に穴があくこともあり、その場合、感染が腹腔全体に広がり、腹部全体に強い痛みが生じます。

急性虫垂炎の治療法は、軽症であれば抗菌薬の投与のみで治療可能ですが、重症の場合は手術による虫垂切除術が行われます。この手術を、腹腔鏡を用いて行う場合、腹腔鏡下虫垂切除術と言います。

今回は腹腔鏡下虫垂切除術における医師の熟練度と手術時間、合併症発症率などの治療成績について調査した論文をご紹介致します。

 

急性虫垂炎への腹腔鏡手術の成績を、医師の熟練度から比較

急性虫垂炎の治療に関する研究は、過去にも多く実施「されています。腹腔鏡下虫垂切除術を習得する基準も様々ありますが、EUの内視鏡学会では20件の経験を技術習得の目安して発表しています。

今回の研究では、そのEUの内視鏡学会が発表している20件の経験がある医師を専門医として、5名の若手医師(外科経験:2~3年)と5名の専門医(外科経験:8~9年)の計10名の手術成績について比較分析されています。

対象期間は2006年から2009年までであり、期間内に行われた600件の腹腔鏡下虫垂切除術が対象となりました。手術の治療成績については、手術時間・炎症の程度・術中の失血量・入院期間・術後合併症などの点から評価が行われました。それらの評価点と併せて、医師の執刀経験数や熟練度についても評価を実施するため、対象となった600件の手術を以下の4グループに分類しました。

  • A1群:若手医師が行った319件の手術の前半100件
  • A2群:若手医師が行った319件の手術の後半219件
  • B1群:専門医が行った281件の手術の前半100件
  • B2群:専門医が行った281件の手術の後半181件

 

手術経験豊富な医師は、手術時間が短い

調査を行なったところ、手術の平均所要時間について群間に大きな差がみられました。A1群では75.6分、A2群では57.3分、B1群では64.13分、B2群では53.38分となりました。A1群とB1群、A2群とB2群それぞれを比較すると、いずれにおいても専門医が実施した方が成績がよいことが分かり、A群とB群内を比較すると経験を重ねるとともに、手術時間が短縮されることが分かりました。

その他の評価項目については、術中の失血量ではA群で55 mL、B群で45 mLであり、B群でやや少ないものの統計的には有意な差はなく、入院期間もA群で3.21日、B群で3.84日とこちらに関しても統計的には有意差が無い、と結論づけられました。急性虫垂炎での腹腔鏡手術の合併症は、出血や腸閉塞・膿瘍・創感染などがありますが、調査の結果A群・B群共に合併症と手術経験数の間に、統計的にみて有意な関係性は無いとの結果が示されました。

 

急性虫垂炎に対する腹腔鏡手術における名医の目安は、20件以上の経験

その結果、手術時間について2群間に有意な違いが認められ、この手術件数の目安の妥当性について証明されました。

またアメリカで行われた54,467件の虫垂切除術のデータを用いた研究では、経験の浅い医師では手術時間が長いだけでなく、術後合併症の発生率が有位に高かったとの報告もあります。この研究間での結果の違いは、患者数の違いによるものであると考えられますが、やはり経験数の多い医師の方が治療成績が高いことは変わりないようです。

急性虫垂炎は頻度の高い疾患で、比較的難易度の低い手術であるため、経験の浅い医師が執刀を行うことも少なくありません。手術後の合併症発症率なども低い疾患ではありますが、今回の研究では、急性虫垂炎に対する腹腔鏡手術の名医の目安として「20件以上の手術経験」を挙げています。もしもの時を考えて、近隣の病院で急性虫垂炎での腹腔鏡手術をどのくらい行なっているか、調べてみてはいかがでしょうか。

 

 

【参考論文】Eszter Mán, Tibor Németh, et al : Learning curve after rapid introduction of laparoscopic appendectomy: are there any risks in surgical resident participation

 

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