アルツハイマー型認知症は前段階や軽度のうちに治療することが大事です

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[投稿日] '16/04/21 [最終更新日] '18/03/18 353views
アルツハイマー型認知症は前段階や軽度のうちに治療することが大事です

認知症は、後天的な要因により認知知能が低下し、生活に支障を来す状態です。認知症は、どのような原因で引き起こされるのでしょうか?ここでは、認知症、特にアルツハイマー型認知症について紹介します。

認知症の原因

認知症の原因は一つではなく、さまざまな病気が関係しています。具体的には変性疾患という脳や神経が徐々に変化していく病気をはじめ、脳血管障害や甲状腺機能低下症でも起こり、または、アルミニウムなどの中毒やヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染症などでも起こることがあります。

変性疾患とは脳の神経細胞が徐々に変化していく病気で、アルツハイマー病や、ピック病やパーキンソン病といった病気が含まれます。また、脳血管障害は脳の血管が詰まったり、破れたりすることで脳の神経細胞を損傷する障害のことで、主なものは脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などが含まれます。

 

アルツハイマー型認知症

原因

アルツハイマー型認知症には遺伝子の異常が関係したタイプもありますが全体のおよそ1%に過ぎず(1)、原因はいまだにはっきりしません。しかし、アルツハイマー病患者さんの脳には萎縮のほかに「老人斑」や「神経原線維変化」という特徴的な変化が起こっており、これらの変化によって神経細胞が死んでしまうことが発症に関係する要因と考えられています。

老人斑は「アミロイドβ」と呼ばれるタンパク質が溜まること(アミロイド沈着)で起こります。また、神経原線維変化は「タウタンパク質」というタンパク質がリン酸化し、神経細胞に蓄積して生じる変化です。アミロイド沈着は認知症発症のプロセスで最初に起こる変化と考えられていますが、実際に症状が現れるおよそ20〜30年前からすでにアミロイド沈着が始まっているといわれています。(2)

一方、タウタンパク質が蓄積を始めるのは認知症を発症する15年ほど前からです。(3)そのため、アルツハイマー病型認知症の発症が増える70歳代の25年ほど前から、つまり、40歳代半ばからの予防が大切になります。有酸素運動やバランスのよい食事、さらに、質のよい睡眠などを日頃から心がけましょう。

性別による違い

脳血管性認知症は男性に多い傾向がありますが、アルツハイマー病は女性に多く、発症率は男性のおよそ2倍です。(4)

経過

アルツハイマー病は発症初期にもの忘れなどの記憶障害や判断力の低下などが現れ、ゆっくりと、しかし確実に進むことが特徴です。また、認知症と診断される前には、記憶障害を中心とした前駆状態ともいえる「軽度記憶障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)」が起きているといわれています。

アルツハイマー病の初期は新しい記憶の障害だけですが、進行すると古い記憶も失われていき、人の話も理解できず、食事などの日常生活行動も困難になります。落ち着かず歩き回ったり、うつや妄想などの精神症状がひどくなることもあり、重症になると運動機能も低下して身体も衰弱してしまいます。

 

認知症は前段階や軽度のうちに対処することが重要

軽度記憶障害(MCI)に気づくには

アルツハイマー型認知症は、軽度記憶障害(MCI)の段階で早期に発見し治療につなげることが大切です。早期のほうが薬物治療の効果も得やすいと言われているからです。

最初期と呼ばれる早期の時期には、置き忘れが多く探し物が増える、物の名前や言いたいことが出てこない、同じことを何度も言う、また、意欲の低下や不安感、怒りっぽさなどが目立つこともあります。

もの忘れは加齢とともに増えるものです。患者さん自身も「変だな?」と感じながらも「年のせい」と放置してしまい、たとえ困っていても周囲に言わないこともあります。症状が軽いうちは家族も気づきにくいものですが、「あれ?」と思ったことがあれば小さなサインを大切にして早期治療につなげましょう。

脳血管認知症の予防

脳血管性認知症は、徐々に進行していくアルツハイマー型認知症とは異なり、脳梗塞や脳出血などの発作が起こるたびに、症状が階段状に進むのが一般的です。両者は認知症の原因としては異なる機序になりますが、どちらか一方だけの方もいれば、両方が同時に起こっている場合も多くあります。

しかし、アルツハイマー病と異なり、脳血管認知症は血管障害ですので、若いときから高血圧や動脈硬化などにならないよう、運動や食事に気をつけることにより、ある程度リスクを減らすことができます。

また、脳血管性認知症とまではいかず、小さな脳梗塞などによる軽い認知機能の障害は「血管性認知障害(Vascular Cognitive Impairment:VCI)」として考えられるようになりました。認知症の診断基準を満たさない血管性認知障害(VCI)は脳血管性認知症の前段階ですので、MRIなどの検査を受けて、VCIの診断に至った場合にも生活に注意すれば脳血管認知症になる確率を下げることができます。

もし、気になる症状がある場合は、そのままにせず念のため受診をお勧めします。
なお、次の「認知症の治療は薬物治療と心理/社会的アプローチの治療の併用が効果的です」では、認知症の治療について詳しくご紹介しています。

 

<出典>
(1) Thomas D Bird, MD(2015) “Alzheimer Disease Overview”GeneReviews
(2) 日本認知症学会「アルツハイマー型認知症(Alzheimer-type dementia:ATD)の病理」(http://dementia.umin.jp/link4-1.html)
(3) Jack CR Jret al: Hypothetical model of dynamic biomarkers of the Alzheimer’s pathological cascade. Lancet Neurol 9: 119-128, 2010.
(4) 
Kukull WA, Higdon R, Bowen JD, McCormick WC, Teri L, Schellenberg GD, van Belle G, Jolley L, Larson EB, Dementia and Alzheimer disease incidence: a prospective cohort study. Arch Neurol. 59: 1737-1746. (2002), Edland SD, Rocca WA, Petersen RC, Cha RH, Kokmen E. Dementia and Alzheimer disease incidence rates do not vary by sex in Rochester, Minn. Arch Neurol. 59:1589-1593. (2002), Kawas C, Gray S, Brookmeyer R, Fozard J, Zonderman A. Age-specific incidence rates of Alzheimer’s disease: the Baltimore Longitudinal Study of Aging. Neurology. 54: 2072-2077. (2000), Fratiglioni L, Launer LJ, Andersen K, Breteler MM, Copeland JR, Dartigues JF, Lobo A, Martinez-Lage J, Soininen H, Hofman A, Incidence of dementia and major subtypes in Europe: A collaborative study of population-based cohorts. Neurologic Diseases in the Elderly Research Group. Neurology. 54: S10-S15. (2000)

 

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