経験症例数の多い頸動脈狭窄症の名医のほうが頸動脈ステント留置術後の脳梗塞の発生リスクが低い

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[投稿日] '15/12/29 [最終更新日] '18/03/18 3,743views
経験症例数の多い頸動脈狭窄症の名医のほうが頸動脈ステント留置術後の脳梗塞の発生リスクが低い

頸動脈狭窄症に対しては内科的治療と外科的治療があります。内科的治療は主に内服薬や生活指導を行いますが、外科的治療は頸動脈内膜はく離術か頸動脈ステント留置術のどちらかになります。今回は頸動脈ステント留置術において経験症例数が多い医師が行うと合併症が少ないという興味深い報告について紹介します。

 

頸動脈狭窄症とは

まず、頸動脈狭窄症とはどのような疾患なのでしょうか。

私たちの脳を栄養している大事な血管の1つに、内頸動脈というものがあります。首の側面に手を当てるとドクドクと内頸動脈の拍動を触れるのが分かるかもしれません。この内頸動脈が動脈硬化の進行によって狭くなるのが頸動脈狭窄症です。

頸動脈狭窄症が進行し、動脈の内側にこびりついているコレステロールの塊がはがれて血管に流れてしまうと、これが原因となって脳の血管に十分な血流が行かなくなり、脳梗塞を起こすこともあります。脳梗塞はニュースでもたびたび耳にするのでご存じの方も多いかと思いますが、手足がしびれるだけではなく、うまく話せなくなったり、歩けなくなることもあります。最悪の場合、命を落とす危険性もあります。

脳梗塞の原因ともなりうる頸動脈狭窄症ですが、診断は頸動脈超音波検査やCT、MRIなどで行い、狭窄率(頸動脈が細くなっている割合)が高い場合には頸動脈内膜はく離術や頸動脈ステント留置術という外科的治療も考慮します。

頸動脈狭窄症

頸動脈内膜はく離術は全身麻酔で行うので、心臓や肺などの全身状態が良い患者さんが適応になります。一方で、重度の心臓疾患や肺疾患をもつ患者さん、高齢の方など手術によるリスクが大きいと考えられる場合には、局所麻酔で行える頸動脈ステント留置術が行われます。

頸動脈内膜はく離術は、動脈硬化が進んだ血管の内膜を全て取り除く手術で、頸動脈ステント留置術は足の付け根の血管などからカテーテルを挿入して頸動脈の狭くなった部分を広げて金属製の筒(ステント)を置いてくる処置のことです。今までの研究から、頸動脈狭窄症に対し頸動脈ステント留置術も頸動脈内膜はく離術と同じくらいの良い成績であることが分かっています。

 

頸動脈狭窄症の経験症例数が10例増えるごとに、脳梗塞を起こすリスクが低下

今回の研究では、アメリカ全国入院患者データベースに2004年から2011年に「頸動脈狭窄症」という病名で登録され、頸動脈ステント留置術の治療を受けた患者さんが対象になりました。調べる項目は、治療を行ったのが外科医か内科医か、病院の場所、医師の経験症例数とされました。具体的に外科医とは、同時期に頸動脈内膜はく離術や大腿膝窩動脈バイパス術などの外科手術をしている医師としました。これは日本で言うと血管外科医や心臓血管外科医が当てはまると考えます。一方で内科医とは、日本では主に循環器内科医のことです。

合併症としては、脳梗塞や心筋梗塞の発症、30日死亡率(30日以内に死亡する割合)について解析しました。

合計で20,663人の患者さんが対象となり、全体の74% (15,305人)は外科医によって、26% (5,358人)は内科医によって頸動脈ステント留置術が行われていました。そして治療が行われている病院は96.51%が都市部にありました。また、61.47%が教育施設と認可されている病院でした。

合併症に関しては、脳梗塞 (外科医:内科医, 4.33% : 4.41%)、心筋梗塞 (2.10%: 2.13%)、30日死亡率 (0.84%: 1.03%)と外科医でも内科医でも統計学的に差はありませんでした。つまり専門性は頸動脈ステント留置術後の合併症に関係がなかったということです。

しかし経験症例数が10例増えるごとに、脳梗塞を起こすリスクが低くなることが分かりました。

今回の結果から、頸動脈ステント留置術において経験症例数が多い医師が行った方が合併症を起こすリスクが少ない可能性が明らかになりました。

 

頸動脈狭窄症の経験症例数は名医の必要条件

いかがでしたでしょうか。

侵襲的な外科的治療は外科医の方が良いのではないかと考える人も多いかもしれません。しかし、今回の報告から、内科か外科かということよりも、その医師が今までどれくらいの頸動脈狭窄症の経験症例数があるか、ということのほうが重要であることが分かりました。今回は頸動脈狭窄症に対するステント治療でしたが、それ以外の疾患・治療でも、今後名医を探すには経験症例数を考慮する必要がありそうです。

 

<参考論文> Experience matters more than specialty for carotid stenting outcomes.

 

 

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