子宮脱は患者さんの数の割に専門医が不足している?

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[投稿日] '16/06/24 [最終更新日] '18/03/18 1,300views
子宮脱は患者さんの数の割に専門医が不足している?

子宮脱とは

子宮脱は子宮を支える骨盤底筋(こつばんていきん)が出産などの影響で緩んでしまうことによって、子宮が本来の位置よりも下がってしまう状態です。位置が下がるものの、子宮が膣の中に下がっている状態は「子宮下垂」、膣(外陰部)の外に出てしまった状態を「子宮脱」と呼んでいます。

子宮脱のうち、子宮の一部が出ている場合は「部分子宮脱」、子宮がすべて脱出してしまった場合には「完全子宮脱」と呼んで区別することもあります。

子宮脱は患者数は多いが専門医は少ない?

詳しくは後でお話しますが、子宮のほかに膀胱や直腸も下垂や脱出が起こることがあり、子宮脱や膀胱脱、直腸脱などを総称して「骨盤臓器脱」と呼んでいます。

骨盤臓器脱を生涯のうち、一度は経験する人の割合(生涯罹患率)は、日本では本格的に調査をしていないため把握できていませんが、海外のある調査では生涯罹患率は約11%でした。また、50歳以上の女性を対象とした別の調査では、およそ3割に骨盤臓器脱が認められたと報告しています。

国内の50歳以上の女性で、仮に1割としても300万人ほどの患者数ですから、子宮脱を含む骨盤臓器脱は身近な病気といえるでしょう。最近では、婦人科のほか「女性泌尿器科ウロギネセンター」などの泌尿器科の専門外来で子宮脱などの治療を行っている病院もあります。

しかし、骨盤臓器脱の専門医は決して多くないのが現状で、地域の病院で治療するのが難しいということも少なくないようです。特に、最近の手術の主流となっているメッシュ手術を受けられる病院を探すのは簡単ではないという声も聞かれます。

 

子宮脱の原因

子宮が下がってしまうのは骨盤底筋の緩みのほか、周囲の靱帯(じんたい)の損傷などによって骨盤内の臓器を支える力が弱くなってしまうためです。原因として多いのは出産で、特に3人以上の出産経験や3,500gを超えるような大きな赤ちゃんを産んだことのある人は筋肉線維の断裂が起こりやすく、緩みの原因となります。

また、筋力の衰えやエストロゲンの減少なども子宮脱を発症しやすくするので、加齢はリスク要因の一つです。さらに、重い物をもつことが多い人や便秘でいきみがちな人は腹圧をかけることが多く、肥満の人も体重による負荷が大きいため子宮脱を起こしやすいといわれています。

 

子宮脱の症状

子宮脱が軽い場合には、子宮の位置が下にずれたことによる不快感や下垂感などが現れます。重症になり、子宮が外陰部から出てしまう部分が多くなると不快感が強くなり、膣壁が裏返ってしまい粘膜の表面が乾燥して出血することも多いです。

下着で擦れたり、皮膚と摩擦が起こったりして痛みが生じることあります。中には、股の間に何かが挟まったような異物感だけでなく、痛みで立っていることも歩くこともできなくなるなど重症化すると日常生活への影響は決して小さくありません。

また、骨盤底筋が緩むと子宮だけでなく、骨盤内の膀胱や直腸、小腸にも下垂や膣外への脱出が起こりやすくなり、それぞれ膀胱脱(膀胱瘤)、直腸脱(直腸瘤)、小腸脱と呼んでいます。

子宮と膀胱が下がってしまうと排尿が十分にできず尿が残ってしまうので残尿感が続いたり、頻繁にトイレに行きたくなったり、くしゃみなどで尿が漏れてしまうなど尿失禁で悩むことも多くなります。また、膀胱に尿が残った状態が続くと感染しやすくなるため、膀胱炎を発症する人も多いです。

 

子宮脱の検査

内診

子宮脱は、多くは内診だけでも診断ができるとされていますが、内診を行う姿勢のままで腹圧をかけた場合とかけない場合にどの程度、下垂するかを確認します。検査では咳払いをしたり、いきんだりしたときの下垂や脱出の度合い(下垂度)を調べますが、腹圧をかけにくいときは立った姿勢で行うこともあります。

超音波検査

子宮や膀胱、小腸などの様子を超音波を使い、画像で確認する検査です。お腹の上から行う腹部エコーと、検査器具(プローブ)を膣の中に挿入して行う膣エコーの二通りがあります。

下垂度の測定

骨盤臓器脱は、国際的に使われているPOP-Qシステム(POP-Q法)で診断することが多いです。POP-Qシステムは骨盤内臓器の下垂度をセンチ単位で測定して客観的に評価するもので、1cm刻みの目盛りや分度器などが一体化した「スペキュラム」と呼ばれる医療器具を使って測ります。名前は難しいですが、国際的に使われている「ものさし」で症状の度合いを測っている、というイメージをもっていただくのがわかりやすいと思います。

子宮脱は羞恥心のために受診が遅れがちになるといわれています。しかし、重症になると尿失禁などの排尿障害で外出もできないなど日常生活の制約も多くなってしまいますので気になる症状があったら早めの受診しましょう。

 

 

 

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